当日の記録を担当した金谷さんからのレポートです!!
中国造形研レポート
中学校 鑑賞「四人の子等」
授業者 出雲市立大社中学校 春日先生
平成26年10月31日 島根県立美術館にて
みるみるの金谷です。先日、島根県立美術館で行われました、鑑賞の公開授業の様子をレポートします。
10月31日9:00、光中3年生のみなさん(17名)が、バスで県立美術館に到着。春日先生が出迎えて、「普通でいいけんね」の声かけに、笑顔がこぼれていました。
美術館の講義室にて、始業時刻までゆったりウォーミングアップ。数名の生徒にインタビューをすると、「春日先生との授業、楽しみです。」「(対話型鑑賞は)いろんな人の意見が聴けていいです。」「今まで実物じゃないのを見てきたので、本物を見られるので、楽しみです。」などなど、少し照れながらも答えてくれました。
講義室で、授業がスタートしました。今日は島根県出雲市ゆかりの作家の作品(本物)をみること。そして、「みる・考える・話す・聴く」という活動をしながら「どこからそう思う」「そこからどう思う」ということにも頭を働かせようということを確認して、2階の展示室へ移動しました。階段を上がる生徒たちの足取りは軽く、「どんな作品なんだろう」「早くみたいな」とわくわくしている様子が感じられました。展示室の奥の部屋にて、作品(四人の子等)と対面です。
まずは、じっくり作品を見つめます。男子女子と立ち上がり、入れ代わりながらすみずみまで作品を見つめます。じっくりと見た後、女子はベンチに、男子はベンチの前の床に腰を下ろしました。そのころには、生徒の周りを大きく囲むように、この授業の参観者の輪ができていました。
生徒が全員座ったところで、春日先生の、「じゃあ、誰からでも」との言葉かけで、対話がスタートしました。初めに発表した生徒から、この絵のポイントになるような事柄(みえているもの)が、いくつも挙げられました。この発言をもとに、人物の服装から、描かれているところは日本ではないか。またヘチマやひまわりなどの植物の色やその様子、人物の服装から、季節は夏から秋ではないかと、根拠をもとにして対話がすすんでいきました。まさに「どこからそう思う」を話し合いながら、描かれている場所や季節の合意形成がなされていきました。
そんななか、春日先生が「ちょっと、あそこをみて、意見のある人はいませんか?」と、作品の中心(乳母車のかごのあたり)を示されました。画面全体をみていた生徒たちの目が、ぐっと作品の中心に集まるのが感じられました。全体をみて話すことから、焦点化してみることへと、みかたが進んでいきます。焦点化し、人物の行動やしぐさをもとに話しあう中で、描かれている人々は家族だと思う、また乳母車の中に赤ちゃんがいると思うという意見が出されました。
そこへ、春日先生が生徒に揺さぶりをかけます。「みんなちょっとよくみてよ。(お母さんとお姉さんの)あの顔見て、何か思うことない?」と。しばし沈黙・・・。食い入るように絵をみる生徒たち・・・。その後、二人の表情から、「乳母車の中の赤ちゃんは亡くなっている」、「生きている」、「死んでないと思うけど(お母さんたちの)微妙な表情はなんなのだろう」、と生徒たちの脳味噌がフル回転しているのが、目にみえるようでした。
そこへまた、春日先生の投げかけが・・・「『どこからそう思うか』はいっぱい言ってみましたね。(中略)意見がまとまってきているけど、『そこからどう思う』の?」と。
「どこからそう思う」から「そこからどう思う」へ、ギアチェンジした瞬間でした。この後、かなり長い沈黙・・・。約40秒。表面的には沈黙でも、内面ではものすごく活発に対話をしているように感じる、豊かな時間が過ぎていきました。
「お母さん、ちょっと子育てに疲れているのかな。って思いました。」「とてもいい家庭なんじゃないかな。と思いました。」など、「そこからどう思う」のか、自分の意見が出てきました。そんな友だちの意見に触発されて、人物の表情をあらためてみたら、また発見があって・・・と、読み取りが深まっていくのが伝わってきます。
生徒たちの読み取りが、「ちょっと、子育てにお母さんは疲れているかなあ」という感じになっているところへ、またまた春日先生からの投げかけが。「家族っていったら、お父さんは?どうなの?」と。すると、パパパッと手が挙がり、描かれているものから時間帯は昼間で、お父さんは仕事でいないという意見や、お母さんの表情などから、お父さんは戦争や遠くに行ってしまってなかなか帰ってこないという意見が出されました。
