台北からバスで1時間半あまり、日本統治下の面影を残す山上の町「九ふん」
へ行きました。「九ふん」の「ふん」は人偏に分で、日本では使われていな
い字です。宮崎駿さんが「千と千尋の神隠し」の舞台のモデルにしたという
レトロで、何とも味わいのある坂の町です。これは「湯婆婆の宿」のモデル
になったという茶藝館「阿妹茶楼」。日が暮れるとたくさんの赤い提灯が怪
しく灯り、独特のノスタルジックな光景になります。
日本統治下には近くに金鉱があり、大いに栄えたそうですが、その後寂れま
したが、それまでタブーだったニニ八事件の頃を映画化した「悲情城市」の
舞台となり、その後「千と千尋の神隠し」にも使われて、今では大人気観光
地になっています。私たちが訪れた日も、祭日ということもあって、細い坂
道は身動きの取れないほどの人出でした。
湯屋のモデルとなった阿妹茶楼でお茶をいただきました。見回すといろいろ
なものを食べているので、メニューをと頼んだら、日本人にはお茶と茶菓子
のセットだけと、素気無く言われてしまいました。あまりに人気が出て、店員
の女性たちも日本語が分からず、対応できなのでしょうね。まあ仕方ない。
セットの中国式のお茶をおいしくいただきました。
小さな湯のみで何度も飲むお茶、妙にちまちましているのだけれど、なんだ
か心安らぎます。がぼがぼ飲まないのがいいんでしょうね。
テラス席から見渡すと、すぐ下に海と山の風景が広がっていました。この地
の悲しい歴史を知って見ると、なおさら胸を突かれるような美しい眺めでした。