新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

矢張りトランプ氏の再選となった

2024-11-07 07:54:35 | コラム
予感は当たってしまった:

ドナルド・トランプ氏の圧倒的勝利に、早くも経産省幹部は「トランプ氏が公約として唱えていた高関税策が我が国、特に自動車産業に影響を及ぼすとの懸念を示した」と報じられていた。尤も至極であると思わざるを得ないのが残念だ。

当方はトランプ氏が最初の当選を果たされる前から、その(解りやすい表現を使えば)無知振りを批判してきた。ある大学教授は「不動産業者と言うよりもプロレス興業のプロモーターでもあったトランプ氏が、貿易の世界の実務の知識が乏しいことなどは驚くには当たらない」とも言っておられた。と言うのは、トランプ氏は「関税とは輸出業者に課される税だ」と思い込んでおられたことを指している。

その貿易についての不勉強は、あれから5年経っても改善されておらず、今回の選挙期間中にも「中国からの輸入には高率の関税をかけて中国の負担を増やしてやる」と広言しておられたのだった。トランプ氏はそうすることで衰退したアメリカの製造業を庇護し、支持層である労働者階層(working classと表現しておられた)のjobを安定させると伝えているのだと解釈している。

この辺りにも、トランプ氏が日頃から唱えておられる“America first”が具体的に現れている。前回の任期中には中国もアメリカからの輸入に高関税を賦課して対応したので、壮烈なアメリカ対中国の貿易戦争が出現していた。どちらの国が「サプライチェーン」として依存度が高いかなどは、私が此処で云々するまでもあるまい。

トランプ氏は今回の運動ではMAGAを何事にも増して強調しておられた。その具体的な内容は知らないが、高関税策も重要な要素だろうし、日本製鉄が苦境にあるUSスティール買収する案件などは、「阻止する」と公言されたので、実行に取りかかるだろう。アメリカの製造業の支援策も結構だが、空洞化が過度に進み、輸入依存度が高まってしまった状態を、労働者階層を支援するだけでMAGAになるのだろうか。

アメリカ国外に目を転じれば「ロシアのウクライナ侵攻」、「イスラエル対パレスチナ」、」「イスラエル対イラン」、「イスラエル対ヒズボラ(レバノン)」、「北朝鮮の対韓国の先鋭化した姿勢」、「台湾有事=対中国政策」等々重要な案件が山積している。これらに対して、トランプ氏独特の「アメリカファースト」の一本槍で対応して行かれるのか、黙って見ても良い事態ではないと思う。

また、その実力が不安定ではと見る筋が多いときに、石破首相が何時どのような手法でトランプ氏(President electと言うようだが)を訪問して意見交換を果たされるかを、大いなる関心を持って注目している。故安倍元総理は一番乗りでTrump Towerに駆けつけられたが、側近はPresident electの間には安倍氏までで、以後は他者とは会わせない策を採ったそうだ。

さらに、トランプ氏との会談では通訳の技量が大いに重要になるだろうが、そういう人選は終わっているのだろうか。安倍元総理の通訳を担当された方は非常に堅苦しいというか、難しい単語を沢山使われた格調高い英語にされていたと聞こえた。私はその格調の高さがトランプ氏に良い印象を与えて、信頼関係が確立されたのではないかと疑って(考えて)いる。

石破首相の課題の一つには先ず自動車問題がある。トランプ氏には「アメリカ国内を走っている無数の日本車は、我が国から輸出されたのではなく、アメリカ政府筋からのたっての要望でアメリカ国内の現地生産に切り替えて作っている車である事」を納得させねばならないのだ。さらにアメリカ国内を走っている車には、ドイツ車も極めて多い事も確認して頂かねばなるまい。

トランプ氏は所謂「レクチャー」を聞こうとはされないそうだから、トランプ氏の誤認識と無理解の壁を突破するかが重要な課題になると怖れている。これも重要だが、アメリカに行って「労働者階層」はどのような者たちが構成しているか、キチンと初等教育を受けているのか等々の実態を把握する必要もあると思う。「日本の組合員と同程度の教育を受けている人たちではない」とも承知しておくと良いと思う。

対トランプ策の準備期間は実質的には1ヶ月もないのではないか。だが、首班指名も組閣も来週のことである。外務大臣候補に擬せられた方は、今日から準備にかかられても早すぎることはないと思う。

敢えて言うが、アメリカ人たちが「日本とは」どころか「日本が何処にあるのか」も確実に承知しているのではない事から認識しておく必要があるのだ。我が方にしたところで、ワシントンDCとワシントン州の違いを解っておられない方がおられるのだ。


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