リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

尊敬できる社長さん

2016-10-16 08:20:00 | オヤジの日記
ブログネタが尽きたので、恥も外聞もなく、前回の続きを。

休日の5日目。

前日と同じように、家族の朝メシと息子の弁当を作って、5時前に家を出た。

「隠れ家」という名の倉庫に入って、またすぐに寝た。
起きたのは、10時前だ。
昨日より、さらに体調が回復した気がした。

地面も天井も回っていない。
それは、嬉しいことだった。

冷蔵庫からビールを取り出して飲んだ。
朝メシ代わりに、魚肉ソーセージをかじった。

気分が良くなったので、ギターを手に取った。
ギターは弾けるが、譜面なしで弾けるのは2曲しかない。

エリック・クラプトンの「Tears in heaven」とザ・ビートルズの「Across the universe」だ。

この2曲だけは、人様の前で披露しても恥をかかない自信がある。
(披露したことはないが)

同じ曲を何度も弾いた。
ときに「Tears in heaven」のコード進行で、即興で歌詞を変え、メロディーを変えて歌ったが、お粗末なものにしかならなかった。
才能がないのは知っているので、落ち込みはしない。

ギターと戯れているとき、ドアをドンドンされた。
また娘かと思ったが、まだ昼の12時にもなっていない。
学校が終わるのは、3時過ぎだ。
娘ではないだろう。

そう思っていたら、ドアが開いて、「Mさん、いる?」という声がした。
おそらく、ここの倉庫の主、中古OA販売会社の社長だ。

立ち上がって、出迎えた。

世間話も何もなしに、社長がいきなり「僕に、カップラーメン奢ってくれませんか。チャーシューは持って来たから」と言った。

断る理由がないので、ふたりでカップラーメンを食った。
社長は「激メン・ワンタンメン」、私は「出前一丁」だ。
おかずは、社長持参のチャーシュー。

このチャーシューは、事業に失敗した社長の弟さんが作ったものだ。
弟さんは、その当時、上尾駅近くで、屋台のラーメン屋を転がしていた。

何度か食いに行ったが、スープが脂っこくて、私の好みではなかった。
ただ、チャーシューは絶品だった。

むかし私がそう言ったのを覚えていて、社長が持って来てくれたのかもしれない。

社長は、気配りの人だった。
私が知っている中小企業の社長のほとんどは、クセが強かった。
「私以外私じゃないの」というゲスの極み乙女的な人が多かった。

しかし、この社長は、社員を皆「さん」付けで呼んで、分け隔てのない関係を築いていた。
たとえば、ボーナスなども、なぜ多いのかなぜ少ないのかを個別に説明する誠意を見せた。

そのことが、いい経営者の条件かどうかはわからないが、私はそんな社長を尊敬していた。

その尊敬する社長が、私の目を覗き込むようにして言った。

「Mさん、今日は少しまともだけど、僕が見るMさんは、いつも疲れきった顔をしていますよ。
勝手なことを言わせてもらいますが、怒らないでくださいね。
Mさんは、すべてを一人でやろうとし過ぎているのではないですか。
愚痴とか人に言ったことがありますか? 全部溜め込んでいるんゃないですか。
そこが、心配なんですよね、僕は」

驚いた。
前日、娘に言われたことと同じことを社長に言われたからだ。

立て続けに二人に言われたということは、多くの人が、私のことをそう見ているということだろう。

つまり「無理をしている」と。

「何かたまっていることがあったら、僕に言ってよ。
役には立たないかもしれませんけど、ひとに言うのと言わないのとでは、違いますからね」


そんな社長さんは、先月、動脈瘤破裂で63歳の生涯を閉じた。

葬儀では、多くの社員さんたちが、くずおれるように泣いていた。
もらい泣きした。

それを見て、やはり社員さんに慕われていたのだな、と思った。

そして、社長さんも、ご無理をなさっていたんだな・・・と。


一度だけでもいいから、お互い愚痴を言い合ったらよかったですよね、社長さん。
それが、残念です。


合掌。