ぼくが最初に好きになったアメリカン・ロック・バンドが初期のシカゴと、ドゥービー・ブラザーズです。
ロサンゼルスのイーグルスに対するサンフランシスコの人気バンドとして、1970年代のウェスト・コースト・サウンドを代表する存在だったのが、ドゥービー・ブラザーズです。その彼らの初期の傑作が「キャプテン・アンド・ミー」です。
サイケデリック・ロックの発信地であるサンフランシスコで生まれたバンドながら、サイケな部分は微塵もなく、フォークやブルースなどの伝統的音楽を下地にした豪放磊落なロックを聴かせてくれます。
バンド名は、まだ彼らが売れていない頃、マリファナ(カリフォルニアの俗語で『ドゥービー』)を回しのみしていた時に、誰かが言った「まるでオレたちはドゥービー・ブラザーズだな」という言葉がその由来となっています。
バンドの柱は、ブルースやロックン・ロールをルーツとするトム・ジョンストンと、フォークに根ざした音楽を追求していたパット・シモンズのふたりです。好対照の音楽的指向を持つトムとパットが、ドゥービーズをリードしているんですね。このふたりは、お互いに影響を及ぼし合いながら、自分のカラーを存分に発揮しています。
豪快でソリッドなトムと、繊細でアコースティックなパットの対比をうまくまとめたプロデューサーのテッド・テンプルマンの手腕も光ります。
アメリカ西海岸の乾いた空気の香りと肌ざわりが感じられるところがドゥービーズの魅力です。ハード・ドライヴィンなギターのカッティングと分厚いコーラス・ワークがとても印象的。疾走感あふれる演奏に乗った軽快なメロディと、美しいハーモニーは、まるでハイウェイを車で突っ走る時のような爽快感を味あわせてくれます。
収録されているのは全11曲。うちトムの作品が6曲、パットの作品が3曲です。
ギターによる16ビートのカッティングと、疾走する汽車を連想させるようなハーモニカ・ソロがカッコいい「ロング・トレイン・ランニン」、耳に残るギター・リフを持つ、勢いのあるハード・ロック「チャイナ・グローヴ」、なんといっても目立つのが、ヒットしたこの2曲です。
底抜けに明るいハード・ロック「ウィズアウト・ユー」や、ブルージーな「イーヴル・ウーマン」、パットの個性がよく表れているアコースティック・ナンバー「サウス・シティ・ミッドナイト・レディ」なども、とても印象に残ります。
建設中の近代的なハイウェイの下、ドゥービーズの面々が開拓時代を思わせるいでたちで4頭立て馬車に乗っている、というユニークなジャケット・デザインは、アメリカのルーツ・ミュージックであるフォークやブルースなどを携えつつコンテンポラリーなロックを展開するドゥービーズの音楽を示唆しているようにも見えますね。
このアルバムは、春の陽気に誘われてドライヴに出かけようとする時など、良き相棒になってくれると思いますよ。
◆キャプテン・アンド・ミー/The Captain And Me
■歌・演奏
ドゥービー・ブラザーズ/The Doobie Brothers
■リリース
1973年3月2日
■プロデュース
テッド・テンプルマン/Ted Templeman
■収録曲
A① ナチュラル・シング/Natural Thing (Johnston)
② ロング・トレイン・ランニン/Long Train Runnin' (Johnston) ☆全米8位, 全英7位
③ チャイナ・グローヴ/China Grove (Johnston) ☆全米15位
④ ダーク・アイド・ケイジャン・ウーマン/Dark Eyed Cajun Woman (Johnston)
⑤ クリア・アズ・ザ・ドライヴン・スノウ/Clear As The Driven Snow (Simmons)
B⑥ ウィズアウト・ユー/Without You (Hartman, Hossack, Johnston, Porter, Simmons)
⑦ サウス・シティ・ミッドナイト・レディ/South City Midnight Lady (Simmons)
⑧ イーヴル・ウーマン/Evil Woman (Simmons)
⑨ オコーネリー・コーナーズ/Busted Down Around O'connelly Corners (James Earl Luft)
⑩ ユカイア/Ukiah (Johnston)
⑪ キャプテン・アンド・ミー/The Captain And Me (Johnston)
☆=シングル・カット
■録音メンバー
【Doobie Brothers】
トム・ジョンストン/Tom Johnston (guitars, harmonica, synthesizer, vocals)
パット・シモンズ/Patrick Simmons (guitars, synthesizer, vocals)
タイラン・ポーター/Tiran Porter (bass, vocals)
ジョン・ハートマン/John Hartman (drums, percussion, vocals)
マイケル・ホザック/Michael Hossack (drums, percussion)
【guests】
ビル・ペイン/Bill Payne (piano, organ, keyboards)
ジェフ・バクスター/Jeff 'Skunk' Baxter (guitar, pedal-steel-guitar, steel-guitar)
テッド・テンプルマン/Ted Templeman (percussion)
■チャート最高位
1973年週間チャート アメリカ(ビルボード)7位
1973年年間チャート アメリカ(ビルボード)17位