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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ダイ・ハード ラスト・デイ

2013-02-28 21:00:06 | 映画(た)
評価点:54点/2012年/アメリカ/98分

監督:ジョン・ムーア

みなさん、「竜頭蛇尾」とはこの映画のことを言います。

ジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、ロシアで見つかった行方不明の息子ジャック・マクレーン(ジェイ・コートニー)が、犯罪で捕まっていることを知り、ロシアに会いに行こうと考える。
ジャックは、ロシアのマフィアで、重要参考人のコマロフ(セバスチャン・コッホ)の指示による犯罪であることを証言して司法取引したいと刑事に持ちかけ、裁判にかけられる。
裁判が始まろうとするとき、裁判所外にあった車が突如爆発し、コマロフとジャックは逃げ出してしまう。
ジャックはCIA捜査官で、アリクの命を守る任務に就いていたのだ。
それを知らないマクレーンは、ジャックが良からぬ悪事を働いていると考え、任務を妨害してしまう……。

ダイ・ハード」シリーズ第5弾となった本作は、はじめて海外で撮影されることになった。
「4.0」では娘が登場したので、今回は息子が登場する。
なんと安易なことなのか。
それでもファンとしては、いやそれ以上に育ててもらった恩がある以上、見に行かずにはいられない。
それが、1980年代から映画に親しんできた者の礼儀というものだ。

あなたがせいぜい「4.0」がおもしろかった程度の気持ちなら、もう見に行かなくて良い。
それは排他的な意味ではなく、親切心からだ。
それほどこの映画はおもしろいものではない。
これを見に行くくらいなら、「ゼロ・ダーク・サーティ」を見に行った方が数倍楽しめる。
私が先に示した点数でわかってくれるだろう。

むしろ、ファンのほうがこの映画を評価しないような気もするが、それは見てからのお楽しみ。

▼以下はネタバレあり▼

マクレーンは、言うまでもなく「世界一運の悪い男」である。
けれども、マクレーン以上に運の悪い男たちがいた。
それは、マクレーンを巻き込んでしまった、ヴィラン(=敵)たちだ。
殺しても殺しきれない(=ダイ・ハード)男が、計画を少しずつ壊していく。
それが相手をいらいらさせて、やがて計画が立ち行かないところまで目障りな存在になっていくのだ。
その「相手をいらいらさせる」ところが、このシリーズの痛快なところなのだ。

今回、それは身内も訪れる。
3年もかかって内部捜査したことで、アリク(ラシャブ・コヴィッチ)と、コマロフという二人の大物犯罪者を捕まえようとしていたCIA捜査官のジャックの計画を見事に狂わせてしまう。
アリクとロマノフはもともと核兵器の横流しによって利益を得ていた。
しかし、チェルノブイリ事故によってそれが出来なくなり、二人の仲も違えていく。
コマロフは、アリクの陰謀によって捕らえられ、裁判に掛けられる。
アリクは政治の実権を握ろうとしていた。
アリクはコマロフに不利な証言をさせずに、証拠となるファイルを手に入れようと脅していた。
コマロフは唯一の切り札として証拠のファイルを隠していた。
よって、物語はそのファイルと、コマロフの身柄を巡っての攻防となる。
しかし、実際にはコマロフはファイルではなくチェルノブイリに隠されていた核兵器を回収したかったのだ。
娘をアリクに寝返ったように見せて、実はコマロフの計画通りを遂行させるために、チェルノブイリに同行させていた。

これによってコマロフの計算通りにいけば、アリクを殺したうえにチェルノブイリにある核兵器も手に入る、はずだった。

物語はいつも通り? 非常に単純だ。
少しひねりがあるものの、これまでアクション映画を多少見ていればついていけない話ではない。
親子という今回のテーマにも合致している。

だが、肝心の「相手をいらいらさせる展開」がすっぽりと抜け落ちる。
特に、チェルノブイリを目指そう、となった後半以降、まったく単なるアクション映画になりさがる。
どかーん、どかーん、だだだだだだだだだ、ずきゅーん、ぐさ、どかーん、というお決まりの派手なアクションだけになってしまう。
とても大味な映画になってしまう。
さらに閉口してしまうのは、コマロフがあっさり死んでしまって、悪役がアリク一人になってしまうという展開だ。
見事にチェルノブイリだけの閉じられた狭い世界になってしまい、「都市でのドンパチ」の価値もなくなってしまう。
尻切れトンボ、竜頭蛇尾、パフェの最後が全部フレークのような、寂しい終わり方だ。

確かにアクションはさすが、とおもわせるけれども、画的な派手さよりも、「相手をいらいらさせる」ことのほうが「ダイ・ハード」としては重要だ。
「ダイ・ハード2」で、犯人グループが飛行機で高飛びしようとした時、飛行機の翼の部分にジャケットが挟まって離陸できない。
たったジャケット一枚のことなのに、それだけで飛行機(計画)が飛び立たない。
そういう「いらっとする」行動が、マクレーンのアイデンティティなのだ。
取るに足らない存在なのに、無視することもできない、そういう展開にしなければ、シリーズの「らしさ」はでてこない。

アリクとコマロフの二人をわざわざ出すなら、最後に「実は仲良しでした」のほうが、まだスケール感が出たはずだ。

親子の共演、親子の邂逅を目指したあまり、物語としてのまとまりが生まれた分、とんでもない展開にはならなかった。
結果的に「4.0」の方が遥かに危機的だったし、遥かに大きな話だった。
だって、核兵器、撃たれないし、撃たれるそぶりもないじゃん。
あれが核兵器じゃなくて、生物兵器でも、化学兵器でも、おかんのおならでも良かったってことになってしまっている。
飛び立ったヘリが爆発されて墜落するのは、大昔からの映画の常識だ。
それならもっと見せ方があっただろうに、と悔やまれてならない。

そうそう、冒頭の飛行機に乗っているシークエンスも、だめだめだ。
もともとマクレーンは大の飛行機嫌い。
だから「1」ではリラックスする方法を乗客から聞いたし、「2」ではその飛行機そのものが舞台となる。
息子の資料を見ながら、普通に乗ってちゃだめだ。
そういうの、大事だと思いますが、いかがですか、監督さん。

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2 コメント

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Unknown (ひ辻)
2013-03-11 01:55:17
こんばんわ、初めまして。

何だかどんどんアクションがエスカレートしてきてしまって、
ダイハード本来の味わいが薄れてしまいました。
平凡なおっさんが巨悪に対して知恵で戦うところにロマンを感じていたのですが...

見てるときは気がつきませんでしたが、
確かに普通に飛行機に乗ったらダメですよねぇ...
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春眠暁を覚えず (menfith)
2013-03-11 22:34:10
管理人のmenfithです。
最近あったかくなってきて、うれしい限りです。
あまりにも気持ちよくてますます朝がつらくなってきました。

むにゃむにゃ、もう少しだけ……。

>ひ辻さん
みんなが大好きなシリーズだけに、ハードルは高いですね。
ブルースもいい年なんだから、もっと脚本をみて慎重になればいいのに、と思ってしまいます。

もっとスケール感よりも、シナリオのうまさ、そしてシナリオとアクションのかみ合いが観たいところです。
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