ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

夏季研修会1日目 午後の部の報告です

2015-08-22 11:00:34 | 対話型鑑賞




午後の部は、午前中の対話型鑑賞の理念を北野講師に講義頂くことから始めました。私たちの実践する対話型鑑賞はACOPの理念に基づいているので、それらを理解していただきながら、マニュアル化しない各先生方で応用可能なものにしたいただければと考えています。しかし、基本原則を理解していただくことは大切ではないでしょうか。そこで、午前中の実践がどういう理念に基づいて展開されているのか?どういう効果があるのかを理解したうえで実践をしてほしいと願うからです。
対話型鑑賞は「根拠に基づいて作品を読み取る」鑑賞法です。その鑑賞法を実践していただく際の理論が「根拠」です。「根拠に基づく鑑賞法」であること、揺るがない根幹があることを理解し、実践してほしいと願うからです。

〈午後の部〉北野先生のワークショップと講義
・対話型鑑賞とは?→もともとはニューヨーク近代美術館で開発されたVTCが源流
・そもそも鑑賞とは?(鑑賞と観賞のちがいを考える)
 (1)名月を鑑賞する。    ☓
 (2)映画観賞会       ☓
 (3)彼の趣味は音楽鑑賞だ。 ○
 (4)展覧会の観賞ツアー   ☓

観と鑑の違いは?
観・・・自然の風景や動植物などをみて、楽しむこと。
鑑・・・自分の立場から深く味わい、そのよさを理解すること。

鑑賞とは・・・作品とみる人の間に怒る深遠なコミュニケーション  →アートが生まれる(コト)

・よくある「鑑賞」のつまずき
 1、作品と関係のない空想をしてしまう
 2、作品をみても何も思いつかなくて、すぐに飽きてしまう
   (人は平均して、10秒前後で作品の前を去っていく)
 3、ひとつの「正解」を求めてしまう
   (人の解釈、作家の「意図」、思い込み)
   例「モナ・リザ」のモデルは誰か?!…誰だか正解を突き詰めたとしても、それは「モナ・リザ」と言う作品を味わったことになるのだろう 
     か?

・ACOP4つのポイント
  みる・・・すみずみまでみる。
  考える・・・直感でいい。どこからそう思うのか。
  話す・・・言葉にする。
  聴く・・・一番重要。自分にはなかった考えを知る。

・ナビゲーターは交通整理役。あくまで鑑賞者の一人。その場を共有しながら、鑑賞の深まりを促していく。

ナビゲーション基礎
「なんでも自由に言ってください」
「どこからそう思いましたか」(根拠を引き出す)
「そこからどう思いますか」(印象、感情を引き出す)
「他に何かありましたか」
ナビゲーション応用
 「パラフレーズ」…言い換え
 「コネクト」…つなげる
 「サマライズ」…まとめる
 「プッシュ」…鑑賞者に挑戦!発言をもっと突っ込んで訊く。

・「ナビゲーターは鑑賞者を鑑賞する鑑賞者である」
  →対話は場に即して臨機応変に!
「答えのない問いに対して、答えがないからこそ考えていることを学びました。」
(ACOPを体験した学生の言葉)
                  ↓
ACOPは「コミュニケーションによる鑑賞教育」であると同時に「鑑賞によるコミュニケーション教育」と言
える。

みるエクササイズ(普段やっている「みる」を味わいなおす)
・学生にも最初からいきなりは難しい。みるエクササイズをやりながら、ステップアップしていく。
○鏡のWS
①「逆さまの世界を歩いてみよう!」
②「逆さまの字を書こう!」 
〈感想〉
・歩いているときも文字を書いているときも、頭ではわかっているけど、体がついていかない。
←慣れている習慣や見えているものに思いの外とらわれているというのがわかりますね。

・恐くて前に進めなくなった。字はいらいらした。やろうと思う方向に動かないし、動いても、とんでもない方
向に。
・すごく楽しかった。自分の思い込んでいることがぶち壊されて。
←もどかしかったり恐かったり、しますね。人にいってもらうと安心すると同時に、どうサポートするのか難し
さも感じたという声も聞こえました。
普段の習慣、思い込みのとらわれというのは大きい。それに抗おうとするのは大変。でも慣れるとできたり、他
の人のサポートがあるとすっと移行できたりする。

