今日は1980年代のポップス・ロックのセルフ編集盤を聴いてたんだけど、なんだかリズムに神経を逆なでされるような感じで、疲労感だけがつのりました。
とくに打ち込み系の、あの感情の起伏のないリズムがダメだ~。
人間、その日によって楽しかったり、落ち込んだり、悲しい気分だったりするように、今日のぼくは80年代ポップスの気分じゃなかったってことですね。
それで、プレイヤーの息遣いが感じられるような音、意思が伝わってくるような音が無性に聴きたくなって、CD棚から取り出してきたのが、買ったばかりの北川潔氏(bass)のリーダー・アルバム『プレイヤー』でした。
これは、北川氏のサード・アルバム(ベース・ソロ作品を含む)です。全9曲中、北川氏のオリジナルが5曲。残り4曲は、ウェイン・ショーターやオーネット・コールマンなどのジャズ・オリジナル曲です。
北川氏は1988年からニューヨークを拠点としてワールド・ワイドに活躍している、日本の誇るジャズ・ベーシストのひとりです。現在はジョン・ファディス(tp)や、ケニー・バロン(pf)のグループをはじめとして、さまざまなプレイヤーから引っ張りだこ。
北川氏の音は、以前彼が小曽根真トリオに在籍していた時に聴いたことがあり、その頃から彼の深くてツヤのあるプレイに興味を持っていました。
リーダー・アルバムを出したというニュースを聞いてからはCDを買おう買おうと思いつつ、ようやくこのたび『プレイヤー』を買わせて頂いた、というわけです。
北川 潔(bass)
ベーシストのリーダー・アルバムというと、ベース・プレイのみにスポットが当たりがちです。それはそれである意味当然なわけですが、北川氏のこのアルバムからは、「ベーシスト」としてばかりではなく、「ミュージシャン北川潔」の中にいつも湛えられているであろう「彼自身の音楽」が強く感じられます。
これぞジャズ、って感じ。きっと、こういうサウンドがいつも北川氏の心の中で鳴っているんだろうな。深くて、広い世界です。
北川氏の発揮するリーダー・シップが明確に感じられるうえ、ピアノのケニー・バロン、ドラムスのブライアン・ブレイドという凄腕ふたりとの息もピッタリ合っているようです。彼らふたりは、北川氏自身の音楽観をしっかりとくみ取ったうえで、自分たちの音を積み重ねているのでしょうね。
北川氏のベースの語り口、とてもはっきりした意思を持っているように聴こえます。その「意思」がリスナーであるぼくを時にはリラックスさせ、時には興奮させてくれるのです。
そしてアルバムを繰り返し聴けば聴くほど、三人の楽器を通じたやりとりがとてもスリリングで、楽しく感じられます。
耳ざわりが良くて甘ったるいムードのアルバムではないけれど、真摯で骨太な「北川潔の世界」に存分に浸ることのできる、アーティスティックな作品だと思います。
これはファースト・アルバムの『アンセストリー』も買わねば。
余談ですが、この『プレイヤー』、発売元の澤野工房から直接買わせて頂いたのですが、同封の納品書に、手書きで丁寧なお礼の言葉が書かれてあったのにはちょっとビックリ、ちょっと感激。お客ひとりひとりをとても大切にしているような気がして、いっぺんで澤野工房のファンになりましたよ。
◆プレイヤー/Prayer
■演奏
北川潔トリオ
■リリース
2005年
■録音
2005年2月16日~17日 (システムズ2 ニューヨーク市ブルックリン)
■プロデュース
北川潔 & 篠田博嗣
■レコーディング・エンジニア
マイク・マルシアーノ/Mike Marciano
■収録曲
① Guess What (北川潔)
② Back Stage Sally (Wayne Shorter)
③ Prayer (北川潔)
④ Catch And Release (北川潔)
⑤ Etude In Three (北川潔)
⑥ Evidence (Thelonious Monk)
⑦ Oleo (Sonny Rollins)
⑧ Lonely Woman (Ornette Coleman)
⑨ A Place To Remember (北川潔)
■録音メンバー
北川潔 (bass)
ケニー・バロン/Kenny Barron (piano)
ブライアン・ブレイド/Brian Blade (drums)
■レーベル
澤野工房