天才!?ドナルド・トランプ氏と付き合うには:
私は嘗ての我が事業部の幹部の一人が“I am not a great big fan of Donald Trump.”と決めつけたのと同様に、アメリカ合衆国第47代大統領のドナルド・トランプ氏を尊敬している訳ではない。だが、常人または常識人または一般人の感覚ではとても付いていけない彼独特の政治的センスというか発想/感覚の持ち主であると躊躇わずに評価している。
言ってみれば「彼の発想には常識的な物の考え方の枠には収まり切れない、一種の天才的な事が多々あるという事」なのである。悪い言い方をすれば「突飛」であるとさえも考えられる思考回路の持ち主なのではないかという事。
政治家や有識者やジャーナリストたちが、何かと言えば「トランプ大統領はビジネスマンだから」と決めてかかるのだが、ビジネスマンの端くれとしては「我々と同じ範疇に入れないでくれよ。ビジネスとは何かとお解りか」と突っ返したくなる。
ここで一寸視点を変えて、私が「この人は本当に天才なのかな」と思っていた人物を語ってみよう。その人とは、私がこれまでに何度か「我が生涯の最高の上司」と形容してきた我が事業部の副社長兼本部長CM氏である。
彼もトランプ氏と同様に四年制大学の出身者で(=MBAではないという事)、地方の工場に新卒で現地採用された。アメリカの大手製造業の会社で現地採用のMBAでもない者が、副社長という経営の中枢にまで上がってくる(抜擢される)事は先ずあり得ないのである。彼はその障壁を稀有な才能を発揮して乗り越えたのだった。
CM氏は本社機構には属していない地方の工場から、その才能を認められ別組織の本部にいわば転進し(この辺りは日本の会社とは全く異なっている)、その能力を遺憾なく発揮して事業を改革しリストラまで断行して、日本市場では最弱小だった我が事業部を最大のシェアーホルダにまで伸し上げていったのだった。
そこに行きつくまでには、詳細は省くが、我々普通の(凡庸の?)部員達には思いもつかないような「そんな無謀な戦略を」と到底受け入れがたかった斬新なというか、同業他社が「思いも及ばなかった」と嘆いた、製造や販売の面に斬新な政策/作戦を打ち出して、悉く成功させたのだった。
トランプ大統領は「我が辞書にある言葉の中でtariffが最も美しい」と述べて、アメリカ向けに輸出してくる諸国に高率の関税による圧力をかけて譲歩を引き出すdealに持っていくなどと考えた者が、嘗ていただろうか。従来の慣行と常識などから逸脱した着想ではないか。
記憶では、オバマ大統領が中国とインドネシアからの輸入紙の言わば安値攻勢を締め出すべく、100%超の関税をかけて自国の産業を保護した例はあったが。そもそも、国内産業の保護が大前提だったはずだ。
トランプ大統領の政策と発想では「MAGA」と「アメリカファースト」の大目的達成の為には、グリーンランドを領有や、今回のガザのアメリカ領土化が出てくるのだ。私には、この常人には為し得ない着想には、我が副社長にも見受けられた天才としか形容しようがない、彼ら独自の思考回路を感じるのだ。
いきなり結論のようなことを言い出して締めようと思うが、トランプ氏のような常識人というか一般人から見れば「何と突飛な!」と驚かせてくれるような思考体系の所有者で独特の発想ができる人と接触し、懇談し、討論し、交渉しようというのであれば、一旦は自分の常識の枠から離れて、先方様の思考体系に合わせてみる手法も必要だろうと思う。
故安倍晋三元総理はトランプ氏を信じられないほど巧みに御しておられた。素晴らしい方だと尊敬している。事程左様に、アメリカやヨーロッパ人たちの思考回路と発想は、我々とは大いに異なっているのだ。彼らの思考の基には「一神教でいう神」が存在しているのだ。
その人たちの中でも天才的だとさえ思わせられる指導者と、八百万の神々が存在しているという思考体系で育った我々が、(石破茂首相が)上手く付き合っていくのは容易ではないだろうという事ではないかな。