杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

大井川のまぐろ胃袋カレー

2011-02-10 11:43:27 | 地酒

 今日(10日)の静岡新聞朝刊志太榛原面に『まぐろの胃袋でギョ魚っとカレー開発』という記事が載っていましたね。私、このカレーをこのところ連日食べているんですよ~

 開発したのは旧大井川町の鮮魚専門店『魚池』(焼津市吉永)の池谷志郎さんImgp3629 もともと静岡市のスーパーで鮮魚売り場を担当し、魚の目利き兼調理人として活躍。故郷の大井川町に戻って魚池を創業した人です。

 

 

 この店の存在は、私も仕事で大井川地区を往来するうちに知っていたのですが、今年に入り、池谷さんが今まで有効活用されていなかったまぐろの部位を使って、ユニークなお総菜を開発しているので、販売促進を手伝って、と地元商工会から依頼され、初めてうかがったのでした。SBSラジオで樹根さんが紹介し(ごめんなさい、拝聴できませんでした)、口コミでファンが増えているみたい。

 

 

 私、お恥ずかしながら鮮魚ってふだん、切り身になったものしか買わないんです。一人暮らしで不規則な生活をしていると、なかなか魚を一匹買って自分でさばくってことしないんですよねぇ・・・三枚下ろしの経験も、20代の頃、調理師の友人に教わって半分冷やかされながら1~Imgp3627 2回やっただけ。わざわざ鮮魚専門店まで足を運んで買うという機会もほとんどありません。居酒屋併設の魚屋なら行くけど(苦笑)

 

 魚池をのぞいてビックリしたのは、お店の半分が『お総菜コーナー』になっていたことでした。お寿司や煮魚はもちろん、野菜の煮物やお漬物、焼肉丼やから揚げ弁当なんかもあり、ぜ~んぶ池谷さん一家の手作り。その中に、『まぐろのへそのコロッケ』『まぐろの胃袋カレー』『まぐろの胃袋の燻製』がありました。

 

 

 

Imgp3623  まぐろは日本人に一番愛されている魚だけど、確かにへそ(心臓)や臓物を食べるってあまり聞かないですよねえ。漁師さんはまかないで食べているそうですが、市場から外へ流通されることはほとんどなく、廃棄処分されていたそうです。

 

 もともと料理の腕に自信のある池谷さん、取引先の水産加工業者から相談を受け、いろいろ試行錯誤して、昨年秋にへそコロッケを発売。今回、胃袋を長時間煮込んで臭みをとって、酒のおつまみとして燻製にしたり、ごぼうと一緒にみそもつ煮にしたり、カレーにしたりと、次々Imgp3626 にアイディア料理を発表。明日11日、焼津市文化センター駐車場で開かれる『志太のうまいもの市』でお披露目することになりました。

 

 

 まぐろは、刺身は香りを楽しむ冷やの吟醸酒に合うし、今回試食した胃袋は、燻製も味噌煮込みも、ボディのある純米酒をぬる燗したものにぴったり! へそのコロッケはキリッとした本醸造酒の常温タイプに合います・・・って自分の試食はすべて日本酒との相性判断になっちゃいますが、日本人に一番愛される魚なのに、まだまだ知らない味わい方があって、そのどれもに日本酒が合うことを発見出来て、幸せな試食タイムでした。

 

Imgp3646  

 カレーは、煮込んでから時間のたったものは臓物固有の香味が強く、これが好きでヤミツキになるという人もいるみたい。作りたてのほうは味はさっぱりで食感を楽しめる、万人向けの味でした。両バリエーションあってもいいかも。

 

 

 

 

 池谷さんには、ぜひメニューを増やして、直営居酒屋でもやりませんかとプッシュしています。

 大井川はなんといっても志太杜氏の故郷であり、静岡酒ファンにとっては、いわば聖地のひとつ。池谷さんご自身は、「一滴も飲めないんだけどなぁ」と頭をかいておられましたが、明日、『志太のうまいもの市』(焼津市文化センター駐車場、10時~15時、問合せ電話054-627-3111)に行ける方は、池谷さんを見つけたら、ぜひ「志太の酒を楽しめる魚のうまい居酒屋を開いてくれ」と圧力をかけてください(笑)。

 

 

 鮮魚専門店『魚池』は、藤枝大井川線(田沼街道)を南下して国道150線→大井川郵便局を経て、焼津市役所大井川庁舎方面へ右折カーブする角にあります。焼津市吉永823‐1 電話054‐622-4306、火曜定休 10時~19時営業です。ぜひごひいきに!