○ブラインドトーク
〈振り返りのポイント〉
想像どおりだったところ/違ったところ←容赦なく。ずれているところを見つけるのがポイント。
うまくいった/いかなかった理由は?
ブラインド・トークのコツは?
〈1回目の振り返り〉
・ある物の場所、大きさ、色を言えば、イメージが浮かぶのではないか。
・物や大小関係はある程度わかった。色は難しかった。色についての情報はなかったので。
←色を伝えるのは難しくないですか?どうですか?
・「空」と教えてもらったけど、こんなにリアルな空だとは思わなかった。
←たしかに空と言っても、イラストの空なのか、リアルな空なのか、いろんなものがありますよね。
・最初にマグリットと言ってもらって、自分なりに想像した。大きさ、角度なんかは、もっと自分から追求して
いけばよかった。
←「マグリット」で二人とも同じイメージが伝わりましたか?同じイメージをもつこともできるし、そうでない
場合もある。大きさは、どういう風に伝えましたか?何かを基準にして伝えていくというのも一つですが、何を
基準にするかということでも相違が出てくる。ここでも、「伝わった」と思っていても、あれ?ということがで
てくる。
・最初にギリシャ絨毯と言ってしまって、「ギリシャ絨毯ってなんですか?」と聞かれたので、茶色っぽくて唐
草模様のある絨毯だと言いなおした。
←聞いたことをスルーするのではなく、突っ込んで聞くと、別の言い方になって、より具体的な情報になる。
←形、色、場所、向き。何かを基準にして大きさを伝えていく。言われたことを流すのではなく、突っ込んで聴
く。

コツ①
「見えたつもり」、「わかったつもり」になるのではなく、「他の見え方があるのではないか」という考えをもつ
こと。

〈2回目の振り返り〉
・荒々しく描いてあることを、いろんなタッチがあること、ろうそくがあること、女性がいること、その髪の毛
は長いこと、を説明しました。
←まず、顔だとして、どこがどう顔ですか?言葉で。これ一個一個言葉で表すのは大変ですね。みなさんいいで
すか。こんな顔で。では、これ男性?女性?
・眉毛が濃いので男性だと。
←これは、3才の男の子です。女性だと思った人で、髪の毛が長いからという理由で思った方は、髪が長いのは
女性だという思い込みがあるのだということに気付く。
・おだやかそうな顔で寝ていると説明されたが、絵の具のタッチやドロドロの感じで、穏やかな印象とは違って
いた。
←おもしろい意見。表情と背景では受ける印象がちがう。どうですか。
・確かに言われてみれば。最初から、表情と背景は自分の中で乖離していたので、背景とも併せて印象を伝える
ということも大事だと思った。

コツ②
話し手と聞き手の共同作業が重要。話し手と聞き手が入れ替わることができる。教え/教えられる関係ではなく、
お互いが対等に「聴きあう」関係の方がコミュニケーションも学びも深まる。

1日目の振り返り(グループワーク)
〈対話型鑑賞〉
・わかったこと
  ・鑑賞の仕方、対話のくり返しによって深まるということ
  ・ナビのスキルアップは大切。
・疑問点
  ・学習課題の設定の仕方はどうすればいいのか。
  ・目標や、評価は?
  ←めあては、作品に親しむ、味わって理解するというところ。これは発達段階によっても異なってくる。
   楽しくみんなで絵を見て、自分でも美術館に行ってみようという心情が養えることが、生涯にわたって美
術を愛好しようという大きな目標に近づくことになる。
   評価は、子どもの書いたことや発言が成長していくこと。そしてそれを「すごいね、こんなことが書ける
ようになったね」と返してあげることが評価。
   鑑賞は美術に限らず、人間関係でも,学習の面でもすごく役に立つし、大事な力。
   作品を見て、100見つけた子と、10見つけて、数は少なくても、空想して遊んでいた子。どちらがい
いか、どちらもいい。ということは、何回もくり返して、その都度ねらいを絞ればいい。今日は色でいこ
う!
とか。
   対話型鑑賞は、方法です。ねらいは、様々に設定できる。一番まずいのは、マニュアル化してしまって、
とにかく言えばいいとなってしまうこと。
  ・自由な発言というのは余計難しい。何をいってもいいというのは生徒にとっては困るのでは。
  ←ある程度生徒との人間関係をつくってから始めることが大事。生徒の様子を見ながら、レク的な感じで始
めてもいいと思う。ひまわりの自己紹介は、最初やりやすい教材。ブラインドトークなどをはさんで、ク
ラスの雰囲気をほぐす必要もある。クラスの雰囲気が固まった状態では難しい。
  ・ナビゲーションをするのに、年齢別のポイントがあるか。
  ・ナビスキルアップはどのようにすればいいか。

〈ACOPのレクチャー〉
  ・午前にやったことの裏付けになった。
〈鏡〉
  ・ワクワクすることはとても大事。とてもいい体験。
  ・視覚に頼りすぎていることに気付いた。
〈ブラインドトーク〉
  ・小学校の児童は語彙に差があり、それをどう埋めるか。
  ・午後のWSはサポートがあったことがよかった。

※ここでやったことがそのままマニュアルになったらいけない。ここでやったことのエッセンスを使いながら
子どもたちに応じて、やり方を考えていくことが大事!


最後にアクション宣言と、アンケート記入をして終了。解散。
コメント
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