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“花道無用”見事な引き際

2016-04-24 11:15:00 | 編集手帳

4月12日 編集手帳

 

 サトウハチロー作詞『浅草の唄』にある。
♪つよいばかりが男じゃないと
 いつか教えてくれた人…

歌の心に通じる感想を、
その人は小学校の卒業文集に綴(つづ)っている。
〈速く泳げるようになったことも、
 速く泳ぐことだけでないことを知ったのも、
 この学校のプールがあったからだ〉。
速いばかりが水泳じゃないと…北島康介選手(33)である。

自分の限界に挑みつづけることが速く泳ぐことと同じくらい大切であると、
小学校で学んだのだろう。
日本選手権に敗れて5大会連続の五輪出場を逃し、
現役を引退するという。
情熱と体力を最後の一滴まで燃やし尽くし、
“花道無用”の見事な引き際である。

〈もったいなくて北島康介の載る新聞犬小屋の中には敷きえざりし〉(岩本房子)。
北京五輪の平泳ぎ2種目で2連覇を成し遂げた当時、
『読売歌壇』で読んだ。
数々の勝利の記憶は言うに及ばず、
敗れて去る後ろ姿までが凛(り)々(り)しい稀有(けう)の人である。

「ここまで長く真剣勝負をさせてもらって、
 悔いはありません」。
晴れやかな笑顔がよかった。
その写真が載った新聞も、
犬小屋にはちょっと敷きにくかろう。

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インド 壮大街角アート

2016-04-24 07:15:00 | 報道/ニュース

4月7日 キャッチ!


人口約1,700万人が暮らすニューデリー。
1990年代以降 人々は豊かさだけを求め
街中はゴミが散乱。
大気汚染が進み
自然の緑も輝きを失っている。
こうした状況に危機感を感じ
若手アーティストたちが3年前に組織したのが St+art・インド(スタートインド)である。
壁画を通して
殺伐とした街の風景に新たな風を吹き込もうと設立した。
彼らはこれまで市内150か所の壁をキャンバスに
インドの伝統美など鮮やかな色合いで描いている。
(壁画アーティスト)
「人々の生活からアートは消えてしまった。
 私たちの目的はアートをとどけることだ。」
(住民)
「いい絵だね。
 気分が上がるよ。」
「街をカラフルに輝かせてくれるわね。」
グループのメンバーが少年時代を送った1980年代
ニューデリー市内では手描きの広告看板を数多く見ることができた。
しかしその後の経済発展で
独特なデザインは姿を消し
街の豊かな色も失われていったという。
グループのメンバーは
かつての生き生きとした色彩とデザインの躍動感を
現在の街中で再現したいと考えている。
(St+art・インド メンバー ハニフ・クレシさん)
「私たちが住んでいる町は灰色です。
 空も陸橋や道路も
 呼吸する空気さえ灰色なんです。
 このプロジェクトは街に命を与えることが出来るんです。」
今年は海外12カ国から壁画アーティスト12人も参加して
ある1つの地域を公共の美術館にしようと
新たな試みに挑戦した。
(日本人アーティスト SUIKOさん)
「みんな壁を見てくれる。
 車も止まって『ナイス!』と。」
こうしたアートによる地域活性化の取り組みは高く評価されている。
インドのペイント会社からは資金援助を受け
日本やドイツなど12の大使館も協賛。
インド政府からは場所の提供などを受けた。
またアーティストたちが描く絵は人々に影響を与えている。
インド独立の父 マハトマ・ガンジー。
ガンジーはいまもインドのすべての人々が尊敬を寄せる偉大な人物である。
ガンジーが残した言葉に人々は格別な思いを寄せている。
(壁画アーティスト デリアさん)
「マハトマ・ガンジーと彼のメッセージを描いています。
 このように書いてあります。
 “衛生的なインドへ”。」
ガンジーが訴えたメッセージとは
インドの衛生環境の改善である。
こうしたメッセージやきれいな壁画によって
地域住民の意識には変化が出てきている。
(地域住民)
「近所が前よりすごくきれいになってとても気分がいいわ。」
「壁画を見ればきれいにしたくなります。」
人々にアートを届けたい。
アーティストたちが描いた夢は徐々に現実のものとなり
いま多くの人々が芸術に対する興味を持ち始めている。
(St+art・インド メンバー アル・ボーズさん)
「“アート作品をみんなで所有している”
 という共通認識が人々の間に出てきた気がします。」
首都ニューデリーで始まったストリートアート。
自分たちの手によってインドはまた新しく生まれ変わるかもしれない。
強い思いを胸に
若きアーティストたちの挑戦は続く。



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