昨日(22日)は藤枝市民文化会館で開かれた『藤枝太鼓25周年コンサート~刻~』を鑑賞しました。以前から酒造りの映像に、太鼓の音色が合うんじゃないかと思い、地元に演奏家がいるならぜひ試聴したいと考えていたからです。こう、タイミングよく、試聴の機会があるなんて、なんだか運が向いてる感じ!
今まで、太鼓の演奏といえば、夏祭りなどの地域イベントの余興ステージで、ちらっと垣間見る程度。たまにテレビで『鼓童』の海外演奏会などのニュースを見て、このレベルになると芸術作品として評価されるんだなぁと感心しますが、これまでお祭りなどで地域の太鼓グループの演奏を聴いていた限りは、力自慢で多少のリズム感覚があれば、誰でも叩けそうじゃん、と思い込んでいました。
とんでもない思い違いでしたね。太鼓だけのコンサートを、初めてじっくり鑑賞し、こんなに“魅せる”“聴かせる”ものだとは思いませんでした。
まず、なんといっても太鼓を打つ姿勢が美しい。5月に坐禅を経験したとき、何事も、姿勢を正すことが大事だと実感しましたが、太鼓の世界でもきっと、理想の音を出すために必要不可欠な「構え」とか「呼吸の仕方」があるんでしょう。考えてみると、太鼓ほど、全身をフル稼働させて操作する楽器は他にありません。太鼓奏者になるためには、肉体をしっかり鍛え、呼吸法をマスターしなければならない、つまり自己鍛錬に耐える精神力も必要になるわけです。
さらにチームワーク。音階がなく、音色もシンプルだけに、ちょっとした拍子の狂いやズレが目立ちます。実際、昨日も、テンポが途中から拙速になり、違和感を感じた曲もありましたが、仕事や家事の合間の、限られた練習時間で、団員全員の呼吸を合わせるのは大変だったと思います。
『藤枝太鼓』には、ふるさと志太の歴史や自然をモチーフにした創作太鼓が多く、昨日も“宇嶺”“瀬戸川勝草太鼓”“志太鬼”“花倉の乱”といったオリジナル作品が披露されました。これをマスターするのも並大抵のことではないでしょう。「地元の盆踊り大会で、余興で目立てばいい」なんてレベルのモチベーションではないことが、ステージからも伝わってきます。しかも、全員が同じモチベーションで、息を合わせないことには、成功しません。
ほとんどのオリジナル作品の作曲を手がける代表の寺田益男さんが、どういうキャリアの方かは存じ上げませんが、25年も続けられるのは、団員につねに高いモチベーションを持たせ、育て上げるリーダーシップがあってこそ、と想像します。
こういう人たちの演奏ならば、『吟醸王国しずおか』で描く、酒造り職人たちの汗や鼓動に共鳴するのでは…と勝手に想像をふくらませました。酒造りをモチーフにした作品なんか、オリジナルで作ってくれたら、恒例の地酒イベント『志太平野美酒物語』でゲスト演奏してもらうことも可能かな、なんて。
私は、これも理想論かもしれませんが、『吟醸王国しずおか』は、突き詰めれば、静岡という地域を、静岡でモノを造る、あるいは静岡のモノを使う人の生き方を通して見つめ直す作品になればと思っています。郷土意識が希薄と思われている静岡人の、潜在的な郷土愛を掘り起こしたい。それには、スタッフ自身が静岡のよさを実感してなければ、他人を納得させる作品なんて出来ないだろうし、できればどこか一部でも静岡に根っこがあるクリエーターに協力してもらい、彼らから巻き込んで行きたい…そんなふうに考えています。
夜、帰宅したら、1年前にNPO法人活き生きネットワークの七夕コンサートで知り合った『ようそろ』さんから公演の案内が届いていました。『ようそろ』は裾野市に拠点を置く、男性2人組の和太鼓演奏ユニットで、案内をもらうのは初めて。…よりによって、和太鼓の生演奏に興奮醒めやまない日に届くとは、なんとも不思議な気分です。しかも案内を見ると、つい最近、中国の新進若手映画監督・陸川(ルー・チュアン)監督の新作『南京!南京!』に出演したとあります。映像とのコラボ経験があるなんて、ますます楽しみ!
8月17日(土)15時30分から、芝川町のくれいどる芝楽文化ホールでコンサートがあるそうですので、これは聴き逃すわけにいきません…。
なお、『藤枝太鼓』は、国民文化祭の静岡県代表として、昨年(福井)、今年(茨城)で演奏を披露し、来年の静岡大会では静岡県武道館(JR藤枝駅近く)で開かれる和太鼓フェスティバルでの活躍が期待されます。今年9月28日(日)には、県武道館で和太鼓フェスティバル(プレイベント)も予定されていますので、興味のある方はぜひ!