杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ふじのくにの天下一品茶

2013-01-08 09:24:37 | 本と雑誌

 季刊発行の静岡県広報誌ふじのくに11号(最新号)が、昨年末に発行され、年明けから電子版でも読めるようになりました。こちらをぜひ

 

 

Img009
 今号では、川勝知事とモンゴルのソドブジャムツ・フレルバータル大使との対談、県政特集「伊豆ジオパーク構想」、癒しの一杯(県内茶産地紹介)の執筆を担当しました。

 いずれも限られた紙面では伝えきれない深い内容ですが、再三言うように、この雑誌自体、県外のオピニオンリーダー向けに発行されているので、県民にはあまり知られておらず、みなさんの眼に留まる機会も少ないというのが悔しい限りです。静岡県がどういう方向で県土づくりを進めているのか、地元県民こそが正しく知るべきだと思い、私はミニコミの遠吠えながら当ブログでふじのくにを勝手に広報させてもらってます。手前味噌ですが本当に貴重な情報が詰まっていますよ!

 

 

 モンゴルのフレルバータル大使は大変な日本通で聡明な方でした。今回の対談でも、饒舌な川勝知事を上回るほど、大使がグイグイとトークを盛り上げてくださって、対談記事にまとめやすかった。私も10代のころは井上靖と司馬遼太郎で歴史を学び、川端康成で文章修業をした身ゆえ、大使が初めて読まれた日本の小説が【伊豆の踊り子】で、大の司馬ファンでモンゴル大好きだったという故・小渕敬三首相との交流エピソードにはホロッとさせられました。

 いつもより文字量も多めで、ちょっと読みづらいかもしれませんが、大変深い内容ですから、ぜひお見逃しなく。

 

 

Dsc01087
 【癒しの一杯】のコーナーは、当ブログで取材時に紹介した富士の天下一品茶。紙面の都合でところどころカットされてしまいましたが、こちらが原文です。地名や人名などより詳細に書き込んでありますので、ぜひご一読ください。 

 

 

 

 

【癒しの一杯】<o:p></o:p>

富士・天下一品茶<o:p></o:p>

 茶師の技の命脈、幻の銘茶復活<o:p></o:p>

 

静岡県に数ある茶産地。気候風土の違いや作り手の思いによって、さまざまな味わいが楽しめる。産地が伝えるお茶づくりのストーリーを想像しながら、一杯をとくと味わってほしい。今回は富士山のお膝元で甦った幻の銘茶物語。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 

<o:p></o:p>

 

 海外茶商が与えた“天下一”ブランド<o:p></o:p>

 

富士のお茶づくりは古く、県茶業史によると1614年の白糸村の検地帳に茶畑の記載がある。富士山麓は関東ローム層の黒土で肥沃な土地と豊かな湧水、富士山から吹き寄せる風など自然の恵みを受けて、茶樹がよく育つ。収量が見込めることから、明治以降、富士原野の開墾が本格的に進んでからは、輸出産業として大いに発展。他茶産地への生葉や挿し木の供給源にもなっていた。

 

そんな富士茶史の中に特筆すべき人物がいる。富士市比奈で茶園を開いた野村一郎(1832~1879)は、“質より量”から、”量より質“への転換を目指し、静岡の市川源之助、遠州の赤堀玉三郎、漢人恵助、江川佐平らを招き、『製茶伝習所』を設立。宇治や江州(滋賀)の伝統製法に、赤堀の“にぎり法”、漢人の“茎裂毛引法”といった新製法を組み合わせた。明治9年、横浜に出荷した一番茶は、長針のように細長く、蜘蛛の足のようで、風味良く、群を抜いて優れていたため、横浜居留地の英国・中国人茶商から『天下一品茶製所』と書かれた扁額を贈られた。“富士に天下一の茶あり”の評判はまたたくまに国内外に知れ渡る。

 

野村一郎は扁額を授かったわずか3年後、天下一製法の詳細なマニュアルを残さず、48歳で急逝してしまう。その後、赤堀や漢人ら天下一製法に開発に関わった茶師たちがそれぞれの地元で独自に発展させ、”天下一“は、見た目の美しい高級茶を指す一般用語となっていった。やがて手揉み技術は機械に取って代わられ、天下一品茶名の存在も風化していった。

 

<o:p></o:p>

 

 

茶師たちが復活させた天下一品茶<o:p></o:p>

 

静岡県が茶どころとなった一因には、生産地によって微妙に異なる茶葉の特性を見極め、品質の高い茶に仕上げる優れた茶師が多く育ったことがある。彼らは伝習所を開設し、競い合うように多くの若手を育てた。機械化の際もベースになったのは手揉みの技。優れた職人の手技が機械で再現され、県茶業は大いに発展した。

