近頃、町中で見る花はサルビアやパンジーや園芸種の洋花が
多くなったような気がしますが、田舎に行くと秋は断然菊の花で
す。群馬県吾妻郡中之条の赤岩集落にも、赤や黄色の菊の花
が道端に咲き乱れていました。
赤岩集落はかつて養蚕を営んでいた古い建物が多く残る集落です。
どの家も、蚕を飼う2階がとても広く作られています。富岡製糸場と
ともに絹産業遺産群となっています。昭和30年頃まで養蚕が非常
に盛んだったけれど、今では蚕を飼っている家は1軒もないようです。
中でも異彩を放っているのが「湯本家」の大邸宅です。
土壁がむき出しで、一見廃屋っぽくも見えるのですが、これは
火事に強いようにと、わざとこうしているそうです。
湯本家は木曽義仲に仕え、草津温泉を開いたと言われるとて
も古い名家で、幕末の偉人高野長英が牢を破り逃げまわって
いた間の一時期、彼をかくまっていたとも言われています。歴
史の深さを感じる山里の村でもあります。
湯本家の生け垣の側に咲いていた一輪のバラの花の色があまりの
艶やかさに、なぜかこの世の移り変わりの儚さを感じたひとときでした。