まいぱん日記

身近なあれこれ、植物のことなど

フキタンポポ

2013年02月15日 | ロシア
ロシアで春告げ花といったらいろいろありますが、その一番手がフキタンポポです。
   ロシアのフキタンポポの画像 


 ロシアでは雪融けがきて、川がぼこぼこ音を立てて流れ出すと、雪の残る平原にいの一番に咲き出すのがフキタンポポです。
 日本でもフキタンポポの鉢植えが暮れからお正月にかけて園芸店に出回りますので、実際にご覧になった方もいらっしゃるでしょう。福寿草にちょっと似ているけれど、小さな丸い花芽をたくさんくっつけ合わせて、福寿草よりずっと庶民的な感じです。お値段も手頃。

 その花芽からタンポポに似た小さな鮮黄色の花がつぎつぎと咲きます。タンポポと同じように日の光がさしたときだけ花は開き、曇りや雨の日には閉じます。早春はそういう花が多いですね。
日ごとに鱗片のついた花茎がのびて、花は咲き終わると長い綿毛につつまれた、ふわふわの玉になります。

 以前ロシア北部の都市ヴォログダのさらに北にあるキリーロフ修道院というところを訪れたことがあります。そこへ行く途中、凸凹のあるどこまでもつづく平原を黄色い点々となってフキタンポポの花が咲き、南斜面は一面に綿毛で白く染まっていました。

 綿毛のあとは葉の出番です。フキタンポポのロシア名はちょっと変わっていて、「母とまま母」といいます。この名の由来についてチェーホフと同時代の作家コロレンコはこう書いています。
「フキタンポポはその緑白色の葉を風にぱたぱたさせていた。その裏は白く、母の手の感触のようにふかふかしてやわらかである。表は緑色で冷たい。これが「まま母」である。」

 葉の形から英語ではColtsfoot(若駒の足)といいます。ロシアでも「馬のひずめ草」「白ひずめ草」のよび名があります。「裏白」「ごぼう草」の名も葉に由来します

 フキタンポポは由緒正しい薬用植物です。この葉は古代から多くの国で呼吸器の薬として用いられてきました。5月末から6月初めにごわごわになる前の葉を集めて、乾燥させて使います。今でも煎じて去痰剤とし、肺疾患、発汗の薬剤にも入っています。
 ロシアの農民は葉だけでなく花も「緑の薬局」の常備薬として、呼吸器のほか、浮腫、肺結核、胃炎などに用いてきました。新鮮な葉はすりおろしたり、もんで傷やできものにあてます。それで「腫れ物の葉」とよんだり、また「痛風の草」の呼び名もありますから痛風にも用いたのでしょう。

 フキタンポポが咲くのはモスクワ郊外で平年4月13日。まだまだロシアの春は遠いですね。
コメント (2)
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