 

昭和34年に結成された静岡県茶手揉保存会は、職人の手揉みの伝統を後世に伝える活動をしている。手揉み技術には多くの流儀があり、そのうちの8流派―青透流(志太地区)、小笠流(中遠・浜松)、幾田流(県東部)、倉開流(北遠)、川上流(静岡)、鳳明流(静岡・岡部)、興津流(清水)、川根・揉切流(川根)が県指定無形文化財となっている。保存会は“静岡茶の広告塔”として普及振興にも尽力中だ。

 

Dsc01060
幾田流の流れを伝える富士市茶手揉保存会は昭和
57年に結成し、富士茶の品質向上と産地ブランド化に努めてきた。結成直後から目指したのは「天下一品茶」の再現だ。4代目会長の木村三郎氏が実現させ、現在5代目の平柳利博会長が再現活動に奔走している。

 

2012年6月には中国浙江省で開かれた緑茶博覧会で、かつて横浜の中国人茶商から授かった『天下一品茶製所』の扁額(複製)を展示し、天下一製法の実演を披露。鋭く長い針のような茶葉を30センチ以上も積む独特な飾り方は、現地の人々の目を釘付けにした。11月には富士市立博物館内の旧稲垣邸で実演イベントを行い、2013年からいよいよ市販開始する。

 

  ◇

 

富士山が世界遺産登録を目前に、その価値が再認識されてきたように、『天下一品茶』が静岡県の手揉み茶技法の価値にふたたび光を注いでいる。

 

県茶手揉保存会では10年ほど前から8流派共通の「手揉資格認定試験」を実施し、師範・教師・教師補という3段階の指導者育成も行う。最上位の師範として後継育成に努める平柳会長。「技術がなければ“天下一”は名乗れません」と資格取得指導に天下一製法への思いを重ねる。野村一郎はじめ歴代茶師たちの茶質向上にかけた命脈もこうして未来へとつながっていく。

 

<o:p></o:p>

 

 

<o:p></o:p>

 

Dsc01062
◆“天下一”にかける茶師の思い/平柳利博さん(富士市茶揉保存会会長・山平園園主)<o:p></o:p>

 「茶葉は日々刻々と状態が変わる。その変化に対応できる手揉み技術を会得できると、おのずと機械製法での調整にも活かされる。消費者にも手技を見せながらお茶の話ができる。手揉みの技の向上は、一石二鳥にも三鳥にもなるのです。富士山の麓に伝わる天下一製法の技が、手揉み茶を象徴する日本随一の技であることを証明していきたいですね」

 

山平園 静岡県富士市中里1021 TEL0545‐34‐1349 


『カミハテ商店』主演の高橋惠子さん来静!

2013-01-03 20:01:56 | 映画

 今年は時間とココロにゆとりがなくて、年賀状を出せませんでした。絵は素人ですが線画のイラスト年賀状を毎年描いています。やっぱりそれなりに気合が入らないと描けないんですよね・・・。私宛ての年賀状に「毎年イラストを楽しみにしています」とメッセージを添えてくださった方には申し訳なく思います。2月の立春の頃までには何か描こうと思っていますので、お待ちください。

 とりあえず過去のイラストですが、今の心境に近いものです。

Imgp2972_2

 

 

 

 

 さて、いただいた年賀状の中に、山本起也監督から、5日に静岡で公開初日を迎える『カミハテ商店』の案内がありました。主演の高橋惠子さんの舞台挨拶が急遽決まったみたいです。お時間のある方はぜひ会場へお運びください。私は6日に行く予定です。

 

 

『カミハテ商店』公開記念3日間連続舞台挨拶イベント(詳しくはこちらを)

Img008

 

◇日時 1月5日(土)・6日(日)・7日(月)

 

◇会場 サールナートホール1階大ホール(サイトはこちら

 

◇5日(土)のゲスト/12時15分の回上映終了後・・・高橋惠子(主演)、山本起也(監督)、小澤吉徳さん(司法書士・山本監督の静高同級生)の講話「自殺というモチーフについて」、

 

16時50分の回上映終了後・・・谷川賢作さん(山本作品の音楽担当)のミニライブ

 

◇6日(日)のゲスト/12時15分の回上映終了後・・・高橋惠子(主演)、あがた森魚(ミュージシャン・出演)、平岡美保(出演)、ぎぃ子(出演)、大西礼芳(出演)、山本起也(監督)

 