 


冬眠の季節に最も美しい富士山

2011-02-08 00:16:18 | 日記・エッセイ・コラム

 2月23日が「富士山の日」になりました。7日、県広報誌の仕事で川勝知事にお会いし、2月下旬は、雪を頂く最も美しい富士山を愛でる“富士見”の季節が終わり、春霞となる時期だからとうかがいました。知事が考える“富士見の季節”とは、冬至前後の12月23日から2月23日の2ヶ月間だそうです。

 確かに一年のうちで一番寒くて、動物は冬眠する季節ですが、そういう時期に、最も神々しく美しい姿を見せるのが富士山だ、だからこそ古くは万葉の時代から人々に畏れられ、愛され続けてきたのだと。

 

 「生き物が冬眠する時期に最も美しい」という見方は新鮮でした。…自分は、富士山が雪で覆われる季節といったら、最も美味しい酒が仕込まれる、ぐらいしか思いあたりませんでしたから(苦笑)。

 

 年度替りを前にしたこの時期、フリーランサーにとっては仕事上でさまざまな情報や人脈を新たにインプットしなければならない大切な時期ですが、このところ、自分がささやかながら貯えてきた情報や人脈をアウトプットする一方です。

 

 先週一週間、静岡新聞夕刊一面に連載された『静岡酵母物語』のように、アウトプットしたものが役に立ったと実感できるのは大きな喜びでもありますが、自分自身は、新しくインプットするものがない、いわば、感性の冬眠状態。焦っていろんな本を読んだり展示会に出掛けたりするのですが、昔に比べると純粋に感激したり発見を喜んだりする回数が減っている。新しいものを貪欲にインプットする年齢から、確実に、経験の貯金をアウトプットする年齢になってしまったんですね。・・・これって老いの兆候かなぁ(苦笑)。

 

 

 富士山は、そんな中でも気高く美しい。この時期、毎朝、富士山の白い頂上が自宅のベランダから見えるけど、いつでも素直に「きれいな山だなぁ」と思える。

 “生き物が冬眠状態の季節に最もクリアで美しいヴィジョンとなり、暖かくなり生命が芽吹き始めると、かすんで遠のく”―川勝知事のご指摘通り考えると、富士山ってつくづく不思議な山ですね。四季のない国の、いつ見ても同じ姿でしか見えない山とはあきらかに違う。そこに、古今東西多くの人々が惹きつけられてきたのでしょう。

 

 

 富士山が霞がかる季節になる頃、私の感性にインプットしてくる新しい出会いがあることを祈って・・・さぁ、これから徹夜で知事の富士山論をまとめなければ。

 

 


秋山博子さんの決断

2011-02-05 11:31:41 | しずおか地酒研究会

 あわただしい1週間でブログ更新が遅くなってしまいました。先週末に風邪を引きそうになったのですが、みかんを1日3個食べて甘酒で滋養補給し、夜洗濯をして寝室の布団の真上につるして就寝時の乾燥を和らげ、外出時にマスク&帽子&手袋&生姜の飴で完全防寒したおかげでセーフ!!気管支の弱い私にとって、マスクはやっぱりかなり効果があるみたいです。とにもかくにも、立春を過ぎ、寒暖の差が激しくなりますので、みなさまもどうぞご自愛ください。

 

 実は今、「指ヨガ」を勉強しています。体全体をくねくねさせる一般的なヨガは、運動不足過ぎて全身ハガネのようになってしまった私にはとても無理ですが、「指ヨガ」は、手先のマッサージで体のコリや内臓不調まで癒す効果がある。いつでもどこでもちょっとした時間に自分で出来るし、誰かに気軽に施術してあげることもできる。多忙なデスクワークの人には最適なリラクゼーションです。

 

 最近注目され始めたばかりで、まだ指導者や施術者が足りないらしく、静岡でもインストラクターを養成する講座が昨年秋から始まったんですね。私も先月からその講座に通い始めました。きちんと基礎をマスターし、人さまにもそこそこできるレベルになったらお知らせしますね。

 

 

 

 

 この時期、仕事先から昨年の支払証明書(源泉徴収証明書)が送られ、確定申告の書類作成に追われるのですが、手元に集まった証明書の枚数と金額の少なさに脱力しきり・・・。世の中のさまざまな価値観が変化する情態をウォッチングする仕事をしながら、自分の仕事環境の変化の激しさに今更ながら動揺しています(苦笑)。

 

 そんな中、ある意味、とても深くて重いインパクトを与えてくれたのが、ライター仲間だった秋山博子さんの“決断”でした。

 

 

 秋山さんは私よりも先輩格のコピーライターで、自分が駆け出しの頃から何かと目をかけてくれて、仕事を紹介していただいたりお願いしたりという関係が続きました。 

 お父様が焼津の船元で、弟さんは魚料理のうまい両替町の居酒屋『たべものや』店主。この店では地酒研でもずいぶんお世話になりました。秋山さんご自身も静岡に住んで静岡ベースの仕事をされていた頃からオフィス名は『焼津印研究所』。故郷への思いの深さがうかがえます。