このように根拠に基づいた、たくさんの読み取りをしてきた生徒たちに、春日先生は最後の投げかけをしました。「いろいろな意見を聞きながら、読み取ったこの作品から、どんなメッセージを受けとるの?この作品は何を語りかけているの?」と。
しばしの沈黙をはさんだ後、この絵から受け取ったメッセージを、一人ひとりワークシートに書くことに。約10分間の記述時間には、鉛筆を走らせる音が展示室に静かにひろがりました。作品に近づいてじっと見つめては、その後またワークシートに書きこんでいく生徒も。そんな生徒たちの間を、春日先生は小さく屈んで、静かに声をかけていかれました。
授業の最後に、春日先生から生徒たちに、ミニサプライズ。「四人の子等」の作者、草光信成氏のお孫さんからのお手紙が紹介されました。授業が閉校する中学校の生徒たちにもよい思い出となるよう願っていることをはじめ、絵の中で乳母車に乗ろうとしている子が自分の父であることや、祖父はいつも祖母を描いていたこと等を紹介し、授業が終わりました。
授業後の生徒たちに、インタビューをすると「本物の作品をみれたのが、うれしかった」「(手紙の内容を聞いて)身内をかいてて、驚いた」「印象に残ったのがこの場面なのかな、家族が一番なのかな?と思った。」「身内を描くなんて、いいなあと思った。」「ゆかりのある人とは聞いてたけど、出雲市の人でいいなあと思った。」「いつもと環境が違ったし、まわりの(たくさんの人の)視線がこわかった」「いつも通り言えた」など、さまざまに答えてくれました。
授業後も展示室で、楽しげに絵をみながら語り合っている生徒たちを見て、作品を「みる・考える・話す・聴く」ことを楽しんでいて、うれしい気持ちになりました。きっと、彼ら彼女らはこれからも美術を愛好する気持ちをもって、日々成長していくように思いました。対話型鑑賞の授業を通して、自分の意見に自信をもって言えるようになったという感想も聞き、より頼もしく思いました。
また、授業を参観させてもらいながら、自分も生徒の中に入って、手を挙げて意見を言ったり、聴きあったりしたくなりました。それほどに、魅力的で楽しい授業でした。光中3年生のみなさん、県立美術館のみなさん、そして素敵な授業を公開してくださった春日先生、ありがとうございました。
中国造形研レポート
中学校 鑑賞「四人の子等」
授業者 出雲市立大社中学校 春日先生
平成26年10月31日 島根県立美術館にて
みるみるの金谷です。先日、島根県立美術館で行われました、鑑賞の公開授業の様子をレポートします。
10月31日9:00、光中3年生のみなさん(17名)が、バスで県立美術館に到着。春日先生が出迎えて、「普通でいいけんね」の声かけに、笑顔がこぼれていました。
美術館の講義室にて、始業時刻までゆったりウォーミングアップ。数名の生徒にインタビューをすると、「春日先生との授業、楽しみです。」「(対話型鑑賞は)いろんな人の意見が聴けていいです。」「今まで実物じゃないのを見てきたので、本物を見られるので、楽しみです。」などなど、少し照れながらも答えてくれました。
講義室で、授業がスタートしました。今日は島根県出雲市ゆかりの作家の作品(本物)をみること。そして、「みる・考える・話す・聴く」という活動をしながら「どこからそう思う」「そこからどう思う」ということにも頭を働かせようということを確認して、2階の展示室へ移動しました。階段を上がる生徒たちの足取りは軽く、「どんな作品なんだろう」「早くみたいな」とわくわくしている様子が感じられました。展示室の奥の部屋にて、作品(四人の子等)と対面です。
まずは、じっくり作品を見つめます。男子女子と立ち上がり、入れ代わりながらすみずみまで作品を見つめます。じっくりと見た後、女子はベンチに、男子はベンチの前の床に腰を下ろしました。そのころには、生徒の周りを大きく囲むように、この授業の参観者の輪ができていました。
生徒が全員座ったところで、春日先生の、「じゃあ、誰からでも」との言葉かけで、対話がスタートしました。初めに発表した生徒から、この絵のポイントになるような事柄(みえているもの)が、いくつも挙げられました。この発言をもとに、人物の服装から、描かれているところは日本ではないか。またヘチマやひまわりなどの植物の色やその様子、人物の服装から、季節は夏から秋ではないかと、根拠をもとにして対話がすすんでいきました。まさに「どこからそう思う」を話し合いながら、描かれている場所や季節の合意形成がなされていきました。
