ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

レッツ・ダンス (Let's Dance)

2007年11月22日 | 名盤


 1980年代に入り、デヴィッド・ボウイはRCAからEMIに移籍しました。
 移籍後第1作にしてボウイの14枚目のアルバムが、イギリスのほかカナダ、フランス、オーストリア、オランダ、ノルウェイ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランドなどで1位を獲得、世界的メガ・ヒットとなった「レッツ・ダンス」です。


 シックのナイル・ロジャースが共同プロデュースに加わっただけあって、ダンサブルでスタイリッシュな作品に仕上がっています。しかしサウンドは、それまでの英国的な香りのする作風から打って変わってファンキーかつポップになりました。先鋭的だったボウイが売れ筋サウンドを後追いしたことは、古くからのファンの間で批判的に迎えられました。「ボウイは産業ロックになってしまった」「いや、進化を続けるボウイだからこそ良いのだ」なんていう論争も巻き起こったようです。
 評論家の間でも評価は分かれていたようで、概ねロック系評論家からは批判的に、ポップ系評論家からは好意的に迎えられたみたいですね。
 ぼくは、ミュージシャンというのはいろんな面を持っているのだし、「こうでなくてはならない」と思い込む必要もないと思っているので、80年代以降のボウイのサウンドもアリかな、なんて思ってます。





 常に過去の自分を脱ぎ捨て、新しい自分を模索し続けていたボウイは、猫も杓子もディスコ調になっていた80年代の「時代の波」を敏感に感じ取ったのでしょうね。ボウイがダンサブルなビート積極的に取り入れ、ニュー・ロマンティックスの影響を受けたポップなサウンドに傾いていったのは当然と言えば当然なのかもしれません。


 このアルバムがリリースされた1983年頃というのは、MTVなどの影響でプロモーション・ヴィデオの制作も盛んになっていましたが、そのPVを効果的に駆使したことや、同年に話題となった映画「戦場のメリー・クリスマス」の公開なども、「レッツ・ダンス」の大ヒットの呼び水になったと言えるでしょう。





 深みのある知的なヴォーカルは健在です。その声がダンス・ビートに乗ってホットに聴こえてきます。
 アフター・ビートの効いたヘヴィーでタイトなドラムと、打ち込みっぽいベースはいかにも80年代風です。
 1曲目の「モダン・ラヴ」から、ヒットした「チャイナ・ガール」「レッツ・ダンス」という流れはとてもノリが良くて、ハイになるにはもってこいですね。


 名ギタリストの故・ステイーヴィー・レイ・ヴォーンが参加、「チャイナ・ガール」や「レッツ・ダンス」を始めとして、ほぼ全編でギターを弾きまくっているのもこのアルバムの聴きどころのひとつでしょう。かなり自己主張の強いギター・プレイですが、曲にうまくマッチしていると思います。
 このアルバムに起用されたことが、スティーヴィーのブレイクのきっかけになったというのは有名な話ですね。





 社会現象となるほどの大ブームを巻き起こしたディスコ「マハラジャ」。それに続くかたちの「バブル景気」。日本中が刹那的に燃え上がった1980年代でしたが、その時代を象徴するような音楽のひとつが、この「レッツ・ダンス」だったような気がします。
 総じてポップなロック・ナンバーが多く、しみじみ聴くというよりは、全身でビートを浴び、サウンドに体を委ねて自然にグルーヴするほうがより楽しめるアルバムだと言えるでしょう。



◆レッツ・ダンス/Let's Dance
  ■歌
    デヴィッド・ボウイ/David Bowie
  ■リリース
    1983年4月14日
  ■プロデュース
    デヴィッド・ボウイ & ナイル・ロジャース/David Bowie & Nile Rodgers
  ■収録曲
   [side A]
    ① モダン・ラヴ/Modern Love (David Bowie)  ☆
    ② チャイナ・ガール/China Girl (lyrics=Iggy Pop, music=David Bowie)  ☆
    ③ レッツ・ダンス/Let's Dance (David Bowie)  ☆
    ④ ウィズアウト・ユー/Without You (David Bowie)  ☆
   [side B]
    ⑤ リコシェ/Ricochet (David Bowie)
    ⑥ クリミナル・ワールド/Criminal World (lyrics=Peter Godwin, Duncan Browne, Sean Lyons, Bowie music=Godwin, Browne, Lyons)
    ⑦ キャット・ピープル/Cat People(Putting Out Fire) (lyrics=Bowie, music=Giorgio Moroder)  ☆
    ⑧ シェイク・イット/Shake It (David Bowie)
    ☆=シングル・カット
  ■録音メンバー
    デヴィッド・ボウイ/David Bowie (lead-vocals)
    ナイル・ロジャース/Nile Rodgers (guitar)
    スティーヴィー・レイ・ヴォーン/Stevie Ray Vaughan (guitar)
    ロブ・サビノ/Robert Sabino (keyboards, piano)
    カーマイン・ロハス/Carmine Rojas (bass)
    バーナード・エドワーズ/Bernard Edwards (bass④)
    オマー・ハキム/Omar Hakim (drums)
    トニー・トンプソン/Tony Thompson (drums)
    サミー・フィゲロア/Sammy Figueroa (percussions)
    マック・ゴールホン/Mac Gollehon (trumpet)
    スタン・ハリスン/Stan Harrison (baritone-sax, flute)
    ロバート・アーロン/Robert Aaron (tenor-sax)
    フランク・シムス/Frank Simms (backing-vocals)
    ジョージ・シムス/George Simms (backing-vocals)
    デヴィッド・スピナー/David Spinner(backing-vocals)
  ■チャート最高位
    1983年週間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)4位、イギリス1位、日本(オリコン)6位
    1983年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)28位、イギリス2位、日本(オリコン)22位
    1984年年間アルバム・チャート アメリカ(ビルボード)64位



コメント (13)
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