ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

みるみる会員の金谷さんがACOPに参加しました!!

2014-11-20 19:40:05 | 対話型鑑賞
みるみる会員の金谷さんがACOPに参加しました!!


みるみるの金谷です。11月16日に、京都造形芸術大学のACOP鑑賞会に参加してきました。その様子をレポートします。

 ACOPは10時スタートだったのですが、私が造形大前のバス停についたのは9時15分ごろ。早く着いたので、1階のカフェでのんびりしてから、会場となる教室に向かおうと思っていました。大階段をのぼろうとすると、ACOPのボードを持った学生さんがすでにスタンバイしていてびっくり。1階のエレベーター前はもちろん、教室への案内などなど、教室に入る前から来校者への心配りがいっぱい感じられました。教室に入ってからも、学生さんとおしゃべりをしたり、お茶をいただいたりして、ゆったり楽しく過ごすことができました。実は、ちょっと緊張していたので、楽しくあたたかい雰囲気が、とてもありがたかったです。ナビや司会をする学生さんの方が、私よりも何倍、いや何百倍も緊張したり、ナーバスになったりしているのかもしれないのに、目の前にいる人や環境にあたたかく関わっていたり、関わろうとしているところが、すてきだなぁと思いました。先日のACOPの説明会もそうでしたが、あたたかくて、居心地がいいです。いつもありがとうございます!

 さて、今回は4つの作品をみました。1作品目は「カラカラ帝」の頭部像(メトロポリタン美術館蔵)でした。スクリーンに大きく映し出された西洋人らしき、ごっついおじさんの顔(実物は大理石でできていて、高さは約40センチの彫刻作品)をじっくりみます(この作品の名前や作者、素材など、事前には紹介されません)。
まず、はじめに、ナビがこの人物について思ったこと、印象をどんどん言ってください、と最後列のみなさんに投げかけて、対話がスタートしました。「怒っているみたい」「不安そう」「こわい感じがする」「強そう」等々、同じものをみながらもとらえ方は様々です。第1印象について「どこからそう思う」のか伝えあった後、顔の上半分、下半分それぞれに注目して、発見したことや考えたことを話し合いました。上半分をみながら対話するなかで、左右で目の感じが違っていること、強さや野心を感じるとともに、不安や疲れも感じ取れること、下半分からは、唇が意外にきれいで、ピュアな感じがすることなどの発言がありました。
「この人、何歳くらいだと思いますか?」というナビからの投げかけで、「30~50代」「頭髪の状態から40代」という意見が出たあとで、ナビから「20代」という衝撃の事実(情報)が!そして、20代という年齢で、この顔はどうなの?この人について行く?行かない?等々、スクリーンをみつめながらナビからの投げかけを考え続けていきました。
ぱっと見、威圧感たっぷりのローマ皇帝。そんな人が強く、勇ましく、威厳たっぷりに振る舞っていても、その陰には不安や苦悩がある。この頭部像を作った人は、そんなこと意識していなかったかもしれないけど、陰の部分がこっそり顔を覗かしている。作った人も素晴らしいし、それを「みる、考える、話す、聴く」ことでみつけることができた私たちも素晴らしい、なんて言ったら、言い過ぎですかね。

2作品目は、徳川美術館蔵の「徳川家康三方ヶ原戦役画像」(しかみ図)です。ぱっと見、「このおじさん歯が痛いのかなぁ。なんかへんな帽子かぶって、へんな椅子に腰かけているなぁ」という感じの絵です。
印象を伝えあったり、表情やポーズを実際に真似したりしながら、描かれている人の心情に迫っていきました。その過程で、作品の背景となる情報をもらって、そのうえで作品をみて考えることの面白さを味わうことができた作品でした。
戦いで大失態をしでかしたときの自分をわざわざ描かせ、それを自分への戒めとし、肌身離さず持ち続けた家康だからこそ、天下統一を成し遂げたのかもしれない。そんなことも考えました。
そして、徳川家代々の方々が先代の思いを受け継いできたからこそ、私たちがこの絵をみることができるという事実。今まで、古い作品も何気なくみてきたけれど、これからは時間を超えて今ここにある、ということに感謝しながらみるといいのかなと思いました。

1作品目、2作品目ともに、もしも自分がナビをしたら、どこでどんな風に情報を出すといいのかなぁと、鑑賞会が終わった後、考えていました。鑑賞者から、どんな言葉がでたら、話の流れがどうなったら、どのような言葉で、どのくらいの長さで情報を伝えようかと。もし鑑賞者の中に、(自分が出したいと思っている)情報について知っている方があれば、しゃべってもらえるといいかなぁ、そんなときはどう声がけするといいかなぁ等々、このことについてはずっと考え続けられそうです。

