Cape Fear、in JAPAN

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『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

シネマしりとり「薀蓄篇」(442)

2023-01-16 00:10:00 | コラム
くりす「てぃーん」→「てぃーん」うるふ

きのうに引きつづき、80年代の米映画が登場。

この時代のハリウッド産にはふたつの方向性があって、ひとつはスライやシュワ氏が筋肉で「あらゆる問題」を解決する肉体派、もうひとつがスピルバーグを中心とするSFX(特殊効果)系。

きのう・きょうの作品は後者だけれど、そのなかでもB級にちかい創りで、いやこれは「下のほうの映画」といっているわけではなく、その低予算感が逆に作品の独特の魅力になっているというか。

『ティーン・ウルフ』(85)は、簡単にいえば狼男の物語。
現代の高校生が狼男になったら、、、というコメディ。



ヒトが、なにかに変身したり憑依したりする物語の歴史は古い。
そもそもヒトは進化してきた生物であって、最終形態が「いま、現在。」とはかぎらないし、そう捉えれば「少なからずのリアリティ」が生まれてくるでしょう、このジャンルはそこを突いてきていると。

進化ではなく退化したかのようなカフカの『変身』、虎になってしまう男の悲哀を漢詩を用いて表現した傑作『山月記』。
また、沼正三による『家畜人ヤプー』は、日本人男性が「身体的にも精神的にも」「強制的に」家畜化されていく衝撃作だった。

ものの、前者ふたつは「読み手の想像力が追いつく」が、後者は「まったく追いつかず」手足を斬られ、肉便器と化していく日本人男性の「見た目」さえ想像出来なかった、、、という難点があり!!

映像表現の場合は「それらをダイレクトに見せてくる」ため受け手の想像力は必要ないが、今度は創り手の想像力・センスが大きく問われることになる。

80年代はSFXの技術が飛躍的に向上した時代、変身を題材とする物語は「うってつけの素材」だったというわけです。

ちなみに変身系で好きな映画のベストは、塚本晋也の『鉄男』(89)。
これまた80年代の映画だが、まぁ塚本さんの場合、コマ撮り技法を用い、チマチマチマチマ創ることに長けているひとなので、特殊効果の向上とかは無関係なのかもしれない(^^;)



さてフランスではルー・ガルーの名で知られる狼男、
81年に『狼男アメリカン』というホラーが発表され、リック・ベイカーによる特殊メイク・効果が評判を呼んだ。

ヒトから狼男へと変身する過程がじつにリアルで、『ティーン・ウルフ』は間違いなくその影響下にある。

いわゆるパクリではなかったものの、一部では「亜流」などともいわれたとか。

まぁそのあたりは完全には否定しないけれど、

ただ『スパイダーマン』の名言を引用、
「With great power comes greater responsibility」(=大いなる力には大いなる責任が伴う)

『狼男アメリカン』にはなかった、「力」を得たものの葛藤を描こうとしたあたりは、きっちり評価してあげるべきだよね。まぁ基本はコメディだけど。。。



次回のしりとりは・・・
てぃーんうる「ふ」→「ふ」るめたるじゃけっと。

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明日のコラムは・・・

『目覚ましだより。。。』
コメント
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