杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

アメリカ西部モーターハウス旅行9~芸術の古都サンタフェ

2012-09-05 12:16:23 | 旅行記

 8月15日から17日の3日間は、ニューメキシコ州の古都サンタフェを観光しました。サンタフェって聞いて多くの日本人は「宮沢りえのヌード写真集」を思い出します(自分もそう)が、その程度の認識しかなかったら恥ずかしい、大変魅力的なまちでした。

 

 

 

 まず、初歩的な情報から。サンタフェは1607年に出来た全米で二番目に古い町(一番古いのは1565年建設のフロリダ州オーガスティン)。もともとは原始インディアンのプエブロ族が住んでいましたが、16世紀にスペインに征服され、総督領が置かれました。

 

 

 その後、プエブロ族の武装蜂起等で内乱が続き、1824年のメキシコ独立戦争で新生メキシコ領となり、アメリカ―メキシコの交易の中心地に。1846年の米墨戦争でアメリカ合衆国のニューメキシコ準州となり、鉄道が開通して産業革命を迎え、1912年に47番目の州に昇格、サンタフェはニューメキシコ州の州都となりました。

 

 

 1922年からは、プエブロ族の伝統的な陶磁器や装飾品を展示即売するサンタフェ・インディアン・トレード・フェア(Santa Fe Indian Trade Fair)が始まり、インディアンアートのメッカに。町の周辺の豊かな自然に惹かれ、ジョージア・オキーフなど多くの芸術家が集まりました。

 

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ギャラリーや美術商の数は230を超え、アート市場規模はニューヨークに次ぐ全米第2の大きさ。アートギャラリーが軒を連ねる美しい街並みや、スペイン統治時代からの古い教会等の歴史的建造物は、この町の大きな観光資源になっています。

 

 

 

 

 ちょうど訪れた期間中の17~18日に、全米最大のインディアンマーケット(アート&クラフトフェア)があって、プラサ周辺は世界中からやってきた観光客で賑わっていました。プロのアーティストやインディアン作家たちの手作り逸品展で、コンテストも行われ、受Imgp0765賞作品もその場で買えるとあって、お値段はもちろんそこそこしますが、この日のために1年間貯金してやってくるファンやバイヤーも多いそう。

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 カチーナ像を持ったこの人は、何かの賞を獲ったようで、観光客の写真モデルでモテモテでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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  建築に興味のある方ならご存知かもしれませんが、この町は1573年にスペイン国王フィリペ2世が制定した都市計画法「インディアス法」(スペイン語:Leyes de Indias)のもと、プラサ(広場)を中心として都市に必要な建物が造られました。都市の通りはプラサから放射線状に延びています。

 

 

 1912年にニューメキシコが州に昇格すると、計画性のない都市設計で「アメリカのどこにでもある街」になってしまうのではないかという危惧から、サンタフェ市は総督邸をはじめとする歴史的な建物を修復し、リオ・グランデ川流域のプエブロ族の伝統建築にならって市内の建物の外観をアドビ風に統一。1930年頃になると、今度は白い壁や切妻屋根といったスペイン植民地復古様式の建物を建て始めます。1958年には歴史地区内に新築・改築する際にはこのような伝統様式を踏襲するよう、条例で定めました。

 

 

 

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 ・・・私はアメリカといったらニューヨークやサンフランシスコのような大都市しか行ったことがないので、京都や奈良のように歴史的な街並みが残る芸術の町があるってことに、まず感激しました。

 

 この教会はプラサ近くにある聖フランシス大聖堂。ロマネスク様式です。1869年から86年Imgp0739の建設といいますから、日本ではちょうど明治維新のころでしょうか。聖フランシスは自然や生き物の保護者として知られています。誰でも無料で入れます。座ってひと息ついたら、なんだかじんわり涙が浮かんできました。・・・こういう場所で、こういう反応をした自分に、なんとなく少しホッとしました。

 

 

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 こちらは1873年建造のロレット教会。ゴシック様式です。支柱が一本もない奇跡のらせん階段で有名です。

 伝説によると、修道女たちは、はしごを使って2階にある聖歌隊席に上らなければなりませんでしたが、聖ヨセフ(マリアの夫。大工の腕を持つ)に9日間の祈りを捧げ、その9日目に白髪の男が現れこの階段が作られたとか。完成するとすぐにその男の姿は見えなくなりました。未だに、誰がどうやってこの階段を作ったのか謎だそうです。

 

 

 

 

 

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 15日は夜、サンタフェ・オペラに行きました。これも今回初めてしったのですが、サンタフェには全米で最も美しいといわれる野外オペラ劇場があり、夏の時期だけ上演されるサンタフェ・オペラは世界的にも知られ、チケットがなかなか取れないそう。私たちのこの旅行は、人気の高いグランドキャニオンやモニュメントバレー等のRVパークを予約するため、4月初めに妹がプランニングしてくれたので、サンタフェオペラのチケットも早々に入手できたというわけです。

 

 

 

 

 劇場は、西武球場のように屋根が乗っかっている形で、屋根を支える柱の間から美しい夕焼け空が広がります。・・・借景効果としては申し分ありません!。

 

 

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 この日の演目は「トスカ」。私はこれまでプッチーニの作品では「蝶々夫人」(ニューヨークシティオペラ)、「トゥーランドット」(浜松アクトシティ)を観たことがありますが、室内劇場とは異なるユニークな舞台装置に目を惹かれました。前の席の背もたれに翻訳機(英語とスペイン語)が付いていましたが、自分の語学力では無駄なシロモノですから(苦笑)、ストーリーを事前に頭に入れておき、上演中は舞台に集中しました。

 ナマで聴くアリア『歌に生き、愛に生き』、やっぱりトリハダものでした・・・!