休憩をはさんで3作品目は「接吻/The Kiss」(グスタフ・クリムト)です。元気よく、
「愛を語りましょう!」というナビの言葉からスタートしました。この絵はなんかみたことあるし、なんとなくクリムトは好きだし・・・。しかし、ここまで男女それぞれの思いやストーリーを考えながら、みたことはなかったです。
この絵に描かれている男性は怪物?神?強引?女性を救おうとしている?、女性は駆け引き上手?死にそう?身をゆだねている?拒んでいる?、二人は不倫関係!?等々、表情やプロポーション、人物の周りに描かれているものを関連付けながら、ロマンチックなものからシビアなものまで、さまざまな意見が出されました。「そんなんじゃ(そんなにシビアに男女の関係をとらえていたら)、子どもは生まれんわー」という、つぶやきもあり、思わず笑ってしまいました。ちょっとアダルトな鑑賞会も、なかなか乙です。

最後の4作品目はMOA美術館蔵の「紅梅白梅図屏風」(尾形光琳)です。中央奥から手前に向かって川が流れてきていて、その左には白梅、右には紅梅が咲いていて、バックは金ぴか!といった作品です。
鑑賞のはじめのところで、鑑賞者から「絵の中心の川の部分がずれている」という意見がありました。そこで、ナビからこの作品は(二曲一双の)屏風であることが伝えられ、屏風として飾ってある画像も少しみてから、鑑賞が続きました。「七夕の織姫、彦星みたい」「川が、人の思いのようであり、試練のようであり、渦巻いている」「白梅が男、紅梅が女」「白梅が誘い掛け、紅梅が待っている」「白梅紅梅は友人同士で、けんかして仲直りしたいところ」等々、梅を擬人化した意見がたくさん出されました。描かれているものは梅と川なのに、そこに思いやストーリーを重ねながらみていくことが、とても面白かったです。

鑑賞会が終わった後、学食で定食を食べながら、学生さんたちはそれぞれ自分の持ち味でナビや司会をしていたなぁ、と思いました。もちろん、個人個人を知っているわけではないのですが、それぞれに違っていて、おもしろかったです。それと同時に、ふと自分の持ち味って何かなぁと、ちょっと考えたりしました。
そうそう、学食のイワシの梅じそフライ定食、おいしかったです。

次回、第2回目は11月30日。どんな作品やナビゲーターとの出会いがあるのか、今からとても楽しみです。大階段の向こうに、わくわくが待っています。

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みるみる会員の金谷さんがACOPに参加しました!!

2014-11-20 19:32:28 | 対話型鑑賞
みるみる会員の金谷さんがACOPに参加しました!!


みるみるの金谷です。11月16日に、京都造形芸術大学のACOP鑑賞会に参加してきました。その様子をレポートします。

 ACOPは10時スタートだったのですが、私が造形大前のバス停についたのは9時15分ごろ。早く着いたので、1階のカフェでのんびりしてから、会場となる教室に向かおうと思っていました。大階段をのぼろうとすると、ACOPのボードを持った学生さんがすでにスタンバイしていてびっくり。1階のエレベーター前はもちろん、教室への案内などなど、教室に入る前から来校者への心配りがいっぱい感じられました。教室に入ってからも、学生さんとおしゃべりをしたり、お茶をいただいたりして、ゆったり楽しく過ごすことができました。実は、ちょっと緊張していたので、楽しくあたたかい雰囲気が、とてもありがたかったです。ナビや司会をする学生さんの方が、私よりも何倍、いや何百倍も緊張したり、ナーバスになったりしているのかもしれないのに、目の前にいる人や環境にあたたかく関わっていたり、関わろうとしているところが、すてきだなぁと思いました。先日のACOPの説明会もそうでしたが、あたたかくて、居心地がいいです。いつもありがとうございます!

 さて、今回は4つの作品をみました。1作品目は「カラカラ帝」の頭部像(メトロポリタン美術館蔵)でした。スクリーンに大きく映し出された西洋人らしき、ごっついおじさんの顔(実物は大理石でできていて、高さは約40センチの彫刻作品)をじっくりみます(この作品の名前や作者、素材など、事前には紹介されません)。
まず、はじめに、ナビがこの人物について思ったこと、印象をどんどん言ってください、と最後列のみなさんに投げかけて、対話がスタートしました。「怒っているみたい」「不安そう」「こわい感じがする」「強そう」等々、同じものをみながらもとらえ方は様々です。第1印象について「どこからそう思う」のか伝えあった後、顔の上半分、下半分それぞれに注目して、発見したことや考えたことを話し合いました。上半分をみながら対話するなかで、左右で目の感じが違っていること、強さや野心を感じるとともに、不安や疲れも感じ取れること、下半分からは、唇が意外にきれいで、ピュアな感じがすることなどの発言がありました。
「この人、何歳くらいだと思いますか?」というナビからの投げかけで、「30~50代」「頭髪の状態から40代」という意見が出たあとで、ナビから「20代」という衝撃の事実(情報)が!そして、20代という年齢で、この顔はどうなの?この人について行く?行かない?等々、スクリーンをみつめながらナビからの投げかけを考え続けていきました。
ぱっと見、威圧感たっぷりのローマ皇帝。そんな人が強く、勇ましく、威厳たっぷりに振る舞っていても、その陰には不安や苦悩がある。この頭部像を作った人は、そんなこと意識していなかったかもしれないけど、陰の部分がこっそり顔を覗かしている。作った人も素晴らしいし、それを「みる、考える、話す、聴く」ことでみつけることができた私たちも素晴らしい、なんて言ったら、言い過ぎですかね。

