彼岸花(曼珠沙華)は赤い花だけかと思っていたら、様々な色の花があります。
厳密にはこれらはリコリスという種類の花で、そのうちの赤い花を
特に彼岸花、あるいは曼珠沙華というのでしょう。リコリスという
のはギリシャ神話の海の女神に由来する名前だそうです。
彼岸花といえばやはり、道端や田の畦や墓地に咲くちょっと毒々しい
この赤い花。北原白秋に「曼珠沙華(ひがんばな)」という詩があります。
GONSHAN.(ゴンシャン)GONSHAN. 何処へゆく
赤い御墓の曼珠沙華(ひがんばな)、
曼珠沙華、
けふも手折りに来たわいな。
GONSHAN. GONSHAN. 何本か。
地には七本、血のやうに、
血のやうに、
ちやうど、あの児の年の数。
GONSHAN. GONSHAN.気をつけな。
ひとつ摘んでも、日は真昼、
日は真昼、
ひとつあとからまたひらく。
GONSHAN. GONSHAN. なし泣くろ。
何時まで取っても、曼珠沙華、
曼珠沙華、
恐しや赤しや、まだ七つ。
字面を見ただけでもおどろおどろしい詩ですね。ゴンシャンという
のは九州柳川地方の方言で、良家の娘という意味だそうです。あ
の真っ赤な色が血を連想させ、その上に蜘蛛の様な花の形が一
層まがまがしさを感じさせるのでしょうか。せっかくきれいに咲い
ているのになんだか気の毒な気もしますが、まあその辺のかわい
い花よりインパクトがあるのは確かです。
ところが、仏教では曼珠沙華は「天上の花」という意味で、慶事
の先触れとして、天から降ってくるといわれるめでたい花だそう
です。人間の見方、感じ方っていろいろです。時代と場所が変わ
ると、同じ花が吉と凶の正反対のイメージで捉えられたのですね。