そんななか、春日先生が「ちょっと、あそこをみて、意見のある人はいませんか?」と、作品の中心(乳母車のかごのあたり)を示されました。画面全体をみていた生徒たちの目が、ぐっと作品の中心に集まるのが感じられました。全体をみて話すことから、焦点化してみることへと、みかたが進んでいきます。焦点化し、人物の行動やしぐさをもとに話しあう中で、描かれている人々は家族だと思う、また乳母車の中に赤ちゃんがいると思うという意見が出されました。
そこへ、春日先生が生徒に揺さぶりをかけます。「みんなちょっとよくみてよ。(お母さんとお姉さんの)あの顔見て、何か思うことない?」と。しばし沈黙・・・。食い入るように絵をみる生徒たち・・・。その後、二人の表情から、「乳母車の中の赤ちゃんは亡くなっている」、「生きている」、「死んでないと思うけど(お母さんたちの)微妙な表情はなんなのだろう」、と生徒たちの脳味噌がフル回転しているのが、目にみえるようでした。
そこへまた、春日先生の投げかけが・・・「『どこからそう思うか』はいっぱい言ってみましたね。(中略)意見がまとまってきているけど、『そこからどう思う』の?」と。
「どこからそう思う」から「そこからどう思う」へ、ギアチェンジした瞬間でした。この後、かなり長い沈黙・・・。約40秒。表面的には沈黙でも、内面ではものすごく活発に対話をしているように感じる、豊かな時間が過ぎていきました。
「お母さん、ちょっと子育てに疲れているのかな。って思いました。」「とてもいい家庭なんじゃないかな。と思いました。」など、「そこからどう思う」のか、自分の意見が出てきました。そんな友だちの意見に触発されて、人物の表情をあらためてみたら、また発見があって・・・と、読み取りが深まっていくのが伝わってきます。
生徒たちの読み取りが、「ちょっと、子育てにお母さんは疲れているかなあ」という感じになっているところへ、またまた春日先生からの投げかけが。「家族っていったら、お父さんは?どうなの?」と。すると、パパパッと手が挙がり、描かれているものから時間帯は昼間で、お父さんは仕事でいないという意見や、お母さんの表情などから、お父さんは戦争や遠くに行ってしまってなかなか帰ってこないという意見が出されました。
このように根拠に基づいた、たくさんの読み取りをしてきた生徒たちに、春日先生は最後の投げかけをしました。「いろいろな意見を聞きながら、読み取ったこの作品から、どんなメッセージを受けとるの?この作品は何を語りかけているの?」と。
しばしの沈黙をはさんだ後、この絵から受け取ったメッセージを、一人ひとりワークシートに書くことに。約10分間の記述時間には、鉛筆を走らせる音が展示室に静かにひろがりました。作品に近づいてじっと見つめては、その後またワークシートに書きこんでいく生徒も。そんな生徒たちの間を、春日先生は小さく屈んで、静かに声をかけていかれました。
授業の最後に、春日先生から生徒たちに、ミニサプライズ。「四人の子等」の作者、草光信成氏のお孫さんからのお手紙が紹介されました。授業が閉校する中学校の生徒たちにもよい思い出となるよう願っていることをはじめ、絵の中で乳母車に乗ろうとしている子が自分の父であることや、祖父はいつも祖母を描いていたこと等を紹介し、授業が終わりました。
授業後の生徒たちに、インタビューをすると「本物の作品をみれたのが、うれしかった」「(手紙の内容を聞いて)身内をかいてて、驚いた」「印象に残ったのがこの場面なのかな、家族が一番なのかな?と思った。」「身内を描くなんて、いいなあと思った。」「ゆかりのある人とは聞いてたけど、出雲市の人でいいなあと思った。」「いつもと環境が違ったし、まわりの(たくさんの人の)視線がこわかった」「いつも通り言えた」など、さまざまに答えてくれました。
授業後も展示室で、楽しげに絵をみながら語り合っている生徒たちを見て、作品を「みる・考える・話す・聴く」ことを楽しんでいて、うれしい気持ちになりました。きっと、彼ら彼女らはこれからも美術を愛好する気持ちをもって、日々成長していくように思いました。対話型鑑賞の授業を通して、自分の意見に自信をもって言えるようになったという感想も聞き、より頼もしく思いました。
また、授業を参観させてもらいながら、自分も生徒の中に入って、手を挙げて意見を言ったり、聴きあったりしたくなりました。それほどに、魅力的で楽しい授業でした。光中3年生のみなさん、県立美術館のみなさん、そして素敵な授業を公開してくださった春日先生、ありがとうございました。