<続き>
2.窯の機能と進化・その3
最終的(後期の段階)には、おそらく湿気や窯道具、焼成物を持ち歩いて斜面を降ろすなどの不便さを解消するため地上式になった。
煉瓦造りの地上窯は、フレームワークを作成する方法が採用されている可能性がある。それが中國でどのように出現したかは分かっていない。
東南アジア東岸で導入された窯は地上式ないしは、それへの移行形であったが、内陸のシーサッチャナーライでは、この進化の過程を観察することができる。
地上式の窯の天井は構造的に弱い。焼成中は膨張と軟化、冷却中は縮小しその繰り返しで損傷した。従って天井を支える追加の支柱が必要であった(但し、全ての窯がそうなっている訳ではない)。
窯体を雨から守るためにシェルター(小屋掛け)を必要とした。窯を地下式から地上式に変化させることにより、窯の設計制約が緩和し、窯形状を有利に修正することができた(図6)。最も顕著な変化は、焼成室床が徐々により大きな角度(7-15度)で傾斜し、煙突がそれに対応して低く外径は、より大きくなり火焔の流れが改良された。また窯の本体もより大きくなって経済的効率も改善された。
地下式から移行段階を経て地上窯に進化することは、外部からの影響または地元の革新から生じた可能性が指摘されている。しかし当時、東南アジアや中国のどこにあっても、そのようなコンセプトで生まれた地上窯は存在しなかったようである。
東南アジアの煉瓦製の地上窯のコンセプトは、その前夜の移行期の窯や地下式窯に内在していた。
焼成室の使用可能なスペースを最も効率的に使用し、ドラフトフロー(火焔流)を最も効率的に制御し、窯の温度特性を最大限に活用するのが基本である。目的は焼成室全体にわたって均一な温度を作り出すことであるが、違いが生ずる。床の温度は天井付近よりも低く、煙突に向かって温度が下がる。昇焔壁の設置や天井高さを低くすることで、流速の低下を防止し温度レベルを維持する工夫がなされていた。
焼成中の窯内部の雰囲気は、燃料の性質、温度、空気の流れなど多くの要素によって異なるが、一般的に加熱空気(主に不活性窒素、より重要なのは21%の酸素)、燃料ガス、燃焼炎、および煙が含まれる。
より低い温度では、燃焼の大部分は燃料表面やその近くで起こるが、高温では放出された揮発性ガスの全てを燃焼させるのに十分な酸素がない可能性があり、炭素粒子や焼成炎が窯外に放出される(図7)。ガスまたは粒状炭素(煙の可視成分)としての未燃焼燃料は窯体を通過して失われ、それが過度の状態では、生産効率を低下させる。
より高い温度では、窯壁に含まれる熱の一部が窯内に放射状に戻される残響効果がある。通常は完全燃焼のために十分な酸素が存在し、いわゆる酸化雰囲気となる。より高い温度では、燃料のガスへの変換は、より迅速となり酸素不足になる可能性がある。酸素を還元した雰囲気内では、或る種の化学反応が起こる。また陶磁焼成すると窯体に熱衝撃を受け、応力の程度は温度カーブの変化に関係する。
窯を徐々に加熱して冷却するプロセスは、窯体の寿命にも有益である。時折修理して使用すれば、窯の平均寿命は約30年であるが、1300℃のような高温に曝されると寿命は短い。熱的損傷の2つ目は、壁の崩壊と溶融である。壁面のスラブは溶融し結果として崩壊する。
一般的に東南アジアでは単一の焼成技術を使用していた。釉薬は生掛けで浸漬、注ぎ込み、刷毛塗りにより塗布された。時にはスリップ掛けし、ついで釉薬を塗布して焼成された(これは一般論で陶窯地により違いが認められる)。
<続く>
2.窯の機能と進化・その3
最終的(後期の段階)には、おそらく湿気や窯道具、焼成物を持ち歩いて斜面を降ろすなどの不便さを解消するため地上式になった。
煉瓦造りの地上窯は、フレームワークを作成する方法が採用されている可能性がある。それが中國でどのように出現したかは分かっていない。
東南アジア東岸で導入された窯は地上式ないしは、それへの移行形であったが、内陸のシーサッチャナーライでは、この進化の過程を観察することができる。
地上式の窯の天井は構造的に弱い。焼成中は膨張と軟化、冷却中は縮小しその繰り返しで損傷した。従って天井を支える追加の支柱が必要であった(但し、全ての窯がそうなっている訳ではない)。
窯体を雨から守るためにシェルター(小屋掛け)を必要とした。窯を地下式から地上式に変化させることにより、窯の設計制約が緩和し、窯形状を有利に修正することができた(図6)。最も顕著な変化は、焼成室床が徐々により大きな角度(7-15度)で傾斜し、煙突がそれに対応して低く外径は、より大きくなり火焔の流れが改良された。また窯の本体もより大きくなって経済的効率も改善された。
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東南アジアの煉瓦製の地上窯のコンセプトは、その前夜の移行期の窯や地下式窯に内在していた。
焼成室の使用可能なスペースを最も効率的に使用し、ドラフトフロー(火焔流)を最も効率的に制御し、窯の温度特性を最大限に活用するのが基本である。目的は焼成室全体にわたって均一な温度を作り出すことであるが、違いが生ずる。床の温度は天井付近よりも低く、煙突に向かって温度が下がる。昇焔壁の設置や天井高さを低くすることで、流速の低下を防止し温度レベルを維持する工夫がなされていた。
焼成中の窯内部の雰囲気は、燃料の性質、温度、空気の流れなど多くの要素によって異なるが、一般的に加熱空気(主に不活性窒素、より重要なのは21%の酸素)、燃料ガス、燃焼炎、および煙が含まれる。
より低い温度では、燃焼の大部分は燃料表面やその近くで起こるが、高温では放出された揮発性ガスの全てを燃焼させるのに十分な酸素がない可能性があり、炭素粒子や焼成炎が窯外に放出される(図7)。ガスまたは粒状炭素(煙の可視成分)としての未燃焼燃料は窯体を通過して失われ、それが過度の状態では、生産効率を低下させる。
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窯を徐々に加熱して冷却するプロセスは、窯体の寿命にも有益である。時折修理して使用すれば、窯の平均寿命は約30年であるが、1300℃のような高温に曝されると寿命は短い。熱的損傷の2つ目は、壁の崩壊と溶融である。壁面のスラブは溶融し結果として崩壊する。
一般的に東南アジアでは単一の焼成技術を使用していた。釉薬は生掛けで浸漬、注ぎ込み、刷毛塗りにより塗布された。時にはスリップ掛けし、ついで釉薬を塗布して焼成された(これは一般論で陶窯地により違いが認められる)。
<続く>