駅伝競走の最盛期に思う:
昨19日にも都道府県対抗の男子駅伝競走を、NHKが地デジ放送の1チャンネルで中継していた。言いたくもなるが、フットボールのライスボウルはBSだったのに。ウインタースポーツの端境期であるとは言え「何と言う偏向か」と、長年のフットボールの良き理解者でありファンでもある当方は怒っている。
駅伝に話を戻そう。四連覇を果たした長野県代表の高校生が素晴らしい走りをしたようだが、アナウンサーは「早稲田大学進学が決まっている」とまで言って褒め称えた。私のような昭和一桁生まれには俄に理解できない事なので、現在では1月に既に進学先が決まるような仕組みが出来ているのだ。
世界でも冬場には駅伝競走が盛んになるとは寡聞にして聞いていないが、我が国では関東大学の箱根駅伝を頂点にして襷をリレーする駅伝が盛んであり、テレビ各局が競って中継放映してくれている。当方は「我が国には男女を問わず、これほど高い長距離走の能力/才能を備えた者たちが多いとは考えた事もなかった。
しかも、高い走力を備えた若者たちはその才能を活かして大学でも競技を続けるか、実業団に入って大先輩たちに鍛えられて超一流の走者に成長するとか、オリンピックを目指して厳しい(のだろう)練習を経験していくのだ。本稿の趣旨は、その事を批判しようというのではない。詳細は後述するが、その模様を眺めていて、時には「勿体ないな」と感じる事があるという話だ。
21世紀の今となっては「その昔に」と振ってから入らなければならないかもしれないが、プロ野球界に金田正一(1933年生まれで2019年に86歳で亡くなった)という400勝という大記録を立てた名投手であり大投手である人がいた。この大投手が二言目には「走れ、走れ。走って走力をつけて、足腰を鍛える事が野球の中でも投手としての基礎体力を固める最上の練習法である」と言って指導していた。
この理論と実際は正しいのである。特に野球のようにフットボール系とは違って、全選手が試合中に走り続けていなければならない事はないので、金田正一が言うように常に走る訓練が必要になるのだ。これだけの説明では納得できないという方は、試しにサッカー、ラグビー、アメリカ式フットボールの試合を見て欲しい。ボールと関係がない選手たちも立ち止まる事なく常に走っている事が解る。
言いたい事は「走力を鍛えたから名選手になれた訳ではない選手」は幾らでもいる。例えば立教大学で強打者として広く知られジャイアンツに入ってからご存じの大打者になった長嶋茂雄選手は「気が付けば足も速かった」のである。立教大学で砂押監督に走れと指導されたと聞いた事もないが、天与の素質の中に基礎体力としての走力もあったので、猛練習に耐えて大打者に成長したのだろう。
他には「大谷翔平君を見よ」と言いたい。彼を褒め称える場合の決まり文句が(私は認めない珍妙な表現)「二刀流」であっても、類い希な俊足の選手であるという話を聞いた事がない。彼がファイターズの頃でも、エインジェルスの頃でも、ダジャースでも走る練習に時間を割いたという報道はなかった。だが、50―50を達成して、凄いと言うしかない走力を見せていた。
敢えて言うが、長嶋茂雄選手も大谷翔平選手も同じことで、天与の素質・才能・体力・体幹に加えて、走力も兼ね備えていたのである。要するに「走力とは一流以上のスポーツ選手になる為の数ある素質の重要な一角を占めている」という事なのだ。
ここまで述べてきた事は、言わば当方の持論の導入部なのだ。即ち、「陸上球技の短距離/長距離の種目で才能を発揮して見せている選手たちは、もしかすると長嶋茂雄選手や大谷翔平選手のような球技にも適した走力以外の素質と体力を備えているのではないのか」と言いたいのである。高校から大学を経て社会人になっても、走力一本で過ごさせる(過ごす)のは勿体なくはないかという事。
私は自分が過ごしてきたサッカーの世界でも「足が速く、他の球技をやらせても大学の一部リーグ校で一本目を張れただろう」と評価した凄い人を沢山見てきた。アメリカに話を飛ばせばフットボールのプロになった選手は「野球とバスケットボールのどれを選ぼうか」と迷うほど、複数の種目に長けているという選手が多い。
ようやく結論のような事を言うのだが、あの駅伝競走で何人抜きとかいう抜群の走力を備えた選手たちを、走る事だけに限定しないで、その才能を試す狙いで、フットボール系の球技やバスケットボールなどをやらせてみたいのだ。より解りやすく(解りにくくなるかも知れないが)言えば、単能機の選手として育成するのではなく、複合機に育てて見たらどうかという事なのだ。
例えば、大谷翔平選手にバスケットボールをやらせれば、忽ちNBAの一流のシューターになっただろうし、NFLに行けば投げて良く、走っても良いという類い希な才能を発揮するQBになる走力を備えていると思うのだ。それとも、走力を一層鍛えてオリンピックに出て100mの世界記録を打ち立てて貰うか。
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