ケイコ・リーや綾戸智絵などの出現がきっかけとなって、日本のジャズ・ヴォーカルの分野が活気づいてます。
テレビで見る機会は少ないですが、ライヴ・ハウスで地道な活動を続けている歌い手さん、多いです。
実際にお店に聴きに行ってみると、歌はステキだし、雰囲気は楽しいし、熱のこもった演奏で盛り上がるしで、何度行っても飽きません。
ひとりで行くもよし、友達どうしで会話や食事を楽しみながら聴くもよし。
音楽っていいなぁ、ジャズっていいなぁ、としみじみ感じること請け合いですよ。
ジャズ・ヴォーカリストにもいろんなタイプがいます。
流行の先端を取り入れたり、最新の曲をレパートリーにしている人から、伝統的なものを味わい深く歌い続ける人まで、多岐にわたっています。
ロックやポップスなど、他のジャンルの曲を積極的に取り上げている歌い手さんも多いですね。
ビリー・ジョエルという人の書く曲は、ジャズの作風を意識的に取り入れているため、ジャズの題材として取り上げられることも多いです。
彼の代表作のひとつでもある「ニューヨークの想い」もそんなジャズっぽい曲のひとつで、この曲をレパートリーに入れているジャズ・シンガー、珍しくありません。
これをゴキゲンなアレンジで歌っているのが、アン・バートンなんです。
「ニューヨークの想い」は名曲だけあって、実にたくさんの人が持ち歌にしていますが、これだけカッコよく歌っているもの、ほかにあまり知りません。個人的な好みを言わせてもらうと、本家本元のビリーの歌より好きなくらいです。
ミディアム・スローの3連でしっとり始まるかと思えば、テンポを倍にして軽快にスイングします。アンの歌は、ふたつのグルーブを自在に行き来しています。
中間部の、ベースとハイハットだけをバックに歌うアン、とってもジャジーで小粋です。
可愛らしさとしっとりした女らしさが同居している彼女の歌を聴いていると、自然とリラックスしてくるんです。
バラードもうまいけれど、小気味よいスイングも心地よいですね。
アンの歌う「ニューヨークの想い」は同名タイトルのアルバムに収められています。
プロデューサーは、なんと”ニューヨークのため息”と謳われた名ジャズ・シンガーのヘレン・メリル。
冬の夜長に、アン・バートンの歌でニューヨークの夜の気分にひたってみるのもいいかもしれませんね。
左から マイケル・レンジ(piano)、バスター・ウィリアムス(bass)、グラディ・テイト(drums)
[歌 詞]
◆ニューヨークの想い/New York State Of Mind
■歌
アン・バートン (Ann Burton)
■収録アルバム
ニューヨークの想い/New York State Of Mind (1979年)
■プロデュース
ヘレン・メリル/Helen Merrill
■録音メンバー
アン・バートン/Ann Burton (vocal)
マイケル・レンジ/Michael Renzi (piano)
バスター・ウィリアムス/Buster Williams (bass)
グラディ・テイト/Grady Tate (drums)