◇7日(月)/12時15分の回上映終了後・・・山本起也監督の『ツヒノスミカ』ダイジェスト版特別上映


あけましておめでとうございます。

2013-01-02 13:17:45 | 旅行記

 あけましておめでとうございます。2013年、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 昨年末のクリスマスイブ以降、ブログ更新を怠けてました。珍しくゆとりのない年末年始で、とうとう年賀状の準備も出来ませんでした。いつも元日にきちんと年賀状をくださる方には本当に申し訳なく思います。あ、でも、忙しいなんてことをいいわけにはできませんよね、みなさんもお忙しいのにちゃんと出されるんですから・・・。

 

 

 

 

 昨年末25~26日は京都へ行ってきました。国内旅行中の妹夫婦と26日に京都で落ち合い、案内する約束。一日早く京都入りし、25日はお買い物。三条の古い趣のある町家を改装してオープンしたというニューヨークのチョコレート専門店『マリベル』に寄ってみました。

 さすが日本初上陸の人気専門店、喫茶コーナーでいただいたガトーショコラは、今まで食べたチョコケDsc_0076ーキの中でも(そんなに食べているわけじゃないけど)屈指の美味しさでした。古都の町家でニューヨークのケーキを食べながら、買ったばかりのKindleで仏像ガイドを読んでいると、なんだかいろんな文化や文明の糧を同時にいただいているみたいで、不思議な贅沢感を覚えます・・・。

 

 

 夜は高麗美術館の片山真理子さんをお誘いして興聖寺の坐禅会に参加しました。12月はじめの接心(集中坐禅)での極寒体験にも懲りず・・・というか、やみつきになったというか、説明のしようのない不可思議な感覚ですが、身体にプレッシャーを与える経験は間違いなく自分の“芯”を図太くするなあと実感させられます。デスクワーカーにとっては、ふだん使わない筋肉や神経がビンビン刺激されるんですね、きっと。

 

 坐禅が終わった後は片山さんに案内していただいて、北山通りにあるタイ料理レストラン『Chang Noi(チャン・ノイ)』に。ホットスパイシーなトムヤムクンスープがしみじみ身体を温めてくれました。坐禅の後のトムヤムクン・・・これもちょっとした文明のクロスロード体験ですねw

 

 

 

 

 

 26日は京都駅で妹夫婦と落ち合い、まずは近鉄でひと駅の『東寺』へ。境内は迎春準備の工事用車両が動いていて、落ちついて散策する雰囲気ではなかったけれど、五重塔や金堂/講堂の仏像群はさすがの迫力。妹の夫ショーンは、屋根の軒下や瓦に刻印されている龍や鳳凰の模様が珍しいそうでさかんに写真を撮っていました。彼は大の愛犬家で、とりわけ狛犬がお気に入りらしく、あちこちで狛犬を見つけては「スマイリードッグ!」と喜んでいます。西洋人から見ると、東洋人を模写した仏像よりも、動物のモチーフのほうがわかりやすいのかなあ。

 

 

 

 

 この日は奈良在住の私の高校時代の親友の家で手作りランチを呼ばれました。彼女の娘・萌ちゃんがイギリスに留学中で英語堪能。年末休暇で一時帰国している萌ちゃんと、イギリスに住んだことのある妹夫婦で会話が弾むだろうという親友のはからいです。小学校からイギリスの全寮制の伝統校に通っている萌ちゃんの見事なクイーンズイングリッシュに妹夫婦も感心しきり。進路で悩んでいるという彼女の相談相手になっているようでした。中学英語レベルの私と親友は蚊帳の外(苦笑)。

 

 

 

Dsc_0079
 食後は親友の車で唐招提寺と薬師寺へ。7世紀に建立された古寺の歴史や由来に目を丸くしていたショーン。今回の訪日で日本国内の世界遺産を観て廻るうちに、すっかり古い町並みや伝統家屋に魅了されたようです。

 加えて、アメリカで時々口にする和食もどきの料理と、ホンモノの日本食の違いが今回の旅でよく解ったとか。今まで食べられなかったアンコ系の和菓子や海苔&海草の類も食べられるようになったそうです。日本は、自国の文化を正しく伝える努力の余地がまだまだありそうだと、こちらもよく解りました。

 

 

 

 

 

 