2作品目は、徳川美術館蔵の「徳川家康三方ヶ原戦役画像」(しかみ図)です。ぱっと見、「このおじさん歯が痛いのかなぁ。なんかへんな帽子かぶって、へんな椅子に腰かけているなぁ」という感じの絵です。
印象を伝えあったり、表情やポーズを実際に真似したりしながら、描かれている人の心情に迫っていきました。その過程で、作品の背景となる情報をもらって、そのうえで作品をみて考えることの面白さを味わうことができた作品でした。
戦いで大失態をしでかしたときの自分をわざわざ描かせ、それを自分への戒めとし、肌身離さず持ち続けた家康だからこそ、天下統一を成し遂げたのかもしれない。そんなことも考えました。
そして、徳川家代々の方々が先代の思いを受け継いできたからこそ、私たちがこの絵をみることができるという事実。今まで、古い作品も何気なくみてきたけれど、これからは時間を超えて今ここにある、ということに感謝しながらみるといいのかなと思いました。

1作品目、2作品目ともに、もしも自分がナビをしたら、どこでどんな風に情報を出すといいのかなぁと、鑑賞会が終わった後、考えていました。鑑賞者から、どんな言葉がでたら、話の流れがどうなったら、どのような言葉で、どのくらいの長さで情報を伝えようかと。もし鑑賞者の中に、(自分が出したいと思っている)情報について知っている方があれば、しゃべってもらえるといいかなぁ、そんなときはどう声がけするといいかなぁ等々、このことについてはずっと考え続けられそうです。

休憩をはさんで3作品目は「接吻/The Kiss」(グスタフ・クリムト)です。元気よく、
「愛を語りましょう!」というナビの言葉からスタートしました。この絵はなんかみたことあるし、なんとなくクリムトは好きだし・・・。しかし、ここまで男女それぞれの思いやストーリーを考えながら、みたことはなかったです。
この絵に描かれている男性は怪物?神?強引?女性を救おうとしている?、女性は駆け引き上手?死にそう?身をゆだねている?拒んでいる?、二人は不倫関係!?等々、表情やプロポーション、人物の周りに描かれているものを関連付けながら、ロマンチックなものからシビアなものまで、さまざまな意見が出されました。「そんなんじゃ(そんなにシビアに男女の関係をとらえていたら)、子どもは生まれんわー」という、つぶやきもあり、思わず笑ってしまいました。ちょっとアダルトな鑑賞会も、なかなか乙です。

最後の4作品目はMOA美術館蔵の「紅梅白梅図屏風」(尾形光琳)です。中央奥から手前に向かって川が流れてきていて、その左には白梅、右には紅梅が咲いていて、バックは金ぴか!といった作品です。
鑑賞のはじめのところで、鑑賞者から「絵の中心の川の部分がずれている」という意見がありました。そこで、ナビからこの作品は(二曲一双の)屏風であることが伝えられ、屏風として飾ってある画像も少しみてから、鑑賞が続きました。「七夕の織姫、彦星みたい」「川が、人の思いのようであり、試練のようであり、渦巻いている」「白梅が男、紅梅が女」「白梅が誘い掛け、紅梅が待っている」「白梅紅梅は友人同士で、けんかして仲直りしたいところ」等々、梅を擬人化した意見がたくさん出されました。描かれているものは梅と川なのに、そこに思いやストーリーを重ねながらみていくことが、とても面白かったです。

鑑賞会が終わった後、学食で定食を食べながら、学生さんたちはそれぞれ自分の持ち味でナビや司会をしていたなぁ、と思いました。もちろん、個人個人を知っているわけではないのですが、それぞれに違っていて、おもしろかったです。それと同時に、ふと自分の持ち味って何かなぁと、ちょっと考えたりしました。
そうそう、学食のイワシの梅じそフライ定食、おいしかったです。

次回、第2回目は11月30日。どんな作品やナビゲーターとの出会いがあるのか、今からとても楽しみです。大階段の向こうに、わくわくが待っています。

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