ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

中国五県研究大会の研究協議の様子をお届けします!!

2014-11-13 20:56:52 | 対話型鑑賞
中国五県研究大会の研究協議の様子をお届けします!!


春日美由紀先生 研究授業協議
会場責任者:向陽中学校青木
記録: 第二中学校 飯塚先生・伊藤先生
授業者:大社中学校 春日先生

司会:斐川西中:安部
司会:斐川西中学校の安部と言います。どうぞ、よろしくお願いします。時間配分としては、最初、授業者からの自評を15分程度、最後の指導講評を15分程度、中の協議を30分程度という流れで行いたいと思いますので、皆様のご意見で密度の濃い30分間の協議にしていただきたいと思います。どうぞご協力ください。よろしくお願いします。

まず自評をお願いします。

春日自評: 授業研究においでくださいまして、ありがとうございます。最初に、今日で5回目の取り組みでしたが、これまでの4回までの取り組みについて、生徒に感想を書いてもらっていますので、生徒4人から、今までの対話型鑑賞について話してもらおうと思います。

生徒女子1:私は、この鑑賞を体験するまでは、鑑賞しても今までは、きれいだとか、すごい、微妙ですと言っていましたが、この鑑賞をやるようになって、絵をみることが楽しくなってきました。
生徒女子2:この鑑賞をするようになって、鑑賞すること自体に楽しさを感じるようになった。普段の授業では、間違っているのはいやだなと思っていて余り発言することはなかったのですが、この鑑賞の場合は自由にいえるので、発表することに自信が持てるようになった。
生徒男子1:今は、自信を持って発表できるようになった。同じものをみても、考え方は一人一人違っているのがわかった。この対話型鑑賞という鑑賞方法はマイナー鑑賞方法だと思いますが、この対話型鑑賞という鑑賞が出来て、作品を見て感じたことや考え方はこれからの生活に活かしていけると感じたのでよかったです。
生徒男子2:対話型鑑賞のようなことをして、絵を描くときには、作者の伝えたかったことなど、絵の細かいところにも作者の思いが描かれていたので、自分の作品を描くときにも細かいところまで気をつけて描こうと思いました。

春日:これまでの子どもたちの受け止めを伝えさせていただきました。指導案にも載せてある今年度5月からの取り組みをパワポで最初に簡単に説明します。

今年度閉校になる光中学校の生徒と最初にこの「ひまわり」損保ジャパン所蔵のもので自己紹介をかねて鑑賞しました。このひまわりのどれが自分かということを説明しなくてはならないことから、必然的によくみるだろうなあと思うことを仕掛けました。また、何でそう「考える」のかを言うことで根拠を見つけ、さらによく見るようになることを仕掛けています。また、友達が(見えたことから)どのように理由・根拠を言うのかということで、必然に聞くようになるので、「聴く」も自然に出来るように仕向けました。美術通信の№1,2にもありますが、「見知っている友達なのに、新たな発見が出来た。」「同じものを見ても、考え方が違うことを体験した。」などの感想があるので後で時間があったらみてください。
2作品目では根拠を明らかにして話すと言うことを授業の課題の中心としました。この「椅子」の作品は誰が使う椅子なのかということで、使う人を連想させるものなので、色・形から、どんなイメージを持つのかということを考えさせました。
・椅子の色から木が材料
・椅子の形・構造より手作りの椅子
・椅子の上にあるものや周りの様子から,この椅子を使っている人はおじいさん男の人ではないかと言うことが出てきました。
3作品目は慧可断臂図を見せました。このときは作品の中から根拠を問うことばかりでなく、「そこからどう思うか」と言うこともねらいに3年生ですので、社会の歴史の知識もあり、この断臂図は水墨画の技法を用いた作品、雪舟の作品であるということを導き出していきました。そこからどう思うか、という解釈や自分なりの読み取りができるよう、作品は段階を追って意図的に選んでいます。お寺の子がいて、だるまでは無いかと言うことが後のワークシートの記述でありました。通信を参照してください。
 4作品目は、ベン・シャーンの解放です。前回見せた作品もメッセージ性の高い作品であると思って選んでいます。根拠を確かめながら絵をみるということは出来ているので、作品自体が見る人に伝える何かが有るという作品を選びました。通信を参照して生徒達の記述をみてください。
1クラス、17名しかいませんので、全ての生徒の意見を生徒に返すことが出来たことが、今回の研究では良かったと思います。
評価については、みなさん気になる所だと思います。どこからそう思ったのかについては、より詳細な根拠にもとづいて、話すことは出来るから、話したことを書くことによって自分の中により定着させたいと考えました。
手立てを持たせながら、自己の意見を明確にし、自分の意見を発言もくみ取りますが、発言したことは、書けると思っているので、書けるよう指導しました。
 書けない生徒はどうするのか。という意見もあるともいますが、思ったことは書けるはずなので、思ったことを発言することを通じて、言語化し、それを記述できるようにし、それを評価することは、誤りではないと思っています。
IC機器で検証してきていますが、言ったことは書けているので,『記述を評価することに誤りは無い』と思っています。
それで、次では、生徒はどのように変化したのかも興味があると思いますので、生徒の変容がみられる例を示すと、この生徒です。
書いていることが多くなっていることは,『記述量が飛躍的に多くなっている』。4回目は、人の意見だったり、自分の意見の視点が複数に増えているのでこの子にとっては、3回目から4回目が転機ではなかったかと思っています。
最後に、ワークシートの振り返り評価の集計結果を示します。ワークシートの、自己評価Fの評価は、私にとっての通知表です。
平均値を取ったところで、4なり3なりといった高い評価をしている生徒が9割以上となっています。
 Cの評価が低いのは、意見を言えなかった生徒がいるからで、自分の取り組みを正当に評価した結果です。でも、言うことは出来なかったけれど、書くことは出来ています。
これだけの取り組みをして、今回に臨んでいます。

