ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

出雲JC文教委員の方を対象に対話型鑑賞の実践を行いました

2014-03-01 17:29:21 | 対話型鑑賞
出雲JC文教委員の方を対象に対話型鑑賞の実践を行いました


報告が前後しますが、対話型鑑賞を出雲青年会議所(出雲JC)の方々を対象に実践させていただきました。
出雲JC会員の知人からの依頼を受けました。出雲JCの皆さんは地域のボランティア活動のみならず、会員相互に研鑽し合うことも例会の中で行っているそうです。今回私がオファーを受けたのは、この例会の中で、対話型鑑賞を利用した会員相互の研修会が行えないかを検討するためです。対話型鑑賞をどんなものか説明して理解してもらうより、実際に体験してもらった方がよいと判断し、出雲JCの文教委員会に所属する(知人はこの会の委員長だそうです)メンバーを対象に2月20日(木)19:30~今市コミュニティセンターで行いました。メンバーの皆さんは、皆、スーツ姿でいらっしゃり、フォーマルな印象を受け、こちらが幾分身構えるような気になりましたが、リラックスしないといい会話は生まれないので、笑顔を心がけました。
作品はゴッホの「椅子」と「古靴」をみてもらうことにしました。「椅子」は描かれている要素もそこそこあり、椅子から使う人を連想できるので、会話が弾むと判断したからです。普段から親しい間柄の方たちだと思いますが、初めてやることには誰しも緊張するし、変なことを言って失笑を買うのは嫌だと思うのが人の常なので、言いやすい物があるこの作品は初心者にピッタリだと思っているのです。実際に今回もそうでした。2作品にしたのはひとつでは物足りないと思ったし、ふたつみることで、2作品目は会話が弾むと考えたからです。一つ目は初体験だし、緊張するけれど、ふたつ目になれば要領もなんとなくわかるし、一つ目で言えなかった人も、言うチャンスがあるし、言いたいと思うと考えるからです。実際にふたつやってよかったと思います。2作品で約45分でしたが、参加者の皆さんは「あっという間だった」「45分もしゃべっていたとは思わなかった」と、過ぎゆく時間の速さに驚かれていました。「古靴」を二つ目にしたのは、こちらはみえる物が靴しかないので、靴について話したら、それで終わりのはずなのですが、そう簡単に終わらない面白さがあるからです。一つ目で「椅子」をみていますから、靴をみていても履く人のことを考えますし、どんな場面で、どんな人が履くのか?また、どうしてこんな靴を絵に描いたのかなど、一つ目より多様な切り口でこの靴をみることができるからです。これは一つ目に「椅子」で話すトレーニングをしたからで、ふたつ目では、話すためには、もっとよくみないといけないと考えるようになるからではないかと私は考えています。よく考えるためには描かれている要素は少ない方がよいのではないかと考えます。しかし、初体験でいきなり「古靴」だとちょっとハードルが高いかな?と考えるので、「椅子」「靴」の順に私はしています。
こちらの思惑通りに会話はどんどん弾みました。「椅子」をみた後に「何でも、気づいたことを…。」と促しても、やや牽制しあう空気が流れましたが、「何でもいいんですよね?」と確認された後に「真ん中に木の椅子がある」という発言から始まりました。「木と思われたのはどうしてですか?」と確認したところ、そんなの見ればわかるじゃないか?と言った空気が流れかかったような気がしたので「みなさん、木だと思っておられると思うのですが、でも、なぜ、木と思うのかは重要です。どこからそう思いましたか?」と訊ねました。そうすると「色が、黄色くて、木の感じがするから。」と答えてくださいました。この経緯を捉えて「このように、自分が何かと思ったのはこの作品のどこからなのかを考えながら話していくことが大事なので、そこも考えながらお話していただけるといいです。」と補足しました。それからは手が絶え間なくどんどん挙がりました。一人でみえているものをみ~~~~んな言おうとされた方がいらっしゃったので、「たくさん気づかれていますが、他の方のためにも、少し取っておいていただいてもいいですか?」と投げかけて、話された2~3のことについても根拠を確認しながら進めました。皆さん、普段から親しくしている間柄なので、うなずきや笑い(失笑もたまに含む)、ちょっとした突っ込みもありながらの和気藹々としたムードで会は流れていきました。
