年末年始、編集作業や原稿書きに追われていたのが、ようやくひと段落。本屋さんや映画館をのぞく余裕ができました。・・・やっぱり外の感性をインプットする時間も大事ですね。最近とくにネーミングやキャッチフレーズを考える仕事が続いて、自分が操れる語彙の狭さやワンパターン化を痛感しているところ・・・。ここ数日、あまり目的を設けず、行き当たりばったりで本や映画に浸っています。
ここ1週間で観た映画は『ヤマト』『ソーシャルネットワーク』『ハーブ&ドロシー』の3本。以下、勝手な感想を書きますので、これから観に行くと言う人は、読まないでください(苦笑)。
『ヤマト』はアニメをリアルタイムに観ていた世代なので、観る前は期待と不安が半々ぐらいでしたが、観た後は・・・。
ハリウッドでも懐かしアメコミヒーローの実写化がトレンドになってましたが、『スパイダーマン』も『ダークナイト(バットマン)』も、アメコミを観て育って、今、大人になった世代がちゃんと観られる人間ドラマになっていた。それに比べると・・・なぜヤマトを今、あのキャスティングで実写化する必要があったのか、よくわからなかったなぁ。柳葉敏郎演じる真田さんぐらいかしら、オリジナルに通じる“熱”を感じられたのは。たぶん演じた柳葉さん自身がヤマト世代で、思い入れがあって演じられたのだと思います。
宇宙人vs地球防衛軍みたいなストーリーって、たとえば昨年の『第9地区』みたいな作品を観た後だと、よほどキャラクターを魅力的にするか凝ったストーリーにしないと陳腐に感じてしまうし、今のVFX技術ならヤマトもこれだけリアルに描けるんだぞーと言いたかったにしても、『アバター』クラスのものを観てしまった後ではね・・・。ヤマトは好きだったけど、大人になっていろいろな映画を観て、歳も重ねてしまった身には、きわめて残念な実写化でした。
『ソーシャルネットワーク』は、さすがアカデミー賞有力候補になっている作品だけあって見応えがありました。フェイスブックの存在をごく最近知った身としては、この作品を昨年の時点で映画化したデビッド・フィンチャー監督を身震いするほど尊敬します。ヤマトと対照的で、まさに、今、映画化するタイミングとしてドンピシャですね。
私の好きな映画評論家の清水節さんが「リアルを疎かにし、バーチャルに依存しがちな同時代の人間関係そのものが真の主役とは言えまいか。かつて殴り合うことで生を実感する映画を撮ったフィンチャーだが、身体性を欠いたサークルが増殖していく様はさながら“反ファイト・クラブ”だ。その成功者も、心の痛みからは逃れられない」と評論していたのに惹かれ、『ファイトクラブ』も、もう一度観たくなりました。
『ファイトクラブ』でエドワードノートンが演じた役のように、また古いところでは『アマデウス』のサリエリ、最近では『龍馬伝』の岩崎弥太郎のように、主人公の凄さを誰よりも理解しながら、猛烈に嫉妬し、反発する“第二の男”の目線を、もう少し丁寧に描けば、ドラマとしても盛り上がったかもしれないし、ネット時代ならではの人間性やドラマ性の薄さが却ってミソになるならば、もっとハジけた、それこそフィンチャー監督がファイトクラブを作った時にリスペクトしていたキューブリックの『時計仕掛けのオレンジ』みたいな、寓話的な表現でもよかったかも。
実在の人物を取り上げる難しさもあったと思うけど、映画表現という意味で比べたらクリストファー・ノーランが作った『インセプション』は斬新だった!さすが、あのアメコミヒーロー・バットマンを『ダークナイト』に仕立てた監督だけある!!
いずれにしても、『ソーシャルネットワーク』は脚本も編集も素晴らしいし、膨大な台詞の応酬なのに、役者同士の完璧な間の取り方を演出しきった監督の手腕は脱帽だし、あの弾丸台詞を日本語で瞬時に理解できるよう翻訳した人の能力も凄い!。
アカデミー賞では、作品賞や俳優賞は難しいかもしれないけど、監督賞、脚本賞、編集賞は獲るんじゃないかなぁ。私的には、いつも受賞作では脚本、編集、助演など“脇役が光る仕事をした”作品に惹かれます。ライター的には字幕翻訳家にも何か賞があればいいなと思います。
『ハーブ&ドロシー』は、静岡市美術館で21日(金)夜に開かれた試写会に参加しました。ニューヨーク在住のアートコレクター・ヴォーゲル夫妻を日本人監督が撮ったドキュメンタリー。コレクターといっても小さなアパートに暮らすつつましい老夫婦が、自分たちの給料で買える値段で、1LDKのアパートに収まるサイズの現代アートを、30年以上かけてコツコツ買い集めた。無名作家の売れない作品でも、自分たちが「キレイ」「楽しい」と感じたらそれでいい。そしてそれらは、いつのまにか20世紀アート史に名を残す芸術家の、若かりし頃の隠れた名作の山に・・・。
学生時代は絵描きを目指していたという元郵便局員の夫と元図書館司書の奥さんが、時には作家本人や美術専門家を唸らせるほど鋭い目利きぶりを発揮したり、どんな高名な美術館や博物館や画廊から「売ってくれ」と言われてもNOと言い続け、新婚当時から同じアパートに住み続け、わずかな年金を今もコレクション収集に充てている。とても爽快&痛快な現代のおとぎ話で、現代アートのガイドムービーであると同時に、“老後の素敵な生き方指南”の映画になっていました。映像作品としては、どっちつかずで中途半端だったって印象もいがめなかったけど・・・。
試写会の後は美術館の学芸員さんが映画に登場した作家や作品の解説をするという、なかなか粋な企画でした。私は予定があったので作品解説は聴かずに帰りましたが、せっかく駅前に立派な美術館を作って、映像視聴もできるなら、こういう企画はどんどんやっていただきたいですね!
さて今週はあと、デンゼル・ワシントンの大ファンという友人と、暴走列車を止めるアクション映画『アンストッパブル』を観に行きます。感想はまた後日。