 

 

 しずおか地酒研究会で1997年に岩手県の南部杜氏の故郷探訪ツアーを組んだときは、友人のデザイナーたきた杉恵さんと一緒に参加してくれました。このツアーは平野斗紀子さん、長沢絹子さん(一時来)、萩原和子さん、青島久子さん(青島酒造社長夫人)という私の敬愛する先輩女性がご一緒で、岩手では静岡県の酒蔵に勤める南部杜氏さん13人と花巻温泉で呑み明かし、今思うと、とんでもなくディープで楽しいツアーでした!

 

 

 

 

 今から10年前、2001年に静岡新聞社から『静岡ぐるぐるマップ焼津版~海辺の迷路都市やいづ』が発行されました。ぐるぐるマップで静岡市以外の都市をこれだけディープに特集した号は初めてじゃないかなと思えるくらい、焼津を深~く探求した特別編集版で、私は『界隈Photo 探検~永遠のふるさとのかたち』というコーナーを担当しました。黒石川界隈、焼津駅界隈、花沢界隈の3エリアを、好き勝手にブラ歩きして面白い店やネタを紹介するという、NHKの『ブラタモリ』みたいなテイストのコラムです。

 

 

 黒石川界隈で紹介したのは、(もちろん)「磯自慢酒造(写真は表紙にもデカデカ使ってもらいました!!)」「松風屋酒店」「足平」「カネオト石橋商店」。モロ個人趣味で統一してます(笑)。

 焼津駅界隈では「やいづ黒潮温泉駅前健康センター」「和菓子屋大國家」「罪切地蔵尊」「精肉紀文」「青野酒店」「画廊喫茶ブーヴィー」「手作りパンの店カンパーニュ」「イタリアンバー・センタ」。花沢界隈では「吉津の郷かあちゃんの店」「法華寺」「志太ナシ松嶋園」「フランス料理ディマンシュ」。

 

 

 これらの店が今も変わらず繁盛しているのか、時間があったらブラ歩きを再現したいと思っていますが、とにもかくにも、私の記事は肩の力を抜いて楽しんで読んでもらう余興みたいなもので、メインは、焼津の街のいとなみや地域産業を支えた人、まちづくりに意欲的な若い人々の活動等を丁寧に紹介しています。この雑誌にまるごと一冊書かれた内容が実現したら、素敵な街になるだろうな~と思える、市の総合計画のタウン誌版みたいな画期的な編集。ここに、秋山博子さんの目指したいものが凝縮されていたんですね。

 

 秋山さんはその後、焼津に拠点を移し、さまざまな分野で“焼津印”を極める活動を始めました。ライター業務で接点を持つ機会が減り、お会いする機会も減ってしまったのですが、焼津のイベント情報をこまめにくださったり、私が映画作りに挑戦したと知ったときは「刺激をもらった」とメールをくださったりで、直接会わなくても通じあう同志、みたいに(私が一方的に)思っていました。

 

 

 そんな秋山さんから「市議選に挑戦しようと思う」とのメールが来たのが昨年秋。仕事仲間から「今度立候補する○○さんを応援してあげて」という依頼はあっても、自分が立候補するっていうのは初めてで、最初はビックリしました。その後、送られた資料に、『ぐるぐるマップ焼津版』のことが書いてあって、ライターやエディターとして地域とかかわり、課題を見出し、問題提起し、言いっぱなしではなく実践しなければ、との思いに至った秋山さんの心の機微が、すんなり同調できたのです。

 

 

 

 ステージは違えども、私もライターとして関わってきた地酒や地域の課題や歴史の大切さを、業務として書きっぱなし、言いっぱなしでいいのかと思うときがあって、ライター稼業の領域を踏み外していろいろなことに手を出し、失敗と発見を重ねてきました。

 

 政治家になるというのは、ある意味、公に自己を晒すことなわけで、私がやっていることとは比較にならないほど大きな意志と決断が必要だったと思いますが、(年齢を云々するのは失礼ですが)50歳を過ぎて、何か大きな組織から担ぎあげられたわけでもなく、女性一人で、残りの人生を社会貢献に捧げようと行動した。それがかつては自分と同じステージにいて似たような実体験をしてきた人の行動だと思うと、本当に勇気をもらえるのです。

 

 

 選挙戦中は更新できないようですが、秋山さんの人となりが分かるブログです。焼津市民の方も、そうでない方も、ぜひのぞいてみてください。http://hirocolumn.eshizuoka.jp/

 ファイト!博子さん!! 「指ヨガ」マスターしたら癒してあげるね!!