評価点:73点/2007年/アメリカ
監督:ジョン・タートルトーブ
制作:ジェリー・ブラッカイマー
超手軽アドベンチャー。
ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、前作の騒動によって一気に有名になり、多くの講演で喝采を浴びていた。
そんなトーマスにウィルキンソン(エド・ハリス)がゲイツの祖先であるトーマス・ゲイツは、リンカーン暗殺を企てた人物だという証拠を突きつける。
祖先は先住民の黄金都市の発見を防ぐために命を落としたと信じるゲイツは、仲間とともに、守ろうとした黄金都市を探すことに決める。
その手がかりとなるものは、なんとホワイトハウスの執務室にある机にあることがわかるのだが……。
人気(?)シリーズ第二弾。
前作を観に行ったときは正直売れそうな予感が全くしなかった。
アメリカでは「インディー・ジョーンズ」とイメージがかぶるのか、ディズニーがやぶれかぶれになっているのか、続編が公開された。
ニコラス・ケイジファンの僕としてはうれしい限りだが、日本で売れるかどうかは未知数だろう。
アドベンチャーものが好きな人にはお勧めだ。
今回は一ドル札のような身近なネタというよりは、アメリカの歴史に関する謎解きなので、少し趣が異なる。
予備知識として、リンカーン暗殺事件の大枠を知っておいた方が、楽しめるだろう。
その意味ではアメリカ人に、よりウケる映画ともいえる。
とはいえ、お手軽映画であることには変わりない。
気負わず観に行くのが正解だろう。
(この映画を気負って見に行く人はいないだろうけれど)
▼以下はネタバレあり▼
ヨーロッパは歴史の重みを常に感じながら文化を築いてきた。
アメリカは「今」を追求することで繁栄を手に入れた。
二百年程度の歴史しかないアメリカにとって、「歴史」というファクターはほとんどあこがれに近い感覚でみつめているのだろう。
やたらとハリウッドで「歴史的超大作」や「大河ドラマ」といった作品が作られているのは、そうしたあこがれがあるからに他ならない。
この映画が売れる、もしくはアメリカ人の心をつかむとすれば、そのアメリカ人の共通の意識を巧みにとらえているからだろう。
リンカーン大統領暗殺という歴史的事実をモティーフにしているからではない。
先住民の黄金都市を探し出すという目的があるから、アメリカ人がこぞって観に行くのでもないだろう。
この映画のみどころは、「過去」や「歴史」にあるのではない。
「過去」や「歴史」が、「現在」や「社会」と通じていることを証明しようとしているからだ。
これはかなり画期的だ。
今までのアドベンチャーものは「インディージョーンズ」にしても「ハムナプトラ」にしても、「過去」の捜索に終始していた。
オリエンタリズムというか、怖いもの見たさというか、自分たちとは全く違う未知の文化を捜索するということが、「アドベンチャー」だったのだ。
方向性としては「エイリアン」で未知の惑星にいくのと変わりない。
バックか前進かだけの違いだ。
このシリーズは違う。
現在立っている地点というのを重視している。
ホワイトハウスに忍び込むというのは、その最たるものだ。
最新機器を利用して、最新の防衛システムを崩す。
それが、実は過去の捜索と密接につながっている。
その発想が、アメリカ人の心をつかむのだろう。
そして何より、現在が色濃く登場することによって、綿々と受け継がれてきた連続性を感じることができる。
歴史が何もないと嘆いていた私たちにも、こんなに重たい歴史を背負っているではないか、と自負できるのだ。
歴代大統領のみがみることができるという「ブック・オブ・シークレット」。
(実は原題はこちらが副題になっている)
こういった眉唾もののアイテムが花を添えているのは、私たちも、ヨーロッパに見劣りすることのない歴史を持っているのだと、自己肯定(自己満足?)への道のりである。
それだけではない。
ホワイトハウスにしても、リンカーン暗殺にしても、一般人にはほど遠い手の届かない世界だ。
だが、キャラクターは非常に卑近だ。
ずっと口をきいていない夫婦に、仕事に追われて家を追い出されたカップル。
一攫千金をねらう若者に、祖先の名誉回復のために暗躍するエド・ハリス。
わかりやすいキャラクターで感情移入もしやすい。
南北戦争を下地にしているが、ストーリーも実は南北戦争をなぞっている。
南部代表と北部代表。彼らはいがみあうように見えても、最終的にはお互いの名誉のために戦い、そして「統合される」のだ。
だから、えらく年のとってしまったエド・ハリスは、絶対に「敵」として死ぬことはない。
むしろ、かっこいい戦友のような最期を迎える。
これだけのお膳立てをしっかりと作っていれば、アメリカ人に売れないわけがない。
問題は、日本人にとって、南北戦争もリンカーン暗殺も、ホワイトハウスも、先住民の黄金都市も、なじみがなさ過ぎて、題材として「しんどい」ということだ。
「ガッテン!」する前に、「そんなんあえりえんやろ」と思ってしまうのが落ちだ。
何より、全体的な説明不足のほうが気になってしまう。
前作を知らないとついていけない登場人物紹介に始まり、名誉回復のために黄金都市を見つけるという飛躍、敵の動機と素性が説明不足、おまけにリンカーンが全くどんな人物なのかわからない。
そんな僕にとっては、あまりおもしろい映画ではなかった。
いかにも脳天気な映画で、エンターテイメントを追求した映画だ。
歴史をつなぐと言ったが、この映画でつなげてしまうアメリカの歴史はやはり浅はかなものだと思えてしまう。
展開を急ぎすぎたのも一つ、マイナス要素だろう。
(2007/12/31執筆)
監督:ジョン・タートルトーブ
