三島由紀夫の異色な小説『音楽』を読みました。学生のころに一度読んだことがあり、三島由紀夫という作家のイメージが変わった小説でした。今回再読すると、精神分析としてはありえない内容も目につきましたが、やはり推理小説的な謎解き型のおもしろさと同時に、人間の深層心理の不思議さを感じることができ、楽しく興味深く読むことができました。
精神分析医の「私」が、不感症に悩み、「音楽が聞こえない」と訴える女性患者麗子の治療を通して、彼女の深層心理の謎を探っていきます。
これを読んだ当時、精神分析という心理医療についてはほとんど知識のなかった時代だったと思います。この作品では精神分析という学問・世界観に対する疑問を呈しながらも、精神分析に対する興味をわき起こさせてくれます。これを読んで私は精神分析に対する興味を持ち、心理学を勉強したいと思うようになりました。結局その道には進みませんでしたが、強い影響を与えた小説です。
無意識の世界と意識上の世界の乖離というのは、私たち人間の大きなテーマです。それを意識していくだけで視座が広がります。無意識の世界をストーリーにあげて興味を抱かせてくれた本です。三島由紀夫という人はおもしろい人です。
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