8月31日 BIZ+SUNDAY
1950年に貧しい紅茶売りの家に生まれたモディ首相。
地方政府のトップとしてインフラ整備や規制緩和に取り組み高い経済成長を成し遂げた。
モディ首相の就任で成長に陰りの見えていたインド経済に明るさが出てきた。
首都ニューデリー郊外では高層マンションの建設が相次いでいる。
マンションを購入しようと見学に訪れる人は以前の倍に増えたという。
「経済に変化が出てきた。
マンションの価格も上がるだろうし今が買い時だと思う。」
自動車の販売も好調。
6月、7月と2か月連続で去年を上回る売れ行きである。
(販売店オーナー)
「モディ首相=ビジネスだ。
たくさんの人が車を買いたいと思うようになっている。」
(ジェトロ ニューデリー事務所 野口直良所長)
「モディ首相が今回 首相に就くにあたって大きい声で打ち出しているのは経済成長。
経済成長の原動力とひとつとして外国投資に期待している。
まずは日本の力を借りて経済成長を実現していきたい。
そこが一番大きなメッセージとして出ている。」
「特にインドの場合はこれから製造業を集中的に集めてこなければならない。
ひとつは雇用機会を創出する。
あと製造業に期待できるのは輸出。
インドは残念ながら貿易赤字が相当積もっている。
早い時期にこの赤字を解消しなければならない。
輸出を志向する製造業をぜひとも日本から呼びたいというのがモディ首相の考え。」
インドの市場成長への日本企業の期待は大きい一方で
インフラの未整備
インド国内での税制の複雑さ
行政手続きの煩雑さ
インド進出には大きな課題も残っている。
今年インドに大規模な投資を行ったTOTO。
グジャラート州で稼働始めた工場では年間50万個の便器を生産できる。
トイレの普及が遅れるインドで特に農村では衛生面での問題が深刻である。
モディ政権はトイレの普及を重要政策のひとつに位置付けている。
(6月11日 モディ首相)
「私はトイレなど生活に必要不可欠なものをすべての家庭に整備します。」
TOTOはモディ首相の就任で下水道の整備が進み水洗トイレの需要拡大につながることを期待している。
(TOTO 国際事業本部 安部壮一取締役常務)
「モディ首相がそういう発言をしたことでインフラの整備が加速する。
たとえば現在15%の下水道の普及率が30%になり将来50%になるとビジネスチャンスが期待できる。」
それだけでなく雇用を増やしインドの発展に貢献することがさらなる事業の拡大につながるとみている。
(TOTO 国際事業本部 安部壮一取締役常務)
「インドに根を張ることを第一に考えている。
我々の発展はインドの発展とともにあると考えているので
そこは腰を据えてやっていきたい。」
一方 課題もある。
14年前に進出した空調設備メーカーのダイキン。
暑いインドには欠かせないエアコンをラジャスタン州の工場で生産している。
中間層向けに価格を抑えた商品を中心に売り上げは5年で7倍に増えた。
(ダイキン・インド 田中仁副社長)
「エアコンの普及率がインド全土で3%程度と言われているが
所得水準が改善することによって
まだエアコンを持っていない人にもエアコンを買ってもらえる。
需要の刺激にもつながると期待している。」
しかしインドでの事業は順風満帆ではない。
去年 待遇改善を求める一部の労働者が突然職場を放棄。
警察も乗り出す事態になり操業を一時縮小を余儀なくされている。
予想もしなかった事態を受けダイキンは職場環境の整備に取り組んだ。
たとえば食堂。
チャパティと呼ばれる主食のパンをその場で焼ける機械を導入。
あたたかいパンを提供できるようにした。
「パンはとてもおいしくなった。
経営者側も私たちの意見を聞いてくれるし労使の関係は良くなりました。」
さらに勤勉な従業員を表彰するなど労使関係の改善に取り組んでいる。
しかしひとつの会社だけでできることに限界があると感じている。
(ダイキン・インド 田中仁副社長)
「一企業だけで対応できる部分は限られるので
こんど新しくモディ首相が就任して
ひとつの企業の中で会社側と労働者がコミュニケーションをとりやすい環境作り
そこに対する支援をもらえれば十分だと思う。」
日本企業が事業展開しやすい環境の整備は進むのか。
モディ首相の手腕に注目が集まっている。
(ジェトロ ニューデリー事務所 野口直良所長)
「インド経済を成長させるために製造業を含めた外国投資を集めたい。
そのためには何をしたらいいかという次のステップとして
たとえば法制度の改正だとかそういったものをインドがどういう風に出していくのか
首相から今回の来日でメッセージが出ればそれは大変期待されているところだろう。」