杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

バレンタインと無縁社会

2011-02-14 22:31:13 | 日記・エッセイ・コラム

 バレンタインデーでしたが甘いものにトンと縁のない一日でした。・・・っていうより食べ物に寄りつけない日だったなぁ。先週11日、根を詰めて原稿執筆に集中していたら、夜中にひどい腹痛で、翌12日は全身の関節が痛くて起きられず、お腹も緩みっぱなし。どうやら風邪がお腹にきたようです。

 

 

 13日は一日指ヨガの講習会があって夕方は大事な打ち合わせ。やむをえず薬局で勧められた下痢止めを飲んだら、速攻で効いたけど、口の中にずーっと薬の味が残り、何を飲んでも苦い。お腹は空気が溜まったみたいに膨張してガスがプスプス・・・もう恥ずかしいったらありません そんなこんなですっかり食欲が減退し、バレンタインどころではありませんでした。

 

 そんな情けない私でも、13日夕方の打ち合わせではちょっとばかり幸せな気分になりました。

 

 ちょうどNHKで「無縁社会」というのをやっていましたね。体調が悪いのについつい観てしまって、独身一人暮らしフリーランサーの身としてますます痛~い気持ちになったのですが、13日に会った2人の30代のプロフェショナルは、物腰が柔らかく、謙虚で、お互いの専門職に対するリスペクトと、理解し合おうとする前向きな姿が頼もしかった。

 

 初対面同士の彼らを引き合わせる仲介役だった私は、仕事の専門ややり方がまったく違う2人が理解し合うのに時間がかかると思ったのですが、杞憂に終わったみたいです。今日、互いに好感触だったことを知って、自分のことのように嬉しく、腹痛を忘れるくらい豊かな気持ちになりました。

 少し前の自分だったら、自分の仕事や生き方に自信を失いそうな時、ましてや体調が悪いときに他人の面倒なんか二の次だったと思います。事務的に引き合わせ、結実してもしなくても、自分のそばをただ通過した人たち、で終わっていたでしょう。

 

 

 無縁社会の無機質な映像と、バレンタインのヴィヴィットな街のカラーを比較し、いったいどっちの世界がリアルなんだと混乱しそうだった時に出会った、リアルに頼もしい若者だったからこそ、救われたような気分になったのかもしれません。に、しても他人同士の縁をおぜん立てしたことが、こんなに気持ちを豊かにしてくれるなんて、ちょっと自分でも意外でした。

 

 自分が引き合わせたわけではありませんでしたが、ちょうど喜久醉の青島さんと松下さんが出会ったとき、この2人の縁が本当に実になってほしいと心の底から純粋に願った時のことを思い出しました。

 

 

 企業同士のマッチングや仲介で実績のある人、あるいは生涯のパートナーを引き合わせた経験のある人が実感した喜びって、こういう思いの延長線上にあるんでしょう。

 

 

 活字や映像の仕事を通して、今までも、何かと誰かを引き合わせていたのかもしれないけれど、人と人をダイレクトに結びつけて新しいものを生む瞬間に立ち会う醍醐味って、全然手応えが違いますね。…多少なりとも自分が世の中に役立っているという実感というのかな、これを忘れない限り、自分は「無縁社会」とは無縁だと念じることにしました。