 27日から31日までは、終日、お寺のアルバイト。朝からひっきりなしで暮れの挨拶にやってくる檀家さんの対応、大掃除、迎春準備に加えて急なお葬式なんかも入ったりして、年末のお寺がこんなに忙しいなんてビックリでした。本堂、薬師堂、庫裏が2つ、書院、檀家用祭事ホール、墓に庭・・・と、街中ながら大きなお寺で、注連飾りやお供え餅の数もハンパない数。仏さまと神さまでは注連飾りの種類が違うとか、お供え餅の敷き紙の折り目の方向や置き方とか、和尚さんに叱られながらいちいち勉強させてもらいました。自国の文化を正しく伝えようったって、自分自身、日本のしきたりをろくに理解してないじゃん・・・!と反省しきりです。

 注連飾りを飾る風習は年々減っているようですが、こういうことを正しく伝える先達が減ってしまうのはまずいなあと実感します。

 

 

 

 

 そんな余裕のない中で、28日・29日には酒友たちに妹夫婦を加えての忘年会。28日は先月15日に妹夫婦を喜久酔と磯自慢の酒蔵見学に連れて行ったときに一緒にお誘いした吟醸王国しずおかの会員さん宅のホームパーティでした。

 15日の酒蔵見学は蔵元の青島さん、寺岡さんのおかげで、仕込み最盛期にもかかわらず、懇切丁寧に案内していただき、参加者は大感激。興奮冷めやらぬうちに反省会をやろうと急遽決まった忘年会ながら7人が集まり、ホスト夫妻を加えた9人で盛り上がりました。英語堪能なゲストが多かったおかげで、ホスト夫婦と妹夫婦を囲み、日本の酒や食や茶道など、さまざまな文化論に花が咲き、大いに会話が楽しめた大人のホームパーティーらしい忘年会でした。

 

Dsc_0082
 東静岡駅前の超高層マンションの最上階にあるホストのお宅からは、静岡市内でおそらく最も美しい富士山の眺望と夜景が楽しめます。この夜はあいにくの雨天で富士山の夕景は見られなかったのですが、静岡市街地の夜景はバッチリ。バイト疲れで眠たい&中学英語レベルの私はキッチンで食器洗いに専念してましたが(苦笑)。

 

 

 

 29日は、日中時間のない私に代わって、夏に妹夫婦のトレーラーで一緒にアリゾナ旅行をした平野斗紀子さんが、妹夫婦を有東木のわさび田にドライブに連れて行ってくれました。夜に3人と合流し、平野さんの友人で通訳コーディネーターの増田圭子さんが加わってグロウストックとビールのヨコタをハシゴ。途中で上川陽子さんの事務所スタッフから事務所忘年会のお誘いコールが入り、陽子さんいきつけのカラオケスナックへ合流しました。選挙直後に当選したばかりの国会議員に会えるなんて運がいい!と妹夫婦は大喜び。カラオケ初体験のショーンは平野さんやノリのよい事務所スタッフさんたちと一緒にビリー・ジョエルやイーグルスを熱唱し上機嫌でした。アメリカでのカラオケは舞台に立ってスポットを当てられるステージショーみたいなしきたりらしく、苦手だったそうです。

 

 

 

 

 31日は夕方、バイトが終わった後、家族で年越しをする焼津松風閣へ。毎年、6月に松風閣で開催される志太6蔵の新酒イベント『志太平野美酒物語』でお世話になっているホテルスタッフ坪井さんのおかげで、なかなか予約がとれない大晦日の宿泊が叶いました。

 坪井さんは昨年大病を克服され、今はホテル1階売店でがんばっておられます。志太美酒常連のみなさん、松風閣でのあの素晴らしい新酒イベントは、ひとえに、長年の坪井さんの地酒愛が結実したものです。松風閣をご利用の節は、ぜひ坪井さんに一声かけてあげてくださいね。

 

 

 

 

 

Imgp1069
 

 

 

 Dsc_0084
大晦日夜はロビーで餅つきやビンゴ大会、2階で年越し蕎麦を楽しませていただきました。松風閣は全室オーシャンビューで、元旦の初日の出も部屋からバッチリ。雲が多かったものの、美しい朝焼けと富士山の絶景が楽しめました。

 

 

 

 

Imgp1090

 元日は三保の松原と御穂神社、久能山東照宮と日本平ホテルをはしご詣しました。富士山ビューをこれでもか!と堪能した妹夫婦は、i-phoneで動画や写真を撮ってはせっせとフェイスブックにアップデート&ダウンロード。こうして静岡の情報が瞬時に世界中に発信されるんだなあ、中途半端な街おこしはできないなあと、今更ながらしみじみ思いました。Imgp1101

 

 

 

 

 

 

 

 

 以上、駆け足の年末年始の動向ご報告でした。年始は今日(2日)しか自宅でゆっくりできず、また更新が滞ってしまうかもしれませんが、今年も『杯が乾くまで』をどうぞよろしくお願いいたします。