かわいいポピーが咲いています。日本語ではヒナゲシ(雛罌栗)、
フランス語でコクリコ、スペイン語でアマポーラ。歌や詩になる
可愛い花です。雛のつかない罌栗(ケシ)は阿片がとれるので
栽培禁止植物です。ずっと前、吉野の実家の庭にきれいな大きな
花が咲いて、愛でていたら、お巡りさんが通り掛かって「それケ
シですよ、違法な植物です」と言ったので、あわてて引っこ抜き
ました。きれいな薄紫色の花でした。自分で人間を中毒させよう
なんて思っているわけでもないのに、戦争まで起こすことになっ
た因果な花ですが、医療用にもなり役に立っている一面もあるわ
けで、自然というのは一筋縄ではいかないものです。
もう一つ、故郷の話ですが、実家の裏の杉林の下の小暗いあたりに、
この季節になると無数に点々とまるで白い星のように咲いていたのが、
このシャガの花です。「著莪」なんていう難しい漢字の花です。はっ
きり言って嫌いな花でした。春の鬱々とした気分の時に、どこに行っ
ても目について、つきまとわれている様な気がして。花の罪ではあり
ません。その頃の私の心の持ちようを投影したような花でした。今で
は、故郷の春というと一番に思い出すなつかしい花になりました。
それに比べて、この木香薔薇の可愛いこと。その存在を知ったのが、ごく
最近なので、何のわだかまりもなく愛でることができる気がます。ご近所
の垣根で、今真っ盛りです。トゲがない良い子の薔薇です。でもね、香り
りはないんです。天は二物を与えずというところでしょうか。