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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

キャッチー・ミー・イフ・ユー・キャン

2008-04-06 10:30:16 | 映画(か)
評価点:88点/2002年/アメリカ

監督:スティーブン・スピルバーグ

小切手400万ドルを偽造した世界的詐欺師の半生を描いた作品。

1963年ニューヨーク。
地元では有数の富豪アバグネイル(クリストファー・ウォーケン)は、脱税の容疑で大きな転機にさしかかっていた。
信用を逸した彼は銀行の融資を受けることもできず、それまで仲むつまじかったはずの妻とも別れることになった。
突然の離婚によって戸惑う15歳の息子フランク(レオナルド・ディカプリオ)は、両親のどちらを選ぶこともできずに家を出た。
現金を持たないフランクはすぐに生活に苦しむようになったが、パイロットに成りすますことに成功し、小切手を偽造、一気に大金を獲ることになった。
やがてFBI捜査官のカール・ハンラティ(トム・ハンクス)が、彼の犯行を突き止め、彼の行動を追うことになる。

スピルバーグ監督作品であり、何かと話題に上るディカプリオの主演作。
随所にスピルバーグらしさを盛り込んだ演出は、見事というほかない。
ディカプリオという話題性十分な俳優を起用したことは、単なる「演出」ではなかったようだ。
ディカプリオ嫌いの僕としては、寝耳に水といったところだ。

▼以下はネタバレあり▼

導入部がとても長く、「いつになったら小切手偽造の話になるの?」という疑問がふつふつと沸いてきたが、この導入部の出来の良さが、この映画の完成度の高さをうらなっている。
落ち目にある家族とそれを容易に受け入れることが出来ない青年。
この青年の孤独をしっかりと描いたことによって、「最悪詐欺師」の犯行動機がくっきりと浮かび上がった。
その「動機」については先に譲るが、青年の心情をきちんと描いたことによって、観客とフランクとの関係が密なものになった。
だから感情移入しやすいし、彼の突拍子もない行動についていくことが出来た。
しかも父親と母親のその後をきちんと挿入していくという丁寧なつくりによって、さらに主人公の「動機」を切実なものにした。

家族が離れること、そして父親という偉大な存在を自分の尊敬すべき元の姿を取り戻すため、といういかにも子供らしい、そして強力な行動動機が、主人公の「弱さ」を象徴している。
しかもどんどん彼の家族はどうしようもない場所に離れていく。
母親は再婚し、父親は経営という道から労働という階級に落ちていく。
フランク自身もどんどん抜け出せない詐欺の道へと足を踏み込んでいく。
フランクが地位を偽れば偽るほど家族は離れていき、お金を得れば得るほど家族は貧しくなっていく。
逆に追手のカールとの距離は縮まる。
大胆不敵で平気で嘘をつき続け、小切手を偽造しまくるその手口が、とてもピュアで、切実な願望のためであるから、憎めないキャラとして受け取ることが出来る。
中盤、いきなり結婚を思い立ったのはそうした寂しさからであろう。

カールのキャラクターも実に効果的に描かれている。
フランクに翻弄されつつも、決して滑稽なだけの人物では終わっていない。
なんといっても、彼を追う動機は「職業」としての彼の誇りであり、フランクとの行動動機の差異をきちんと描き分けている。

彼らの人間性を大胆に色分けした監督はやはりすごい。
彼らそれぞれの個性に説得力があり、次に起こす行動がとても理解しやすい。
それでいて先を読ませない展開の目まぐるしさは映画というエンターテイメントを知り尽くした感がある。

監督のコメディーもうまく利いている。
うまく医者として病院に入り込んだフランクが個室を与えてもらった後はじめてみる患者の怪我に思わず吐き気を催し、駆け込んだのは「掃除用具」の部屋。
こうした皮肉は非常にうまいし、映画としての異空間を見事に形成している。

異空間といえば、この映画全体が1960年代の異空間である。
21世紀となった現代をまったく感じさせないセットや雰囲気はこの映画をかげながら支えている。
ロード・オブ・ザ・リング」のような目に見えて派手なCGはないが、
おそらく相当のお金がコンピュータ処理に費やされているだろう。

ディカプリオはあまり好きじゃないが、この映画の彼は良い。
おそらく(僕が見た)ディカプリオの映画では一番いいだろう。
さすがに高校生の役はちょっときついが、それでも、10代から20代後半までカバーしてしまう容貌の持ち主は他にちょっといない。
トム・ハンクスは安心して見られるからすごい。
名脇役から主役まで張れる人も稀だ。

パンフレットに書いてある2時間17分という文字をみて、「長いな~」と思ったがこの映画は納得の長さだ。
やはりスピルバーグはすごいよ。

余談だが映画館に行ったとき、客がガラガラだったのが気に懸かる。
同じディカプリオ主演の、「ギャング・オブ・ニューヨーク」と比べられるスピルバーグが気の毒だ。

(2003/03/29執筆)

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
書き込みありがとうございます。 (menfith)
2008-04-13 19:12:03
ちょっと懐かしい映画ですね。これから不定期ですが、HPからブログに移行していこうと思います。
返信する
劇場鑑賞しました (メル)
2008-04-06 12:57:57
高得点評価で何だか嬉しく思います。
これは、私の中で『グリーンマイル』に次ぐヒット作です。
返信する

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