ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

音楽的な信頼関係

2006年02月19日 | 価値観
 音楽というのは面白いもので、同じ曲を演奏しても、メンバーが変われば全く別のサウンドになってしまうことがあります。
 メンバーの組み合わせによっては、出てくるサウンドの広がりが素晴らしいものになったり、反面、狭くてつまらない音になったり。
 凄腕ミュージシャンの集まりである「スーパー・グループ」の音楽が必ずしも最上級のものになるとは限らないんです。不思議ですね~。清原、小久保、江藤、ローズ、高橋由、阿部、二岡、清水などなど、3・4番クラスの打者をズラリと揃えた某巨人(どこが某やねん)が強力チームにはなり得なかったことに似ています。
 メンバーの組み合わせによって出てくる音の違いって、ある薬品と別な薬品を混ぜ合わせた時に起こる「化学反応」のようなものかもしれませんね。
 メンバー同士の、波長や、相性の問題もあるのかも。


 昨夜は自分が「リーダー」としてのライブだったので、かねてから試してみたいと思っていたメンバーによるピアノ・トリオで臨んでみました。
 ピアノとドラムが初顔合わせでしたが、どんな音になるのかは、ある程度は予想していました。しかし、予想以上に興味深いことになりました。
 まだまだ音を練り上げて行かねばならない三人ですが、とても大きな可能性を感じることができてちょっと嬉しいのです。
 お客さまにもとても喜んで頂けましたしね。


 三人ともが全力を尽くしたアツい演奏ができたことがまず嬉しい。
 三人それぞれが持てる手段を活かして、「生きた音」を出そうとする緊張感。
 仮にミスっても誰かがフォローしてくれる、という安心感。
 創造的なサウンドを出そうとする前向きな姿勢。
 これは、三人全員が、まずは他のふたりの音楽観(仮にそれが自分と違うものだとしても)を素直に認めることを前提としていたからこそできたことだと思うんです。だからこそ、他のメンバーの「創造的な自由」を積極的に受け入れることができたのだと思います。お互いがお互いを高め合い、カバーし合う関係です。
 ぼくは、こういうのを「音楽的な信頼関係」と呼んでます。
 でもこういうことって、音楽上に限られたことではなくて、どの仕事、どの世界にも当てはまることなんですよね。


 例え音楽的相性が合わなくても、相手の音楽性を受け入れることで、何かが生まれることって往々にしてあります。これは、自分が謙虚であることが大事だ、ということも言えるのではないでしょうか。
 時々いっしょに演奏するある女性プレイヤーがいます。彼女は常に「自分が中心」という意識を持っていて、他のメンバーの音楽観をあまり認めようとはせず、時には自分の音楽観以外の考え方を否定したりもします。つまり、共演者を信頼して音楽を作っていこうという気持ちがあまりないようなのですね。そして自分の狭い音楽観のみを他のメンバーに押し付けようとするので、実はぼくはその人と一緒に演奏するのが苦痛だったりします。
 でも実際ステージに上がっている時はそんなことは言っていられません。それにぼくは、「バンド・リーダーには従うもの」だと思っていますから。
 しかしそのリーダーの音楽性・人間性が狭い場合、出てくる音も自然狭くてつまらないものになるところがとても面白いと思っているのです。(面白い、と言うと語弊があるかな


 昨夜の演奏を振り返ってみると、改めて「信頼関係というものがどれほど大事か」ということに気づかされます。また信頼関係を築くことはとてもたいへんなことではあるけれども、反面、それを築くのは自分次第でもあるんだ、ということをも改めて思い起こさせてくれた夜でもありました。


 おかげでだいぶ元気が出ました。「人生楽あれば苦あり、苦あれば楽あり」ってとこでしょうか(笑)。前回の記事で心配して下さった方々、ありがとうございました。(といっても、きっとまたヘコむ時はやって来るでしょう。落ち込んだり、元気になったり、われながら忙しいな~


人気blogランキングへ←クリックして下さいね
コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする