評価点:54点/2002年/アメリカ
監督:ダグ・リーマン
マット・デイモン主演の初のアクション映画。
マルセイユ沖の船に、一人の人間が発見される。
男の体には二発の銃弾が撃ち込まれ、また口座番号が記録されているライトも埋め込まれていた。
男は目を覚ますが、全く記憶が無い。
二週間後、男は、記録されていた口座番号のあるスイスのチューリヒ相互銀行に
金庫の中身を取りに行く。
なんとそこにあったのは、あらゆる国の偽造パスポートと、紙幣、そして拳銃だった。
そこで初めて自分の名前を知ったジョンソン・ボーン(マット・デイモン)は危険を感じアメリカ領事館へ駆け込む。
しかし、アメリカ領事館でも警備に呼び止められ、逃げ出してしまう。
一方、アメリカのCIA本部では工作員が任務を失敗し、その行方がわからなくなったと騒然としていた。
あの、マット・デイモンがアクション映画に出る!
この映画の最大の見所は、その一点に尽きると思う。
少なくとも、観客動員数を稼ぐためには、それは格好の宣伝文句だった。
それまでのマット・デイモンといえば、「グッド・ウィルハンティング」や「レイン・メーカー」など、好青年で知的な役柄が多かった。
しかし、あまりヒット作が無かったのも事実。
そこで挑戦したのがこの「ボーン・アイデンティティ」というわけだ。
▼以下はネタバレあり▼
主人公の記憶が無い。
このミステリアスな謎は、ヨーロッパの荘厳な落ち着いた雰囲気にマッチし、よりミステリアスでサスペンス効果の高い謎として機能している。
主人公は、何者かから逃げながら、自分の過去(素性)を取り戻さなければならない。
「バイオ・ハザード」のように、その過去を主人公の中に閉じ込めてしまえば、とてもつまらない映画になっていただろうが、敵をかなりはじめの段階から見せていたことによって、緊迫感はいっそう高まった。
「主人公は何者か」という謎は、ボーンにとっては最後までわからない。
しかし、観客にとっては、殆んどその全貌が読めてしまうほど、情報が示される。
ウォボシという議員の暗殺をCIAが計画、その後工作員のボーンがその実行を担当したが、何らかの理由で失敗、その暗殺失敗をウォボシが公表するとしたため、CIAは窮地に立たされる。
その事態を打開するには、その暗殺失敗の事実を隠滅するため、唯一の証人、行方不明のボーンを抹殺してしまうことだけだった。
よって執拗にボーンを狙うことになったのだ。
主人公が陥ってしまった状況はこれで9割わかってしまう。
状況を把握し謎が皆無になったことが逆に緊迫感を生むことになり、観客はボーンに訪れる危機を緊張しながら迎えることになる。
ここでの残りの1割の謎は、「なぜ任務を失敗したのか」ということだけになる。
この謎の真相が、この映画の残念なところである。
平たく言えば、標的の子どもがいて、子どもの前では撃てなかった、というものだ。
この真相はつらい。
なぜなら、一流のCIA工作員であり、いうなればスパイのマシーンであるはずだ。
その彼が、子どもがいるので撃てません、ではお話にならない。
この映画の中では「トレッド・ストーン(踏み石作戦)」という、スパイ工作員育成の計画だったようだが、子どもの有無によって計画の成否が決まってしまうような生ぬるい工作員を育てているとは、とても思えない。
それまで的確に情報を整理し、ウエイトレスが左利きだとかまでわかる男が、そんな軟弱な理由で任務失敗していたという事実は、「あたたか」すぎる。
もしそんなオチを用意するなら、それまでにボーンと子どもとのやりとりを描いておくべきだった。
そうでないため、このオチは違和感がうまれてしまう。
死体保管所で「この男ではない」とウォボシが言ったことが伏線として機能するわけだが、そうした伏線より、ボーンの性格を示す伏線がほしかった。
さて、肝心のアクション・シーンについて。
これも残念だったといわざるを得ない。
スパイとしてのカッコよさは、充分にあったと言っていいだろう。
しかし、いかんせんアクション・シーンが少なすぎる。
これでは「あのマット・デイモンがアクション映画を撮った!」という喜びは満たされない。
しかも撮り方が悪いため、なにかごまかされているような印象さえ持ってしまう。
カメラ・アングルが近すぎるため、「ようわからん」のだ。
どう考えても「かっこいい」アクション・シーンではない。
壁を降りていくシーンも、アングルがあまりに遠すぎてマット・デイモンとは思えないし(実際、スタントでしょ?)。
全体的に編集段階で早送りしているのは明らかだし。
これではアクション映画として銘打つのは難しいだろう。
サスペンスとして、スパイ映画としては悪くは無い。
けれど、もうひとつインパクトに欠ける映画だ。
ヒロイン、あんまりかわいくないしね。
「今度は黒バラ作戦です」というラストを見る限り、「2」も作るのだろうか。
その作戦が失敗、テロリスト側につく。
それを打開すべく、今度はアメリカ側としてボーンが呼ばれる、という展開がいやでも想像がつくのだけれど。
路線を多少変えれば、次回作も期待できるかもしれない。
余談だが、本作は2003年のアメリカのレンタル興行一位だったらしい。
ということは、二作目もありうるということか。。。
と言っていたのに、とても残念なことに、三作も出ましたね。
(2004/1/23執筆)
監督:ダグ・リーマン
マット・デイモン主演の初のアクション映画。
マルセイユ沖の船に、一人の人間が発見される。
男の体には二発の銃弾が撃ち込まれ、また口座番号が記録されているライトも埋め込まれていた。
男は目を覚ますが、全く記憶が無い。
二週間後、男は、記録されていた口座番号のあるスイスのチューリヒ相互銀行に
金庫の中身を取りに行く。
なんとそこにあったのは、あらゆる国の偽造パスポートと、紙幣、そして拳銃だった。
そこで初めて自分の名前を知ったジョンソン・ボーン(マット・デイモン)は危険を感じアメリカ領事館へ駆け込む。
しかし、アメリカ領事館でも警備に呼び止められ、逃げ出してしまう。
一方、アメリカのCIA本部では工作員が任務を失敗し、その行方がわからなくなったと騒然としていた。
あの、マット・デイモンがアクション映画に出る!
