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「里山資本主義」が日本を変える? ①木のエネルギーで地域経済の自立を

2014-06-06 07:15:00 | ビズ プラス
6月1日 BIZ+SUNDAY


かつて山のあちこちにみられた炭焼き小屋。
昔は山の木で生活に必要なエネルギーのほとんどを賄っていた。
石油や電気などのエネルギーを外から買う時代を経て木のエネルギーに回帰しようとする町がある。
中国山地の山あいにある岡山県真庭市。
人口5万。
ここに間全国から視察が相次いでいる製材所がある。
製材で出る木くずで発電。
製材所で使う年間1億円の電気代がゼロになり
さらに余った電気を電力会社に売っている。
「充電収入は月間140万キロワットアワー。
 1000万円近くになっている。」
銘建工業の中島浩一郎社長が木の発電に乗り出したきっかけはバブル崩壊という逆境だった。
住宅需要が落ち込み97年には初めての赤字を経験。
どうやって経営を立て直すか。
目に留まったのが処理に年間2億円以上かかる大量の木くずだった。
しかし発電所の建設費を融資してほしいと持ちかけると
銀行からは「経営を立て直すなら売り上げを増やすのが常識だ」と言われた。
(銘建工業 中島浩一郎社長)
「電気ではなくて生産規模を上げる設備や加工度を上げる設備などがあるだろう。
 エネルギーなんて言うのはプライマリー(優先)ではないだろういう言い方だった。」
なんとか銀行から10億円の融資をとりつけ発電所の建設にこぎつけた。
電気代が減ったことで売り上げを増やさなくても黒字に転換した。
それでも使い切れない木くずは10年前からペレットと呼ばれる燃料に加工。
行政も巻き込んで真庭市全体のエネルギーの自給に取り組んだ。
暖房に重油を使っていた小学校でも家庭でも
今や熱や電気など市のエネルギーの11%を賄うまでになっている。
6年前からハウスのボイラーの燃料を灯油からペレットに切り替えた農家。
上がり続ける国際的な原油価格。
その影響を受ける経営から脱したいと考えている。
(農家 清友健二さん)
「今月はこれくらいお金を払えば大丈夫だと予想が建ちますからありがたい。」

世界中の投資家や投機筋から流れ込むマネーによって原油などのエネルギー価格が決まるグローバルな市場。
地域はその価格に従って膨大なお金を吸い取られるしかないのである。
この関係を何とか断ち切ることはできないか。
出来るだけ地域にあるもので賄っていけないか。
それが真庭が目指す里山資本主義である。

真庭のエネルギーの自給率をさらに引き上げようと中島さんたちが頻繁に通う国がある。
木のエネルギー利用で世界の最先端を行くオーストリア。
中島さんたちは現地の企業や自治体から直接情報を収集している。
人口4000のこの町は地域で使う電気を地元の木材ですべて賄っている。
発電用の木は住民自らが切り出し
発電施設も自ら運営している。
(住民)
「この町ではエネルギーの値段が市場の値動きに左右されることはありません。
 自分たちで決めているのですから。」
さらに発電の際に出る熱で熱湯を作り
地下に張り巡らせたパイプラインで地域に供給。
町で使う全エネルギーの実に71%を賄っている。
この安く安定したエネルギーを武器にヨーロッパ各地から50社もの企業を誘致することに成功した。
これまでロシアから供給される天然ガスに依存してきたオーストリア。
そこから脱却する努力が新たな産業を呼び込んでいる。
(ギュッシング市 ペーター・バダシュ市長)
「世界経済がひと握りの人たちによって操られているのはよくないことです。
 市場を狂わせる人たちを抑え込むのは簡単ではありませんが
 エネルギーという非常に大切な分野で主導権を握ったのは大きな一歩です。」

オーストリアで学んだこうしたシステムを参考に
いま真庭ではエネルギーの自給を飛躍的に伸ばす試みが始まっている。
工場誘致のために造成されたものの空き地のままだった産業団地で新たな木の発電所の建設が始まっている。
発電量は1万キロワット/h。
5万人分の生活用電気がすべて賄える計算である。
木材の加工工場も新設された。
放置されていた間伐材の切り出しが本格化。
新たな雇用が生まれ若者が都会から帰ってきている。
(銘建工業 中島浩一郎社長)
「日本人は元来気の使い方が非常に上手な民族。
 歴史もあって。
 今はたまたま一番へたくそになっていて
 一時的に忘れていることを見直して現代風にアレンジして
 ぜひとも小さい穴でも風穴を開けたい。」 

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