杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

大河ドラマ全曲集

2011-01-13 19:52:25 | アート・文化

 昨日(12日)、仕事で必要な資料本をアマゾンでネット検索していて、偶然見つけたのが、『決定版大河ドラマ全曲集』というCD。そういえばお正月に大河ドラマ50年の記念番組を観て懐かしいな~と思っていたところ。NHKもうまい商売するな~と感心しつつ、ついつい購入ボタンを押してしまい、今日届いて、さっそく試聴しました。

 

 

 記念番組を観て、一番最初に観た大河だと記憶しているのは1972年の『新・平家物語』でしたが、テーマ曲はさっぱり記憶になく、曲を鮮明に覚えているのは1974年の『勝海舟』(富田勲作曲)でした。

 

 改めて聴き直して、前作『国盗り物語』までの、いかにも歴史大河って感じの仰々しい曲調から一新して、すごくスピーディで躍動感があってワクワクします。ちなみに『勝海舟』で坂本龍馬を演じた藤岡弘が、私にとっての“初龍馬”で、どうもそのイメージが抜けずにいます。最初に観た大河ドラマで歴史上の人物の顔が固定化されるって怖いですね(苦笑)。今の小中学生は龍馬=福山雅治になっちゃうんでしょうね。天国の龍馬さん本人は、平成時代のイケメンにカブられるってご満悦かも??

 

 1977年の『花神』(林光作曲)も三拍子のリズム感あるテーマ曲。『勝海舟』同様、幕末の混沌とした時代を描きつつも、大空や大海原や〈新しい時代の夜明け〉をイメージさせるような、メジャーコードの明るい曲調なんですね。2004年の『新選組!』(服部隆之作曲)もメジャーで明るくてテンポがあってすごくいい。若者たちが時代を変えようと、ひたすら前を向いてエネルギッシュに躍動する幕末という時代に希望を感じます。今の政治家に聴いてもらいたいよ、ホント。

 

 

 純粋に、音楽として素晴らしいと思うのは、1994年の『花の乱』(三枝成彰作曲)。日野富子を主人公にした異色の作品で、テーマ曲もどこかはかなげで繊細で大河っぽくないけど、桜吹雪が舞い散る幻想的なタイトルバックは今でもよく覚えています。音楽だけ聴くとショパンのピアノコンチェルト風で、ナチスに占領されたワルシャワみたいに東欧の古くて哀しげな街並みが浮かんでくるなぁ・・・。

 

 2000年の『葵~徳川三代』(岩代太郎作曲)のテーマ曲も私の好きなブラームスやチャイコフスキーっぽくてイイ。バックコーラスは確か英国ケンブリッジのキングスカレッジ合唱団で、私、現地の教会でこの合唱団のナマ讃美歌を聴いたことがあるんです。一緒に観た現地在住の妹に「この合唱団、NHK大河ドラマのテーマ曲を歌っているよ」と説明した記憶があります。

 徳川家康も、いろんな人が演じたけれど、やっぱりこのときの津川雅彦がドンピシャリだな~。江は岩下志麻、初は浜乃久里子、淀は小川真由美でしたね。今年のキャストに比べたらすごいコワモテ三姉妹・・・(笑)!

 

 信長・秀吉は、私的には『黄金の日々』(1978年)の高橋幸治&緒形拳コンビがベストです。2人が20代のときに同じ役を演じたという『太閤記』(1965年)は、1962年生まれの私にはまったく記憶にありません。『黄金の日々』を観ていた時、母親が『太閤記』が面白かったとさかんにしゃべっていたのは覚えているけど。

 

 

 

 2001年の『北条時宗』(栗山和樹作曲)と2010年の『龍馬伝』(佐藤直紀作曲)は、異国風の女性ボーカルがすごく斬新で、作曲家のクリエイター魂を感じて刺激されますね!仕事しているときにも、何度も聴きたくなります。

 

 

 

 さすが、当代きっての作曲家が名を連ねたオムニバス集だけあって、聴き応えがありました。1曲あたりの長さは2分ちょっとですが、ひとつの時代イメージを2分ちょっとに凝縮する作業であり、日本で一番制作費がかかっているであろうテレビドラマのメインテーマであり、番組制作者の要求もハンパじゃないと思います。歴代作曲家と比較されてアレコレ言われることもあるでしょう。

 そういうプレッシャーの中でスキルを試されるって、大いにやりがいがあるはず。1年間、自分の名前が日曜8時にお茶の間に、ピンでクレジットされるんですから、裏方仕事の多い音楽家にとってハレの舞台に違いありません。

 

 それは脚本家や演出家にとっても同じ。こういう歴史ある番組コンテンツって海外にはないと思うので、制作に関わる人は誇りにし、いつまでも大切に作ってほしいですね。

 なにせ、日本人に、大事な母国の歴史人物のイメージを固定させてしまう力があるんですから・・・!