県立美術館で授業をさせてもらいたいと言うことを早めにお願いしていたので、展示の場所も一番奥の広いスペースの真ん中に作品があったので、鑑賞しやすかったと思います。
ベン・シャーンの作品より、描かれているものが多かったので読み取りはしやすかったのではないかと思います。
オープンエンドで正解はないということは、自由な解釈を認めることなので、生徒からの多様な意見を引き出したいと思いました。
最後に、この授業のエールのつもりでお孫さんからの手紙を読みました。カゴの中には、女の子の赤ちゃんがいるということ。白い服の男の子はお父さんという、草光さんのお孫さんからは紙をもらって、県に草光氏の業績に上がっていって、研究の対象になると良いと思っています。
ご意見、ご提案をいただき、今後の研究にまた役立てたいと思います。
本日はありがとうございました。

司会:安部
提案発表のようにまとめてくださいましたので、わかりやすかったと思いますが、濃い15分にしていきたいと思います。

益田:横田中:松田
対話型鑑賞というマイナーな鑑賞をやっていますが、今までの積み重ねで今日があるというなと思いますが、理由を聞くことが多いな。と、それで、子どもたちを、じっと見ていると,『絵をすごくよく見ているな』と思いました。ただ好きなことを言って、自分ではたまにあることなのですが、言い合って終わりじゃないところが、造形的なねらいと作者の心情に迫る鑑賞になっていたと思います。そこで質問ですが、
Q:島根ゆかりの作者と最初に紹介されましたが、石見焼きのハンドが描かれているので、生徒から島根だという意見は出たのではないかと思うのですが・・・。
A:今のこどもにそれ(ハンド)を島根ゆかりのものだという発見は難しいと思いました。あらかじめ知らせることで、作品に対して、より島根のものだと思って意欲を喚起する、まあ、もともと意欲は高いのですが、刺激になるかなと思いました。

