キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

山のあなた

2014-10-16 21:32:51 | 地球
             

             芒の穂揺れて夕光零しけり   岡本紗矢句集「向日葵の午後」より

            「枯れすすきの穂が夕日をこぼす」秋の山野の夕景をうまく表現した

             きれいな句です。すすきは薄よりこの芒のほうが趣がありますね。

             「こぼす」って「零」という漢字なんですね。零してしまえばなくなる

             からでしょうか。

             「山は暮れて野は黄昏の芒かな」なんていう与謝蕪村の句もありま

             す。芒は夕暮れが似合います。

             

             今、コーラスで「山のあなた」という歌を練習しています。カール・

             ブッセの詩を上田敏が訳したあの詩に曲をつけたものです。

             遠い山と空の景色を見ると心が広がります。あの山の向こうにはきっ

             と何か素晴らしい物があるに違いないと、あこがれが湧いてきます。

               山のあなたの空遠く

               「幸」住むと人の言ふ

               ああ、われひひとと尋めゆきて

               涙さしぐみか帰へりきぬ

               山のあなたのなほ遠く

               「幸」住むと人の言ふ 

                          カール・ブッセ 上田敏訳詩集「海潮音」より

              落語のネタにされたこともあり、この詩を知らない人はいないでしょう。

              「幸Glueck」を擬人化しているところが巧みです。「ああ、われひとと

              尋めゆきて」のところ、ぼおーと読んでいて一人で「幸」を探しに行った

              んだと思い込んでいたのですが、違うんですね、おおぜい(Schwarme)

              で探しに行ったんです。だれだって幸せになりたいですからね。でも、

              見つからなくて、涙ぐんで帰ってくるんです。そりゃあそうでしょう。

              人生、そううまくは行きません。ブッセ自身の生涯はどうだったので

              しょう?詩人もこの詩もドイツではあまり有名じゃないようですが、

              日本人の心の琴線には触れるロマンチックな詩です。        
コメント
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