アニマルズは1963年にイギリスのニューキャッスルで結成された5人組のバンドです。バンド名は、あまりに激しかった彼らのステージを体験した聴衆たちから「Animal!」と言われたことに由来するという説があります。(エリック・バードンはこれを否定しています)
バンドのサウンドは、中心的存在のヴォーカリスト、エリック・バードンの音楽的ルーツであるリズム&ブルーズ色の影響が強いものでしたが、シングル曲はヒットを意識した聴きやすいものになっています。また、彼らのサウンドはオルガンが大々的にフィーチュアされているという特徴がありました。
彼らの最大のヒット曲が「朝日のあたる家」です。この曲はアメリカのトラディショナル・フォーク(イギリスに古くから伝わるバラッドだ、とする説もある)です。
最初にレコーディングされたのは1928年です。アルジャー・テキサス・アレキサンダーという黒人ブルーズマンによって吹き込まれました。1937年に民俗音楽学者のアラン・ロマックスによって再発掘され、その後はウディ・ガスリーやジョーン・バエズ、ボブ・ディランといったフォーク系のシンガーたちによって歌い継がれてきました。
日本ではアニマルズのヒットの後、グループ・サウンズがよくこの曲をカヴァーしていたようです。
この曲を取り上げたアニマルズは、オルガンを前面に出し、サウンドを重くブルージーなものにアレンジし直しました。これが当たって、1964年には英米のほかオーストラリア、スウェーデンでチャート1位、日本、カナダ、ニュージーランドでチャート2位となる大ヒットを記録しました。
イントロはギターの3連符アルペジオ。静かにエリック・バードンの歌が入りますが、2コーラス目からはパワフルで黒っぽい、そして悲哀の感じられる歌を聴くことができます。次第にオルガンがヴォーカルに絡み始め、ギターはストローク奏法となってリズムを激しく刻みます。中間部のオルガン・ソロは名演と言っていいでしょう。後半はヴォーカルとオルガンの激しいバトルのようなサウンドとなります。エンディングはオルガンが静かにまとめています。
この曲は、もともとは「朝日楼」という屋号の娼館に身を落とした女性の嘆きの歌なのですが、アニマルズは歌の主人公を男性に変えています。また「朝日」という名の家は、監獄のことを指しているのだとする説もあります。
ちなみに、19世紀後半のニュー・オーリンズには実際に「朝日」という名の娼館があったそうです。
アニマルズはその他にも「悲しき願い」「朝日のない街」「悲しき叫び」「孤独の叫び」など多くのヒット曲を出しましたが、1966年に解散します。その後「エリック・バードン&ジ・アニマルズ」の名で再び活動を開始しました。このバンドには、のちのポリスのギタリスト、アンディ・サマーズが一時在籍していたことでも知られています。
アニマルズ『朝日のあたる家』
[歌 詞]
[大 意]
ニューオリンズにあるその館は「朝日」と呼ばれている
哀れな若者ばかりの廃墟さ
神様、俺もその中のひとりなんだ
母さんは仕立て屋で 俺に新しいブルージーンズを縫ってくれた
父さんはニューオリンズのギャンブラーだった
ギャンブラーに必要な物といえば、スーツケースとトランク
そしてギャンブラーが満たされるのは酔っ払ってるときだけ
母さん、子供たちに言ってくれ 俺がしたようなことはするなって
人生を哀しみと悪で汚して 「朝日楼」の中
片足をプラットホームに、もう片足を列車にかけて
俺はニューオリンズに帰るところだ
鉄球と鎖をつけられるために
◆朝日のあたる家/The House Of The Rising Sun
■歌・演奏
アニマルズ/Animals
■録音
1964年5月18日
■シングル・リリース
1964年6月19日(英)、1964年8月(米)
■作者不詳(アメリカ トラディショナル)
■編曲
アラン・プライス/Alan Price
■プロデュース
ミッキー・モスト/Mickie Most
■録音メンバー
[アニマルズ]
エリック・バードン/Eric Burdon (vocal)
アラン・プライス/Alan Price (organ)
ヒルトン・ヴァレンタイン/Hilton Valentine (guitar)
チャス・チャンドラー/Chas Chandler (bass)
ジョン・スティール/John Steel (drums)
■チャート最高位
1964年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位、日本(ミュージック・マンスリー)2位
1964年年間チャート アメリカ(ビルボード)38位