リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

貧しいひと・家族編

2017-12-17 05:06:00 | オヤジの日記

 ある貧しい男がいた。

 

彼は、仕事をしていく上で「食事」と「睡眠」が、とても重要だと考えていた。

しかし、「家族」こそが一番大事だとも考えていた。

この男の心と体と財布は貧しいが、彼の家族は、少しも貧しくはない。

彼の妻は、彼の話をまったく聞かないという小さな欠点を持っていたが、彼の高齢の母親の面倒を親身になって見てくれている。それだけで、彼は百点満点の妻だと思っていた。

時々、食事中に屁をして「あ、出たぁ!」と言うのは、ご愛嬌だ。

 

27歳になる彼の息子は、大学4年の時、発達障害であることが判明した。

その後、彼は企業の研究所に職を得て、5年近く無遅刻無欠勤だ。彼は息子の真面目なところを見習わなければいけないと思っている。しかし、おそらく彼には無理だろう。

大学4年になる彼の娘は、介護関係の会社と鉄道会社から内定を得た。

どちらを選択するか、彼は相談を受けているが、最後に決めるのは娘だ。どちらを選んだとしても、彼は娘の判断を尊重するだろう。

彼は昔、娘が幼稚園に上がる前の日に、こう言ったことがある。

これからは、私を本当のお父さんだと思って、何でも相談するんだよ。

それに対して娘は、「わかった。本当のお父さんだと思う・・・って、本物でしょ!」という的確なツッコミを返してくれた娘。

それ以来、22歳の今に至るまで、飽きることなくツッコミを入れてくれる娘。

彼にとって、彼の娘は最高の相方と言えるだろう。

 

息子も娘も、その日あったことを必ず彼に報告してくれる。

こんなことまで報告しなくてもいいだろう、というようなことを晩メシのときに二人で競うように報告をする。

娘などは、水曜日に、アルバイト先の妻子持ちの男と映画「火花」を観にいったことまで報告したのだ。

ただ、変な関係ではない。彼も男とは何度も会ったことがあった。大学の先輩ということとモーニング娘。が好きという共通項があって、話しやすいと娘は言っていた。娘は、男の奥さんとも顔見知りだ。

「透明感のある美人なんだよな。今さら遅いかもしれないが、ボクもあんな人になりたいもんだ」と言っていた。

 

他の家族は、「セキトリ」という名の猫。

武蔵野のオンボロアパートに住んでいたとき、東日本大震災の前くらいから、庭の段ボール箱に住み着いた猫だ。

彼の家族とは、ほとんど接点はなかったが、セキトリは、いつも彼の話し相手になってくれた。

武蔵野から国立に越すときに、セキトリはノラ猫から家猫に出世した。彼の家族ともすぐに馴染んだ。

顔は、はなはだしいほどのブスだが、性格は穏やかだ。セキトリが怒ったところを見たことがない。ノラ猫は、飼いづらいと言われている。しかし、セキトリは、驚くほど簡単に新しい環境に適合した。

きっと頭がいいのだと思う。

 

残る家族は、娘の大親友・ミーちゃんだ。

ミーちゃんは、訳あって中学3年から高校1年の7月まで彼の家で暮らしていた。

大食いのミーちゃん。

タラコ一腹や塩辛1パックで、3合のご飯を食べるのである。

絶対に回転寿司には連れて行けない子だ。何皿食うか想像ができない。

ただ、焼き肉食べ放題やビュッフェスタイルの90分間食べ放題には連れて行ったことがあった。

その食べっぷりのすごさを見たまわりは、「何?大食いの子?」「テレビ出てた?」などと言ってざわついた。

彼の娘とミーちゃんは、まるで姉妹のように、外見も性格もよく似ていた。

そんな彼女のことを彼の家族は、とても愛した。

ミーちゃんは、母親と折り合いが悪いので、大学を卒業したら、家を出て一人暮らしをすると言っていた。

「夏帆んちの近くに越してきてもいいかな」

いいともー!

どうやら、毎晩彼の家で晩ご飯を食べようと目論んでいるようだ。

彼は、それをとても楽しみにしている。

 

ところで、ミーちゃんは、彼の家族のことを「下ネタ家族」とよく言っていた。

彼の家に居候をしていたとき、ミーちゃんが7歳年下の弟の話をした。

ジャングルジムのてっぺんから頭から落ちたのだという。しかし、奇跡的に無傷だったらしい。

それを聞いた彼は、当たり前だよね、7歳なんだから「ケガない」に決まってるさ、と言った。

娘以外の3人がポカン顏だった。そこで、彼の娘がミーちゃんに耳打ちをした。

それを聞いたミーちゃんは、「夏帆のオヤジは、とんでもねえやつだな。下ネタじゃねえか!」と笑い転げた。

それ以来、ミーちゃんは、我が家の下ネタに馴染み、自分からも下ネタを言うようになった。

 

下ネタ家族。

 

彼は、その開けっぴろげな家族をとても愛している。

 

彼の家族は、そんな感じだ。