安来:安来一中:中西
Q:教室では、注意をされた点を教えてほしい。
Q:自校ではないところで、苦労されたところを教えてアドバイスをして欲しい。

A:注意は見る。考える。話す。聴く。です。
A:じっくり見るという様子を指導者は観察します。
A:最初は『何とかがある』という言い方しかしないので、最初は、もちろんそういう言い方しかしないですが、繰り返しやる中で、生徒たちは学習するので、形式的なトレーニングかもしれないですが、美術の世界だけではなく、光中の音楽の先生が、音楽をする時、自分たちを出せるようになった。ということを話してくださり、これは、出すというハードルがより低くなったのではないかと、それで、他教科にも反映されているのではないかと思っています。角先生にご理解とご協力をいただいて、この鑑賞方法で鑑賞させていただくことが出来て、周りの先生方の理解もあり、生徒との関係については、お便りを返すことで、添削評価をすることで、関係を作り、今日の読み取りはよく出来ているので、17人しかいないということもあり、あまり苦労は無かったです。生徒たちは、元気で明るく私を受け入れてくれたので、それは、光中学校の普段からの教育の成果ではないかと思って、感謝するところです。

中西:失礼な言い方をするようですが、春日先生が話をしておられる間は顔が下向いていた男の子が、同じクラスの女子の発言の時には、顔が上がった。光中学校の生徒さんは、とてもつながった関係であると思いました。そのつながりを普段から築いておられる光中学校の先生方と教育はすばらしいと思います。また、そのよさを引き出された春日先生もとてもすばらしいと思います。

春日:この春から、この研究大会のために出前授業をさせていただいているこの私を、いつも明るく元気に迎えてくれることを嬉しく思っています。
それは、いつも生徒に関わっておられる光中学校の先生方、光中学校で行われている教育のたまものだと思い、それがあったから、私のようなものがたまに出かけても、好意的に受け入れてくれたと思います。

鳥取県 中野
自分自身が対話型鑑賞をしたことがないので、(今から発言することも)どうかとは思うが、キャプション「四人の子ら」を最後におっしゃっておられたが、「死んだ赤ちゃん」という(生徒発言)のはスルーしても良かったのか?
春日:とても難しい質問だと思います。
「(乳母車の中の子どもが)死んだのではないか」という意見をその場で、その子の意見を否定するのは私の中ではなかった。というのも、どの子の意見も、正しい、正しくないではなく、担保してやらないといけないと思っています。指導案の中で、タイトルを明かすことも盛り込んでいますが、「亡くなった」という意見の後、たたみかけるようにキャプションをいうのはどうかと思われた。初めて今回、作者の身内の方に手紙を書いたのでわかったのですが、そのかごの中には赤ちゃんがいることがはっきりしたのです。この作品だけを見て、かごしか描かれていないことからは、このかごの中に赤ちゃんがいるとも、いないとも、死んでいるともわからないわけです。その時に、どの(生徒の)意見も担保してやらないと感性を育てることに繋がらないと思っています。作品を観て、楽しみ味わうのが重要なのであって、人はひとりでは生きていくことは出来ないから、美術史とか美術研究家がするものではなくて、『子どもたちの意見を確保してやることのなかから考えを育んでいくこと』がこの鑑賞法では、なくてはならないものであって、この中学生の多感な時期にこそ、友達の様々な意見に触れ、自尊感情を高め合ったり、感性を育てることこそ大事だと考えています。答えになっていますでしょうか。

司会:後おひとりだけですが…

愛媛県美:鈴木
今日は、関係者ではないなか参加させていただきました。
今日一番いいなと思ったのですが、授業が終わった後の感想を聞いた生徒さんがいて、「学校と同じで緊張しなかった」と返ってきました。私も美術館にいるものとして、この対話型鑑賞をすることが有りますが、「意見を言えなかった」とか「緊張してあまり意見も言えなかった」人もいますが、『緊張しなかった』というのは美術館の立場ではとても嬉しいです。美術館で普段の授業のようにリラックスして緊張せずにのびのびと意見を言っている姿が見られてとても楽しく思いました。

司会:どなたかもう、ひとり。

出雲第二:伊藤
Q:記録者で申し訳無いですが一つ伺いたいことがあります。
春日先生が(研究に)取り上げられた作品で実際私も鑑賞の授業をしたことがあるが、必ず最後に「実際どんな意図で描かれた作品のなのか」と質問してくる生徒がいます。何時の時代に描かれたのかと言うことと作者の名前は紹介はするのだが、作品の価値もどれだけ伝えていくのか、自分の中で迷いながら(鑑賞の授業を)やることが多いのですが、情報提供の基準があれば教えて欲しいです。