制作:ジェリー・ブラッカイマー
超手軽アドベンチャー。
ベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、前作の騒動によって一気に有名になり、多くの講演で喝采を浴びていた。
そんなトーマスにウィルキンソン(エド・ハリス)がゲイツの祖先であるトーマス・ゲイツは、リンカーン暗殺を企てた人物だという証拠を突きつける。
祖先は先住民の黄金都市の発見を防ぐために命を落としたと信じるゲイツは、仲間とともに、守ろうとした黄金都市を探すことに決める。
その手がかりとなるものは、なんとホワイトハウスの執務室にある机にあることがわかるのだが……。
人気(?)シリーズ第二弾。
前作を観に行ったときは正直売れそうな予感が全くしなかった。
アメリカでは「インディー・ジョーンズ」とイメージがかぶるのか、ディズニーがやぶれかぶれになっているのか、続編が公開された。
ニコラス・ケイジファンの僕としてはうれしい限りだが、日本で売れるかどうかは未知数だろう。
アドベンチャーものが好きな人にはお勧めだ。
今回は一ドル札のような身近なネタというよりは、アメリカの歴史に関する謎解きなので、少し趣が異なる。
予備知識として、リンカーン暗殺事件の大枠を知っておいた方が、楽しめるだろう。
その意味ではアメリカ人に、よりウケる映画ともいえる。
とはいえ、お手軽映画であることには変わりない。
気負わず観に行くのが正解だろう。
(この映画を気負って見に行く人はいないだろうけれど)
▼以下はネタバレあり▼
ヨーロッパは歴史の重みを常に感じながら文化を築いてきた。
アメリカは「今」を追求することで繁栄を手に入れた。
二百年程度の歴史しかないアメリカにとって、「歴史」というファクターはほとんどあこがれに近い感覚でみつめているのだろう。
やたらとハリウッドで「歴史的超大作」や「大河ドラマ」といった作品が作られているのは、そうしたあこがれがあるからに他ならない。
この映画が売れる、もしくはアメリカ人の心をつかむとすれば、そのアメリカ人の共通の意識を巧みにとらえているからだろう。
リンカーン大統領暗殺という歴史的事実をモティーフにしているからではない。
先住民の黄金都市を探し出すという目的があるから、アメリカ人がこぞって観に行くのでもないだろう。
この映画のみどころは、「過去」や「歴史」にあるのではない。
「過去」や「歴史」が、「現在」や「社会」と通じていることを証明しようとしているからだ。
これはかなり画期的だ。
今までのアドベンチャーものは「インディージョーンズ」にしても「ハムナプトラ」にしても、「過去」の捜索に終始していた。
オリエンタリズムというか、怖いもの見たさというか、自分たちとは全く違う未知の文化を捜索するということが、「アドベンチャー」だったのだ。
方向性としては「エイリアン」で未知の惑星にいくのと変わりない。
バックか前進かだけの違いだ。
このシリーズは違う。
現在立っている地点というのを重視している。
ホワイトハウスに忍び込むというのは、その最たるものだ。
最新機器を利用して、最新の防衛システムを崩す。
それが、実は過去の捜索と密接につながっている。
その発想が、アメリカ人の心をつかむのだろう。
そして何より、現在が色濃く登場することによって、綿々と受け継がれてきた連続性を感じることができる。
歴史が何もないと嘆いていた私たちにも、こんなに重たい歴史を背負っているではないか、と自負できるのだ。
歴代大統領のみがみることができるという「ブック・オブ・シークレット」。
(実は原題はこちらが副題になっている)
こういった眉唾もののアイテムが花を添えているのは、私たちも、ヨーロッパに見劣りすることのない歴史を持っているのだと、自己肯定(自己満足?)への道のりである。
それだけではない。
ホワイトハウスにしても、リンカーン暗殺にしても、一般人にはほど遠い手の届かない世界だ。
だが、キャラクターは非常に卑近だ。
ずっと口をきいていない夫婦に、仕事に追われて家を追い出されたカップル。
一攫千金をねらう若者に、祖先の名誉回復のために暗躍するエド・ハリス。
わかりやすいキャラクターで感情移入もしやすい。
南北戦争を下地にしているが、ストーリーも実は南北戦争をなぞっている。
南部代表と北部代表。彼らはいがみあうように見えても、最終的にはお互いの名誉のために戦い、そして「統合される」のだ。
だから、えらく年のとってしまったエド・ハリスは、絶対に「敵」として死ぬことはない。
むしろ、かっこいい戦友のような最期を迎える。
これだけのお膳立てをしっかりと作っていれば、アメリカ人に売れないわけがない。
問題は、日本人にとって、南北戦争もリンカーン暗殺も、ホワイトハウスも、先住民の黄金都市も、なじみがなさ過ぎて、題材として「しんどい」ということだ。
「ガッテン!」する前に、「そんなんあえりえんやろ」と思ってしまうのが落ちだ。
何より、全体的な説明不足のほうが気になってしまう。
前作を知らないとついていけない登場人物紹介に始まり、名誉回復のために黄金都市を見つけるという飛躍、敵の動機と素性が説明不足、おまけにリンカーンが全くどんな人物なのかわからない。
そんな僕にとっては、あまりおもしろい映画ではなかった。
いかにも脳天気な映画で、エンターテイメントを追求した映画だ。
歴史をつなぐと言ったが、この映画でつなげてしまうアメリカの歴史はやはり浅はかなものだと思えてしまう。
展開を急ぎすぎたのも一つ、マイナス要素だろう。
(2007/12/31執筆)
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