この映画の最大の見所は、その一点に尽きると思う。
少なくとも、観客動員数を稼ぐためには、それは格好の宣伝文句だった。
それまでのマット・デイモンといえば、「グッド・ウィルハンティング」や「レイン・メーカー」など、好青年で知的な役柄が多かった。
しかし、あまりヒット作が無かったのも事実。
そこで挑戦したのがこの「ボーン・アイデンティティ」というわけだ。
▼以下はネタバレあり▼
主人公の記憶が無い。
このミステリアスな謎は、ヨーロッパの荘厳な落ち着いた雰囲気にマッチし、よりミステリアスでサスペンス効果の高い謎として機能している。
主人公は、何者かから逃げながら、自分の過去(素性)を取り戻さなければならない。
「バイオ・ハザード」のように、その過去を主人公の中に閉じ込めてしまえば、とてもつまらない映画になっていただろうが、敵をかなりはじめの段階から見せていたことによって、緊迫感はいっそう高まった。
「主人公は何者か」という謎は、ボーンにとっては最後までわからない。
しかし、観客にとっては、殆んどその全貌が読めてしまうほど、情報が示される。
ウォボシという議員の暗殺をCIAが計画、その後工作員のボーンがその実行を担当したが、何らかの理由で失敗、その暗殺失敗をウォボシが公表するとしたため、CIAは窮地に立たされる。
その事態を打開するには、その暗殺失敗の事実を隠滅するため、唯一の証人、行方不明のボーンを抹殺してしまうことだけだった。
よって執拗にボーンを狙うことになったのだ。
主人公が陥ってしまった状況はこれで9割わかってしまう。
状況を把握し謎が皆無になったことが逆に緊迫感を生むことになり、観客はボーンに訪れる危機を緊張しながら迎えることになる。
ここでの残りの1割の謎は、「なぜ任務を失敗したのか」ということだけになる。
この謎の真相が、この映画の残念なところである。
平たく言えば、標的の子どもがいて、子どもの前では撃てなかった、というものだ。
この真相はつらい。
なぜなら、一流のCIA工作員であり、いうなればスパイのマシーンであるはずだ。
その彼が、子どもがいるので撃てません、ではお話にならない。
この映画の中では「トレッド・ストーン(踏み石作戦)」という、スパイ工作員育成の計画だったようだが、子どもの有無によって計画の成否が決まってしまうような生ぬるい工作員を育てているとは、とても思えない。
それまで的確に情報を整理し、ウエイトレスが左利きだとかまでわかる男が、そんな軟弱な理由で任務失敗していたという事実は、「あたたか」すぎる。
もしそんなオチを用意するなら、それまでにボーンと子どもとのやりとりを描いておくべきだった。
そうでないため、このオチは違和感がうまれてしまう。
死体保管所で「この男ではない」とウォボシが言ったことが伏線として機能するわけだが、そうした伏線より、ボーンの性格を示す伏線がほしかった。
さて、肝心のアクション・シーンについて。
これも残念だったといわざるを得ない。
スパイとしてのカッコよさは、充分にあったと言っていいだろう。
しかし、いかんせんアクション・シーンが少なすぎる。
これでは「あのマット・デイモンがアクション映画を撮った!」という喜びは満たされない。
しかも撮り方が悪いため、なにかごまかされているような印象さえ持ってしまう。
カメラ・アングルが近すぎるため、「ようわからん」のだ。
どう考えても「かっこいい」アクション・シーンではない。
壁を降りていくシーンも、アングルがあまりに遠すぎてマット・デイモンとは思えないし(実際、スタントでしょ?)。
全体的に編集段階で早送りしているのは明らかだし。
これではアクション映画として銘打つのは難しいだろう。
サスペンスとして、スパイ映画としては悪くは無い。
けれど、もうひとつインパクトに欠ける映画だ。
ヒロイン、あんまりかわいくないしね。
「今度は黒バラ作戦です」というラストを見る限り、「2」も作るのだろうか。
その作戦が失敗、テロリスト側につく。
それを打開すべく、今度はアメリカ側としてボーンが呼ばれる、という展開がいやでも想像がつくのだけれど。
路線を多少変えれば、次回作も期待できるかもしれない。
余談だが、本作は2003年のアメリカのレンタル興行一位だったらしい。
ということは、二作目もありうるということか。。。
と言っていたのに、とても残念なことに、三作も出ましたね。
(2004/1/23執筆)
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