春日:セミナーVTSJでMOMAの元教育関係にいたF.ヤノウィン氏に言われたことを基本にしています。
与える情報は最小限にし、興味のある者が自分で調べる、というスタンスです。今は、いつでも、グーグルで調べられますよね。医大生とやった時は、医大生は興味の度合いが高いので、やっている最中でもググりますね。それでいいと思っています。

指導助言:澄川
中国5県造形教育研究大会、ご開催おめでとうございます。
10分の中でお伝えできることをしたいと思います。
光中3回お邪魔しましたが、良く語る子どもたちだなと感心させられます。
また、本日会場提供してくださった、島根県立美術館にお礼申しあげます。
どこから、美術の言葉で、
日々の積み重ねがあって出てきたものである。
月に一回で前授業の中で培ったものである。
パワポとは、よいまとめをされたと思います。
指導案の中にはなかったのですが、最後、手紙を読まれましたよね。あれ、驚いたのですけど、手紙を読まれた後、がらっと変わりました。手紙を読んでもらって見方は、また変わったのではないかと思います。
私は、お父さんが描いていると思わなかった。
また、ふるさとの実感がもてた。効果的だった。
最後、授業後に、ポニーの女の子が、ボードを持って前に出てきていたので、どうしてなのか聞いてみた。
ずーっと遠くだから、『女の子とお母さんの表情が気になっていて、「もっと見てみたい、もっと感じてみたい」』と、もっと気になるという感性が育っているのはすばらしい。
今回で5回になるが、定期的に実施する効果を、明確にしていかなくてはならない。その中で、高まりを見せないといけない。
今日は、授業を見せていただき、3年生の生徒の大半はこの後、美術というものに携わらない生徒もいるのではないかと思います。その生徒たちに、どんな作品を鑑賞させるべきなのは大事です。
中学校の教員だから、期末で評価もしないといけないから、鑑賞をやる。それは×(バツ)です。まずいです。その鑑賞が次の鑑賞や表現に繋がることが大事。
PDCAサイクルが大事と言われますが、私は、その前にRを付けて、RPDCAが大事だと思います。RはR(リサーチ)で、P(プラン)D(実行)C(検証)というサイクルが大事かなと思いました。
この子達の実態把握(リサーチ)があって、どんな授業をやるのかを考えなければならない。
鑑賞をグループ、ペアでやる、ふせんを使ってやる、色々やり方はあるけれど、この子達がねらいにせまるのには、このやり方が一番合っているというものにして欲しい。
この方法が効果的だというか、狙いがあっての授業なのだ。
全員がBの評価になる授業を作っていくのが大事。
どんな授業をするのかが大事。
共通事項「(記述は省略)」
共通事項という視点が大事。
どこから、色・形・材料から自分がどう思うのか。今一度共通事項を確認して欲しい。位置づけて授業を行って欲しい。あの生徒達は共通事項をもって鑑賞をしていた。
だから、春日先生は作者の心情まで、授業の中で持って行けた。
ワークシートも、文章能力に長けた子が評価されるのではなく、この子がどんなことを感じていたのか、有効な視点だと思うので、今一度共通事項の視点をもって、記述を分析していけば、内容を伴わない長文では意味がないこともわかる。
最後に発表した生徒が、鑑賞を通して、最後まで描くことを丁寧にしていこうと言っていたように、表現で感じとったものが鑑賞へ、鑑賞で感じ取ったものが表現へつながっていくように。
また、別の日に、ある日の放課後、女子生徒の一人が、わざわざ駆け寄ってきて、「美術館の授業を楽しみにしています」と言った一言に尽きる。
どんなことを学んだか聞いたことがありますが、今日の授業で「どんな学びがあったか」が語れる授業であって欲しい。
春日先生に貴重な授業を提供してもらった。

司会:安部
今日の貴重な授業をご提供くださった春日先生、光中で普段より授業を行っていただいている角先生、光中学校の生徒の皆さんに温かい拍手をお願いいたします。(拍手喝采)
以上で研究授業の研究協議を終えさせていただきます。
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