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国立競技場建て替え計画:取り壊し率100% 2015年7月14日
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる「国立霞ヶ丘競技場」の建て替え計画です。そもそも、本来は2016年に予定されていた東京オリンピックの計画では、オリンピックのメインスタジアムを中央区の晴海ふ頭内に建設する予定となっていました。メインの競技場を晴海埠頭に建設される予定だった新スタジアムに移すと共に、現・国立競技場はサッカー競技場として開催することが計画されたのですが、2016年オリンピックの開催誘致失敗によりこれらはすべて白紙撤回となりました。
その後、2020年の夏季オリンピックの東京承知活動の中でメインスタジアムを晴海ふ頭に新しく建設する計画から、既存の国立霞ヶ丘競技場を改修・大型化してメインスタジアムにする計画が持ち上がります。そもそも1964年(昭和39年)の東京オリンピックの時にメインスタジアムとして活用された国立競技場は、竣工してからすでに半世紀近く経過しており、老朽化対策の必要性に迫られていました。
2012年の2月(この時点ではまだ東京開催が決定されていない)、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が大会の開催基本計画を発表し、国立霞ヶ丘競技場を8万人収容のスタジアムに改築し、開閉会式、陸上競技、サッカー決勝戦、ラグビーの会場とすることを正式に発表しました。その後数か月間の議論があり、2012年7月末に新競技場の概要計画が発表されました。
1.現在の約5万4000人収容から8万人収容に増設
2.開閉式の屋根を備えた全天候型のドーム型スタジアム
3.9レーンのトラックを敷設して国際基準を満たす
4.競技場周辺の都立明治公園や日本青年館まで敷地を広げてサブトラックを敷設
5.観客席の一部を可動式にしてサッカーやラグビー大会の際は球技専用スタジアムとして使用
6.飲食・物販施設、音響、照明設備の強化
7.コンサートや展覧会、ファッションショーなどの会場としても使用
8.大規模災害時の広域避難場所としての役割
その後、新スタジアムのデザインコンペが実施され、安藤忠雄氏を審査員長として世界各地の建築家からデザイン作品を応募しました。応募総数は46件であり、その中から書類選考により11件に絞り、2012年11月に最終審査を行い、イギリス在住の女性建築家であるザハ・ハディド氏の作品をグランプリ(最優秀)として採用しました。
2014年の夏季に現施設の撤去・取り壊し工事を開始し、2015年秋季頃に建て替え着工、2019年竣工を目指します。の、はずだったのですが…。この記事を製作している途中の時点で、政府も介入する政治問題に発展しています。
安倍総理大臣の「聖断」で、政治決着となるか
話がおかしくなり始めたのは、東京オリンピック招致に成功した2013年9月以降のことです。2013年11月、総床面積29万平方メートルから22万5000平方メートルへの縮小が発表されました。コンペで通過した当初案の試算で総工費が3000億円まで膨れ上がることが判明し、コンパクトなデザインに変更されることになったからです。この時点で約1625億円前後に収まると見られていたのですが、その後どんどん予算額が膨らんでいくことになり、2015年7月の時点で遂に2625億円にまで達してしまいました。
2015年7月17日、世論から見直しを求める声が日増しに大きくなっていく中、安倍総理大臣は建設計画を抜本的に見直す方針を固めたと発表しました。国際公募のやり直しも含め検討するとのことです。2015年秋までに整備費の上限などを盛り込んだ新整備計画をまとめ、再度、国際コンペをして施工業者を選定し、2020年春までに完成をめざします。
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当初の1625億円まで圧縮した当時の案の完成予想図です。国際コンペもやり直すみたいので、このデザイン案自体も完全に「なかったことになる」みたいですね。
ニュースリリース:毎日新聞のネット版 2015年7月17日
新国立競技場:抜本見直し、政府検討 国際公募含め
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明治神宮外苑の「外苑総合グラウンド」の敷地前から(南東側から)撮影した「国立霞ヶ丘競技場」の広大な跡地の全景です。この場所からは、西新宿の高層ビル群を見渡すことが出来るようになりました。
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本当に文字通り、国立競技場の建物がなくなってしまいましたね。神宮外苑の緑地帯の中に広大な空き地が出現したことで、周辺の景観が一変してしまいました。
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国立競技場跡地の敷地南側を通っている道路を散策していきます。前方に取り壊し工事中の「日本青年館ビル」が見えてきました。
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日本青年館ビルの解体工事現場前から振り返って東側(聖徳記念絵画館方向)を撮影しました。工事用フェンスが伸びているのが国陸競技場跡地の敷地境界線です。
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工事用フェンスの合間から国立競技場跡地の中を見渡して撮影しました。跡地自体は東西方向約200メートル、南北方向約300メートルの広さです。
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日本青年会館ビル前から外苑西通りの「観音橋交差点」に向かってまっすぐ伸びている下り坂の道路を散策していきます。コンペ案や縮小案ではこの道路は廃止されることになっていましたが、今後はどうなるでしょうか。
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国立競技場の跡地越しに、西新宿地区の高層ビル群を綺麗に見渡すことが出来ました。ここから西新宿まで直線距離で約2キロほどです。
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南側から国立競技場の跡地を撮影しました。西側(外苑西通り側)へ向かって、地面全体が傾斜しています。
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メインスタンド南側にあった「代々木門」ですが、現在は工事用の資材搬入口となっていました。ここからも跡地内を見渡すことが出来ます。
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取り壊す以前はどんな景観だったか、すっかり忘れてしまいました。
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外苑西通りの「観音橋交差点」まえから解体工事現場の全景を撮影しました。
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国立競技場の敷地西側に細長い敷地となって伸びていた「都立明治公園」の緑地帯も閉鎖されていて、工事用フェンスが外苑西通りの歩道に沿って組み立てられていました。
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「都立東京体育館」の敷地内から国立競技場の跡地の全景を撮影しました。
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最後に、外苑西通りに架橋されている「外苑橋」から撮影しました。
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国立霞ヶ丘競技場跡地の地図です。