台北でもっとも有名な観光地の一つ、龍山寺です。建物も装飾も、人々も
何とにぎやかなこと!でもこの日は妙にお店が閉まっているなと思ったら、
祭日だったんです。和平紀念日。1947年2月28日は二二八事件が起こっ
た日でした。もとから台湾にいたいわゆる本省人に対する、中国本土か
ら来た国民党、いわゆる外省人の弾圧が始まった日で、その後40年にわ
たり、本省人にとっては弾圧される暗黒に時代が続いたのだとか。和平
紀念日という名前には皮肉が込められている?そんなことも何も知らな
い呑気な観光客は「妙に道が空いているね」なんて言いながら、ガイド
ブック片手に龍山寺へ。
ほれぼれするほどの派手派手しさです。ご本尊は観世音菩薩ですが、
道教や儒教も混ざり、孔子、関羽、媽祖など100以上の神様が祀られ
ているそうです。神仏混交の極みですね。大勢の黒い僧衣を着たおば
あさんたちが境内いっぱいに立ち並び、大声でお経を唱和していました。
日本人の寺院や神社の感覚ではちょっとついていけないと思うような、カ
ラフルな張りぼての可愛らしい人形や動物がところ狭しと飾られています。
皆もうもうと煙の上がる長いお線香を持って、あちこちの神様仏様に
お参りしています。若い人も大勢いますが、やはり年配の方が多い。
聞けば、本省人のお年寄りの憩いの場所だということでした。
今年は巳年なので、色とりどりのヘビもたくさんいました。
ふと見上げると、青空に500メートルを超える超高層の台北101ビルが
霞んで見えました。昔ながらの龍山寺とハイテクの101。どちらも今の
台北の現実。貧富の差や社会的政治的葛藤・桎梏はもちろんあるもの
の、まずは平和を取り戻したように思われ、観光客も安心して歩き回る
ことができる台北の一こまでした。