淺井裕介「physis」-photo-Kioku-Keizo-2
オンライン鑑賞会
2022.11.7(月)20:00~
ファシリテーター : 春日美由紀
参加者 : 4名
みるみる会員 3名
計8名
春日さんの企画で大学の研究者、芸術家、みるみる会員という様々な職種の方々による鑑賞会でした。
作品2つはどちらも抽象度の高いものなので、多岐にわたる意見が出るのですが、ファシリテーターがコネクトしながらまとめていくと、そこには”生命“に関わるような要素が浮かび上がっていき、鑑賞が進むにつれ、初見とは全く違うものに見え方が変化するというわくわくするような鑑賞会となりました。
<鑑賞の流れ>※以下のF:下線はファシリテーターの発言。
作品1「科学雑誌の表紙の絵」(マクロファージがバクテリアを捕食する場面)
・デザインのようにも、繊毛のある微生物を拡大した写真のようにも見える。形は生物的だが、色のコントラストが強すぎて、自然界にないよう感じがして、人工的に染色しているようにも見えるから
F:形と色によって見え方の違いがある。
・色からは情熱的、原始的な感じがする。繊毛の流れから集団で右下に進んでいるような力強さを感じる。
・線ものある生き物っぽいものが3ついるように見えるが、右の2つはつながっているのかもしれない。ピンクの部分や、黒い大きな丸い部分があり、同種の生き物であるとすると、真ん中の塊の中には同様のものがないから。画面の外でつながっているのかもしれない。
F:特徴的な部位に注目して、個体数について語ってくれました。生き物と感じるのはどこから?
・細胞膜やゾウリムシなど、水中にいる生き物だと思う。直線の部分がなく、丸とか、カーブの形から生き物と感じる。
F:空中ではなく、水中にいると感じるのはどこから?
・繊毛の流れや、緑の部分が重なっている部分から。繊毛の不均一な流れあるように見えるから。
・ちっちゃい子が書いたイグアナにも見える。爬虫類の表皮の鱗や、黒い黄な丸はう穴の耳、周りにある、毛のように見えるものはイグアナの背中のとげようにも見える。また、蛇の頭にも見える。色はイグアナっぽくないが、仮面ライダーに出てくる敵のキャラクターのように、ちっちゃい子は、印象に残るイメージを描くから、強烈な怖い印象の強い色にしている。
F:すごく微細なものと、強面の動物とに見分けているようです。これらを聞いてほかに?
・顕微鏡写真に見えていたが、やはり手で描いたものに見える。細胞に見える黒い線が均一ではなく、描いた痕のような、描いた順番がわかるような部分があり、色の重なりにも手で描いた痕が見える。
F:そのことからどう思う?
・有機的なおどろおどろしい模様を強烈な色彩と形で強い印象を与えるような作品を描きたかったのでは?
F:おどろおどろしさとは?
・生き物なんだけど、毒があるような、爬虫類的な感じもするし、繊毛がクラゲの触手のような毒々しいイメージ
F:生き物が原初的に持っているようなおどろおどろしさということ
・生命のエネルギー的な感じを形から感じる。
F:機械的な人工的なものではないということは感じている。命、生きているという感じ。
・もし、ひとつひとつが細胞だとすると、大きな黒いのは核で、ピンクはほどけた染色体にも見える。
・細胞に見えるところは黄色やオレンジだが、ひとつひとつが塗り分けられているわけではなく、色の部分は中にある部分で、黒い部分は表面でスケルトンに見える。写真ではないと感じる。
・色が強烈で毒々しいということは、猛毒は生き抜くための戦略なわけで、生命力が強いということで、力強さにも思える。イグアナもクラゲもすぐにやられそうにない強さがあるという共通点がある。
・「何匹いるか問題」があるが、全部つながっているかもしれない、全体像がどうなっているかわからない。緑の点々は周りを飛んでるのかなと感じる。
F:飛んでいるとしたら、別の生き物ということ?関係がある??それともたまたま?
・共存している。緑のほうが動きが速そう。線がぶれているから。
F:緑の部分について他に?
・緑の下にオレンジが透けて見えるので、同じ空間か液体の中で、それぞれ違う動きをしている。オレンジが緑を食べているか、金魚の糞のように排泄している。
F:皆さん、生き物や、命が宿っているということ、緑の存在も、共存関係や排泄物などを感じ、生き物の営みを感じたようです。
2 壁画
・とても長い。双頭のドラゴン。水色の頭と茶色い頭。途中で一体化している。丸いひれがあり、青い花のようなしっぽがある。陰陽や、雌雄のような、対になっている。麒麟のような頭で、想像上の生き物に見える。
F:分かれているのではなくて、合体している?
・体のいろんな部分に茶色や空色があるので、分かれてのではなく、合体している。
・生き物の周りに種のような胞子のようなものがある。この生き物がうねうねとしながら生き物の種を蒔いているように見える。大きいので、地球規模の大きな環境に種まきをして大きな仕事をしているように感じる。
F:どんな種まき?
・空色は空や水、茶色は大地に見え、山海のあらゆる場所に蒔いていると感じる。
F:地球を飛び回っている感じですか?→はい。
・対になっていると感じるが、青い部分は中心を通っているので、青がメインで生命の進化を感じる。しっぽの青い部分に花が描かれていて、そこが源っぽい。が、しっぽの根元が急に色が変わっているのはどうしてだろう?
・羽根のところのちょうちょや魚が青で描かれている。
・しっぽの花がぐるっと成長している。花開いたものが右に伸びている。
・青いものは精神的なものを表現している。青い頭は目を見開いているが、茶色い頭は目を閉じていて、沈黙している、物思いにふける。青いほうは何かに注目している。環境問題や社会を見ている。下の十字架に何か意味があるのでは。下にだけあるので、下を見ていて願いをかけている。成長や進化。環境や生命に関すること。環境保護、生物多様性など。
・好きな絵だなと思った。しっぽは花があり、顔はバンビに見え、動物的。青は水を象徴していて、茶色は大地かな。生命は海から生まれたので、左の青い部分から生まれ、右へ進むにつれて分化して生命の歴史を表現している。
・自分は対話型鑑賞が初めてで、皆さん細かい部分もキャッチして言葉で表現していることに感心している。一人ひとりの発言に「そうかもしれない」と影響されると感じた。花と言われた部分が地球に見え、頭が分裂しているのは現状では環境が悪くなり、水と大地が分裂していてるのかなと感じた。
・皆さんの発言に影響されると同時に意外と受け入れられるんだなあと感じた。 共通言語ではない作者が生み出した特殊な言語である作品を、共通言語で語り合うという面白さを感じた。それは質問でそれを引き出していくということにかかっていると感じた。
この建物は一体何なのだ。コンクリートに作品が描かれていることの意味。 実際その場に行かないと分からないという写真の撮り方も印象的。
F:2つの作品から生命を感じ、それが2つ目の作品では大きな広がりになっていき、生命の進化や現在抱えている環境問題なども感じられる鑑賞会となりました。
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