3月23日 おはよう日本
都内の家電量販店に設置された特設コーナー。
デザインと個性的な色合いが人気を集めている。
開発した中澤優子さんは20代で大手のメーカーを退職し
1人で会社を起ち上げた。
ひとりぼっちの家電メーカー
“ぼっち家電”と呼ばれている。
(中澤優子さん)
「みんなが
なにそれ!すごい!って思えるモノ。
普通のメーカーの規模ではできないものにチャレンジできる。」
ぼっち家電の特徴は個人の自由な発想を生かした独創的な製品。
秋葉原のビルの一角。
最新の工作機器が使える有料の施設。
約500㎡のスペースに40ほどのぼっち家電。
こだわりの製品開発に取り組んでいる。
光る靴。
ステップに合わせて音も奏でる。
そして
「ファッションとして楽しめるような義手を目指しています。」
この施設で製品開発の取り組む 山口譲二さん(38)。
システムエンジニアとして働いていた山口さん。
自らのアイデアを実現したいと
会社を辞めて1人で起業した。
(山口譲二さん)
「自分が作りたいものが世に出せなかった世の中は
耐えられないと思ってチャレンジした。」
山口さんが開発しているのは犬の感情を読み取る製品である。
心拍数から
喜びなど犬の感情を色で教えてくれるという。
「うれしいというのを検知するとレインボーカラーみたいになる、」
こうした製品をどうやって1人で作るのか。
可能にしたのは3Dプリンターの普及である。
3Dプリンターはデータを入力するだけで部品を作ることができる工作機。
これによって1人でも簡単に試作品ができるようになった。
この日も山口さんは思い付いたアイデアを試していた。
データの入力からわずか3時間で新たな試作品が完成した。
「すぐに試せることは雑でもいいからすぐに試して
効果があれば丁寧にやり直すことの繰り返し。」
山口さんたちぼっち家電の試作品の量産を担っているのは町工場の技術者たちである。
以前は大手メーカーの下請けだった町工場。
受注が減り新たな顧客を探していた。
そこで出会ったのが“ぼっち家電”。
新しいものを生み出そうという姿勢に共感したという。
(町工場社長 石村龍二さん)
「ぼっち家電の方々は熱意を感じられて
我々も仕事の楽しみを共有できることが一番かなと考えている。」
工作機器の進化と町工場の後押しを受け
山口さんの独創的なアイデアが製品へと近づいていく。
(山口譲二さん)
「ビジネスの面もあるが
それ以前に好奇心で動いている人たちが集まっている。
今まで工作の域を出なかったものが
一気に市販品として出る可能性が高まってくる。」
ユニークな発想を形にするぼっち家電の手法には
大手のメーカーも注目している。
近年ヒット商品をなかなか生み出せずにいる日本の電機メーカー。
個人の発想力を活用し
ヒット商品につなげようという動き出している。
かつてウォークマンなどヒット商品を生み出してきたソニー。
本社の1階に新たに設けられた工作スペース。
仕事を終えた社員たちが立ち寄り
思い思いのアイデアを形にしていく。
ソニーではこうして生まれた個人の商品提案を製品化する制度を整えた。
(ソニー新規事業創出部部長 小田島伸至さん)
「ソニーには昔から机の下で隠れて開発することがあって
自分の小遣いで開発をして人に見せていく文化があって。
仕組みを与えることでもっと合理的にピックアップできるようになる。」
この制度からすでに製品化へと動き出したアイデアがある。
香りを持ち運んで楽しもうという家電製品である。
提案をまとめた藤田修二さん(35)。
製品開発の権限を与えられたことに自分でも驚いているという。
(藤田修二さん)
「スタートアップ(ベンチャー企業)では当たり前のことだと思うが
大企業ではなかなか難しい。
エキサイティング。
わくわくを提供すると言いつつ自分もわくわくしている。」
アイデアにさらに磨きをかけようと
藤田さんたちはネットからも意見を求める。
自分たち以上に独創的な発想はないか。
目を留めたのは
「ウォークマンと連動させ音楽に合わせた様々な香りを提供し
空間を演出できないか」
というアイデアである。
ソニーでは
会社の常識にとらわれた製品ではなく
個人の思いを形にする
ものづくりの原点に立ち返りたいと考えている。
(ソニー新規事業創出部部長 小田島伸至さん)
「企業が大きくなるとジェネレーションギャップや考え方の違いが生まれ
コンセンサス同意を取るのが難しくなってくる。
社員全体の起業能力を上げる。
自立と自己責任という意識をより強化していく。」