3月18日 おはよう日本
去年11月リオデジャネイロ五輪への出場を決めた7人制女子ラグビー。
代表の愛称は「サクラセブンズ」。
あるメンバーは会社員
あるメンバーは小学生のお母さん
そして二十歳の女子大学生。
仕事や学業、子育てとオリンピックの夢を両立する選手たち。
女子ラグビーは歴史も浅く
日本の競技人口はわずか3,500人ほどである。
プロのリーグは無く
ラグビーだけで生計を立てられる選手はほとんどいない。
3月上旬 埼玉県熊谷市で行われた日本代表候補の強化合宿。
練習相手は男性である。
朝6時から夜8時半まで断続的に練習を行う日もある。
多くの選手が他に仕事を持ちながらラグビーを続けている。
その1人 桑井亜乃さん(26)。
身長1m71cm
恵まれた体格を生かした突破力が持ち味である。
桑井さんは熊谷市にある百貨店の人事総務部で働いている。
ラグビーとの出会いは桑井さんの人生を大きく変えた。
学生時代陸上部で円盤投げをしていた桑井さん。
卒業後は地元北海道で体育の教師になろうと考えていた。
そんなときリオデジャネイロ五輪から7人制ラグビーが採用されることを知った。
(桑井亜乃さん)
「ピンときたというか
ラグビーでオリンピックを目指したいとそのときにピンときた。」
オリンピックに向けて強化選手を募集しているという知らせを聞き
決まっていた就職先を直前に辞退。
本格的にラグビーを始めることにした。
その後ラグビーと両立できる仕事をさがしてきた桑井さん。
去年 競技への理解があるこの百貨店に就職することができた。
(桑井亜乃さん)
「ラグビーに出会ってやりたいと純粋に思ったことにチャレンジしただけ。
何か迷っていることとかやりたいことがあるのなら
自分に賭けてみるのもいいのでは。」
ラグビーと子育てを両立させている選手もいる。
合宿に参加した12人の中で結婚と出産をしているただ1人の選手
兼松由香さん(33)。
去年11月オリンピック出場を決めた試合。
歓喜の輪の中に一人娘の明日香ちゃん(8)の姿があった。
名古屋市で会社員の夫と娘の3人で暮らしている兼松さん。
合宿や遠征などで月の半分以上家を留守にすることもある。
家のいるときは洗いものや買い物などなるべく娘と一緒の時間を過ごすようにしている。
(兼松由香さん)
「家族全員が理解してくれてサポートしてくれている。
おかげで頑張れる。」
しかし娘の複雑な気持ちを知ることになった出来事があった。
合宿で足の怪我をして予定よりも早く帰宅したときのこと。
娘は「怪我が治ったらまたラグビーやれるよ」と励ましてくれたが
実家の母親からは別の話を聞いたのである。
(兼松由香さん)
「『母ちゃん早く帰ってくるよ』と娘が喜んでいたと聞いた。
私の前では見せないようにしてくれているんだなと
すごく切ない気持ちにもなりますし
逆に頑張らないといけないという気持ちにもなりました。」
合宿中兼松さんは娘に電話をしないことにしている。
「お母さんの声を聞くと寂しくなる」と言われたことがあるからである。
合宿や遠征先に必ず持っていくものがある。
明日香ちゃんが書いてくれた手紙である。
かあちゃん
いつもありがとう
あーちゃんはいつもおうえんしているよ
(兼松由香さん)
「自分のラグビーだけじゃなく娘の夢でもあるし家族の夢でもある。
出産や結婚をしてもラグビーって続けられるんだよとみんなに伝えたい。」
仕事や子育てなどをしながらラグビーに打ち込む選手たちの姿が
後輩のメンバーに大きな刺激を与えている。
メンバーの1人 東京学芸大学に通う小出深冬さん(20)。
オリンピック出場が決まってから練習や遠征がさらに増えた。
スケジュールは予定でびっしり。
ピンク色に塗ったのはラグビーのトレーニング
黄色はテストなど学業の日程。
両方ともおろそかにできない。
そんな小出さんは先輩の選手たちの姿を見ていて
自分もやりきることができると思えるようになった。
(小出深冬さん)
「先輩たちの進路の決め方とか参考にして
成長していくなかで自分の好きなことをできる環境を探していきたい。」
様々事情と折り合いをつけながら夢に挑むサクラセブンズ。
たくましく生きる現代の女性たちを象徴しているようである。