~サム・ペキンパーのキャリア10傑~
「聖なる酔っぱらい」あるいは「酔いどれ天使」と呼ぶべき映画監督は、フィンランドを代表するアキ・カウリスマキだろう。
カンヌ映画祭の壇上にも「ほろ酔い」で登場するヤクザだが、心根にはあったかいものが流れているっていう。
その対極をなすのが、サム・ペキンパーだったのかもしれない。
暴力描写やストップモーションに冴えをみせた技巧派だが、文字どおり酒に溺れ、荒れた状態のまま撮影現場に現れたものだから「信奉者が多いにも関わらず」スタジオからは扱いづらい男とされてしまった。
おそらく、逃した脚本も多かったことだろう。
それがまた、ペキンパーを酒やクスリに走らせる。
あぁまるで、彼の映画の主人公のようではないか!!
(1)『ガルシアの首』(74)
100万ドルの賞金がかけられた悪人「ガルシア」の首を求め、執念の追跡をつづけるピアノ弾きの物語。
(銃撃戦だけでなく)カークラッシュなどに用いられるストップモーションの効果は絶大で、ペキンパーは激しい詩人なんだなと思った。
(2)『わらの犬』(71)
窮鼠猫を嚙む、を地でいく主人公をダスティン・ホフマンが熱演。
周囲に散々バカにされ、妻まで犯された男が最後の最後に大爆発、「そっち方向」に覚醒してしまった主人公が最後に放つ会話が鮮烈。
友人「―帰り道が分からない」
主人公「ボクもだ」
(3)『ワイルドバンチ』(69)
「死のダンス」と評されたクライマックスは、正直なにが起こっているか分からないほど。
たぶんペキンパーは、そここそを目指していたのではないか。
(4)『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』(70)
ペキンパー自身によると、これが自分の最良の仕事だという。
いつものペキンパー節を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない、かなりおとなしめの西部劇。
キャリアのなかでひとつだけ「ほっこり系?」(ではないけれども)があるというのは、リンチの『ストレイト・ストーリー』(99)のようでもあり、なんだかちょっと安心さえする。
(5)『戦争のはらわた』(77)
『ワイルドバンチ』同様、ストップモーションと「瞬間的倒置?」を多用、「なにが起こっているか分からない」状況を作り出すことにより、戦場の狂気を描いている・・・のだと思う。
(6)『ゲッタウェイ』(72)
マックィーンの荒々しさを全面に押し出した快作。
悪党が逃げ切ってしまうというのも、当時は新鮮で痛快だったという。
(7)『コンボイ』(78)
スケールの大きくなった『トラック野郎』といえば、当たらずといえども遠からず。
制作時期にそれほどのズレはなく、ともにヒットしたというのが興味深い。
なぜなら題材的に、現代ではそれほどヒットしそうにもないから。
(8)『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)
最も有名なのは78年版だろう、何度もリメイクされた映画だが本家はこれ。
ドン・シーゲルによるSFの佳作を、脚本の面で支える。
(9)『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)
アンチヒーローの短き青春を、ペキンパーの「割には」抑えた演出で描く。
キッドをクリス・クリストファーソン、パット・ギャレットをジェームズ・コバーンがともに好演しているので、『ヤングガン』(88)を気に入っているひとは本作まで辿り着いてほしい。
(10)『ダンディー少佐』(65)
ペキンパー映画の初級篇としてはハードルが高いかもしれない騎兵隊アクション。
ただ中級者を自覚するひとには、常連俳優が沢山出てくるし、かなり楽しめる創りかと。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『ヘンな法則』
「聖なる酔っぱらい」あるいは「酔いどれ天使」と呼ぶべき映画監督は、フィンランドを代表するアキ・カウリスマキだろう。
カンヌ映画祭の壇上にも「ほろ酔い」で登場するヤクザだが、心根にはあったかいものが流れているっていう。
その対極をなすのが、サム・ペキンパーだったのかもしれない。
暴力描写やストップモーションに冴えをみせた技巧派だが、文字どおり酒に溺れ、荒れた状態のまま撮影現場に現れたものだから「信奉者が多いにも関わらず」スタジオからは扱いづらい男とされてしまった。
おそらく、逃した脚本も多かったことだろう。
それがまた、ペキンパーを酒やクスリに走らせる。
あぁまるで、彼の映画の主人公のようではないか!!
(1)『ガルシアの首』(74)
100万ドルの賞金がかけられた悪人「ガルシア」の首を求め、執念の追跡をつづけるピアノ弾きの物語。
(銃撃戦だけでなく)カークラッシュなどに用いられるストップモーションの効果は絶大で、ペキンパーは激しい詩人なんだなと思った。
(2)『わらの犬』(71)
窮鼠猫を嚙む、を地でいく主人公をダスティン・ホフマンが熱演。
周囲に散々バカにされ、妻まで犯された男が最後の最後に大爆発、「そっち方向」に覚醒してしまった主人公が最後に放つ会話が鮮烈。
友人「―帰り道が分からない」
主人公「ボクもだ」
(3)『ワイルドバンチ』(69)
「死のダンス」と評されたクライマックスは、正直なにが起こっているか分からないほど。
たぶんペキンパーは、そここそを目指していたのではないか。
(4)『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード』(70)
ペキンパー自身によると、これが自分の最良の仕事だという。
いつものペキンパー節を期待すると肩透かしを喰らうかもしれない、かなりおとなしめの西部劇。
キャリアのなかでひとつだけ「ほっこり系?」(ではないけれども)があるというのは、リンチの『ストレイト・ストーリー』(99)のようでもあり、なんだかちょっと安心さえする。
(5)『戦争のはらわた』(77)
『ワイルドバンチ』同様、ストップモーションと「瞬間的倒置?」を多用、「なにが起こっているか分からない」状況を作り出すことにより、戦場の狂気を描いている・・・のだと思う。
(6)『ゲッタウェイ』(72)
マックィーンの荒々しさを全面に押し出した快作。
悪党が逃げ切ってしまうというのも、当時は新鮮で痛快だったという。
(7)『コンボイ』(78)
スケールの大きくなった『トラック野郎』といえば、当たらずといえども遠からず。
制作時期にそれほどのズレはなく、ともにヒットしたというのが興味深い。
なぜなら題材的に、現代ではそれほどヒットしそうにもないから。
(8)『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)
最も有名なのは78年版だろう、何度もリメイクされた映画だが本家はこれ。
ドン・シーゲルによるSFの佳作を、脚本の面で支える。
(9)『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)
アンチヒーローの短き青春を、ペキンパーの「割には」抑えた演出で描く。
キッドをクリス・クリストファーソン、パット・ギャレットをジェームズ・コバーンがともに好演しているので、『ヤングガン』(88)を気に入っているひとは本作まで辿り着いてほしい。
(10)『ダンディー少佐』(65)
ペキンパー映画の初級篇としてはハードルが高いかもしれない騎兵隊アクション。
ただ中級者を自覚するひとには、常連俳優が沢山出てくるし、かなり楽しめる創りかと。
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明日のコラムは・・・
『ヘンな法則』