(装飾扇面経・・・お経が書かれています)
ほととぎす 声待つほどは
片岡の杜のしづくに
立ちや濡れまし 紫式部
5月13日(月)にSさまから茶事へお招き頂きました。11時の席入です。
Yさまとご一緒にいそいそと出掛けましたが、その日は今年一番という大雨の予報が出ていたので、ご亭主はさぞやいろいろとお心を砕かれたことでしょう。それで、エールのつもりで相田みつをの色紙を持参しました。
雨の日は雨の中を
風の日は風の中を 相田みつを
大分前にその詩で心の底からむくむくと茶事をする勇気が湧いてきたことがありました。昔のことで細かいことはすっかり忘れていますが・・・
Sさま宅へ到着すると、アプローチの階段に撫子の花がたくさん咲いていて、雨に濡れているのが最初の印象でした。
入口の壁に掛けられていた光源氏さまの御軸を見落としてしまい、茶事のテーマが大分後になってわかったという大変お粗末な正客で申し訳なかったです。
待合でIさま夫妻と合流しました。皆でスイカジュースを頂き、今年初めてのスイカは甘くどこか懐かしいお味です。
三階(?)の茶室へ席入りすると、床に源氏物語のような扇面画が掛けられており、この絵を見て今日のテーマは源氏物語かしら?・・・と。
後で伺うと「装飾扇面経」といい、ありがたい御経が女房たちのユーモラスな画と共に書かれていて、初めて拝見する「装飾扇面経」にとても興味を持ちました。
点前座には切掛け風炉に霰の釜が掛けられ、しゅんしゅんと好い鳴りが聞こえます。小ぶりの水指(上野焼)の前に茶入がかざられていて「あらっ?」
ご挨拶のあと濃茶が始まり、濃茶から・・とは斬新な趣向と思いながら、これからの展開が楽しみでした。
ピンクの外郎菓子「初カツオ」(美濃忠製)を銘々皿で頂戴しました。
連客さまにはお馴染みの小堀遠州流の点前ですが、裏千家流の暁庵にとって何度見ても見飽きることなく、袱紗捌き、茶巾の絞り替え、茶入や茶杓の清め方など美味しい濃茶を練るための魔法のような所作に魅入ってしまいます。
武家茶道なので袱紗は右に付け、建水も右手で右側に持って出て、置く時は左側です。
(小堀遠州流のお点前に魅入って・・・)
優美な御本の茶碗・銘「橋がかり」で美味しく練られた濃茶を頂きました。
まるで私が御本の茶碗が大好きなことをご存じだったのかしら? と思いました。斗々屋、御本、三島、粉引、雲鶴など李朝の茶碗に趣きと魅力を感じます・・。
一つ一つご亭主が選ばれた皆さまのお茶碗はどれも素敵でしたが、次客様の古朝日焼の茶碗・銘「緑陰」が心に残っています。
・・・ご亭主のお話を心地よく聴きながら、和やかに頂く濃茶の時間がなんと!幸せなこと・・・感無量です。
とても華奢な、樋に隙間のある侘びた茶杓は小堀宗通師の御作で銘「好日」。茶入は瀬戸肩衝、小ぶりながら端正なお形や釉薬の景色が美しく、仕覆は花文と段が交互にある優雅な裂地でした。
拝見が終わる頃になって、ご亭主は少しも動ぜず
「御飯のスィッチを入れ忘れていまして・・・少し時間が掛かりますので、こちらでしばしお遊びください。遊び道具を用意しました・・」 つづく)
撫子咲く舘の茶事に招かれて・・・(2)へつづく