secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

インソムニア(V)

2008-08-28 08:13:00 | 映画(あ)
評価点:76点/2002年/アメリカ

監督:クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーラン監督の、同名映画のリメイク作。

アラスカのナイトミュートで、若い女性が撲殺されるという事件の捜査のため、ベテラン刑事のドーマー(アル・パチーノ)とその相棒ハップが訪れる。
実はドーマーは内務捜査官に目をつけられ、「左遷」に近い扱いだったのだ。
ナイトミュートで待っていたのは、エリーという新米の警察官(ヒラリー・スワンク)だった。
捜査により、被害者のかばんが見つかり、犯人をおびき出すために見つかった小屋で待ち受けていた。
ドーマーの思惑通り、犯人が現れるが張りこんでいることがばれてしまい、小屋の地下から逃げられてしまう。
張り込んでいたドーマーたちは一斉に追うがあたりは深い霧。
銃を持っている犯人に過敏になっていたドーマーは、人影をみるなり発砲してしまう。
近づいていくと、撃った相手は相棒のハップだった。
前日、内務捜査官に協力すると言ったハップを、わざと撃ったのか、誤射だったのか、事実を明かすことが出来ないドーマーは、不眠症になってしまう。

メメント」の監督、クリストファー・ノーランのサスペンス。
誤って相棒を殺してしまった刑事と、「はずみ」で撲殺してしまった犯人の眠れない壮絶な7日間を描く。
小さくまとまっていて、目を引くほどの斬新さもないが面白く仕上がっているという印象だ。

▼以下はネタバレあり▼

ドーマーは、内務捜査官から目をつけられており、捜査上の正当性をこの事件で見せなければ、以前逮捕した犯人たちを違法捜査による逮捕ということで、釈放されてしまう。
そんなドーマーが最後まで信じていた相棒が、今回のアラスカへの出向によって内務捜査官側に付くと宣言する。
そんな中、誤射して相棒を殺してしまう。
たとえ霧の中であっても、犯人かどうか確認してから発砲しても遅くはなかったのではないか、
その前に犯人が発砲したことによって神経過敏になり、やむをえない発砲だったのだ、
というジレンマがドーマーをおそい、真相を口に出来ずに嘘の証言をしてしまう。
これによって、白夜の続くアラスカで「夜(=睡眠)のない」生活を余儀なくされていく。
その現場を見ていた真犯人のブロディ(ロビン・ウイリアムス)は、「やむなく殺人を犯した者」という共感を抱き、被害者の恋人、ランディを犯人に仕立て上げることをドーマーに提案する。

いったんは、その話に乗るドーマーだったが、両者の殺人の動機を考えれば、正反対だということに気づく。
つまり、小説家ブロディのほうは、彼女への欲求が満たされなかったことへの怒りと、
羞恥心による犯行であり、まったくの私的な欲望の果てに殺人を犯す。
しかし、ドーマーは、内務捜査官につけこまれ、いままで逮捕してきた服役囚を世間に放ってしまうことを恐れる気持ちが、相棒の誤射を引き起こしたということである。
ドーマーの背後にあることは、犯人の逮捕であり、ゆがんでしまったとは言え、正義である。
(このゆがんだ正義が一番怖いということはさておき)
正義のため、という行動動機があるため、無実とわかっている人間を監獄に送ることが出来なかったのは当然である。

そして、ドーマーにとって、インソムニア=不眠からの開放は、生きて事実を白日のもとにさらすのではなく、「死」しかありえない。
死に際、「道を踏み外すな」と若いエリーに言ったことばは非常に重く感じられる。

画面をみた印象としては、ジャン・レノ主演の「クリムゾン・リバー」に似ていると思ったが、田舎で、寒く、綺麗過ぎるほどの自然を上手く利用したのは、本作の方だ。
これだけ綺麗で、不純物のない世界で捜査をしていると、誰でも過去を見つめなおし、道を考え直すというものだ。

不眠症、綺麗なアラスカの町、アラスカという緯度の高い「白夜」の町、故意か事故かというジレンマ、様々な素材をうまく処理していると思う。

ただ残念なのは、サスペンスとしては致命的なほど先が読めてしまうことだ。
プロットとストーリーとが必然性ある展開だからこそ、仕方がないのだが、ありきたりで、意外性に欠けていた印象は否めない。

アル・パチーノ、ヒラリー・スワンク、ロビン・ウイリアムスと、はまり役だったとは思う。
メメント」であれだけ特殊なことをやってしまうと、後が難しいが、きちんと乗り切ったのではないだろうか。
まあ、売れるような派手さはないので、配給会社としては頭が痛いところかもしれないが。
 

(2003/12/16執筆)

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