奥の木箱の中にあるものについて話が及んだ時に、「猫」「ぬいぐるみ」「ピカチュウ」などの意見が出ましたが、「芽の出た玉ねぎ」とう意見も出たので、「玉ねぎ」であるという情報を与えました。ここは情報を与えるべきだと思います。ACOPでも情報を積極的に与える方向で進んでいますが、私も最近はそうしています。でも、必要な場面に限定はしていますが…。この辺りのさじ加減は、今後話題にしていくことかと思います。
そうしてこの「椅子」はおじいさんが使っていた(使っている)椅子であり、家族は少なく、もしかしたら一人暮らしか、もう死んでしまって、家族が遺品として遺していて、それを絵に描いたのではないかという読み取りに集約されました。この作品は中学生と実践しても、だいたいそういう読み取りになります。私の中ではこの読み取りができたら、ほぼこの作品についての会話は終了かなと思います。
次に進むときに「では、もう一つみていただきます。先ほどと同様に、しっかり静かにみてください。」と話し、「古靴」の画像を映しました。
ふたつ目なので、手は自然に挙がりました。会員の中に靴マニアの方がいらっしゃって、熱く語られました。周りの方はその話に引き込まれたり、あまりに熱く語られ過ぎて、ちょっと周囲に引かれたり、でも、刺激を受けて、一足の靴じゃないとか、遺品を描かせた、とか、いやまだ現役の靴だとか、侃侃諤々で盛り上がりました。靴マニアの方は「これで広告を作ったら、ちょっとカッコいいかも?わが社の靴はここまで履ける!!ってアピールできそう…。」と、作品をみて考えることをとても楽しんでくださっているように感じました。まだまだ会話は続きそうでしたが、後の計画(懇親会)も予定されていたので、感想も書いて欲しかったので、45分で切り上げました。その後、アンケートと感想を書いてもらったのですが、スーツ姿の背中を丸めて、真剣に鉛筆を走らせてくださいました。会員の中に期せずして、勤務校の保護者さんがおられ、「うちの子もこんなことをやっているんですか?すごいですね。いや、頭をすごく使いました。」と感想を述べてくださいました。
この後、会場を懇親会場に移し、この実践についての質問やこの実践の意義や意味について質問攻めにあいました。文教委員会では、5月例会でこの実践を出雲JC会員全員を対象に行いたいと考えているようで、効果や効能についても検証しながら起案書を作成されるそうです。そこでACOPが企業向けに行っているセミナーの紹介もしました。また、どんな作品で行うと有効なのかについても、今後アドバイスしていくことになりました。出雲の地で教育現場以外でも広がっていくことは望外の喜びです。JCの例会で手ごたえを感じた若い経営者の方々が自社で広めてくだされば、もっと広まっていくと思うので、しっかりと協力したいと思います。
最後になりますが、この作品のシークエンスは「ゴッホ」です。作品をみた後に、誰の何という作品なのかという情報は与えました。それは大人なので、興味があれば調べてみようという方もおられると思ったからです。誰が描いた作品か知っているかを最初に訊ねましたが、ふたつの作品がゴッホのものであることをご存知の方はおられませんでした。でも、ゴッホは全員ご存知でした。そして、ゴッホが特に「古靴」のような絵を描いていたことにちょっと驚いておられました。
大人を対象に実践したのは、VTSの課題の出ていた医大生以来です。でも、この会は大人も子どもも関係ないですね。そこがまたいいところだと改めて感じました。
明日は、グラントワで2回目の「みるみると見てみる」です。2時開始です。興味のある方はお出かけください。お待ちしています。ナビゲーターは小川さんです。
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