ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

85回記念東光展 巡回島根展での対話型鑑賞会の様子をお伝えします(2019,8,3開催)

2019-08-26 11:41:39 | 対話型鑑賞
85回記念東光展 巡回島根展
島根県立美術館 ギャラリー 8月3日(土)14:00~14:30

鑑賞作品 佐藤 哲:JAZZMAN
ナビゲーター:金谷直美


 今回、第1回目の鑑賞作品は、楽器を手にした二人の男性が描かれた作品で、タイトルもずばり「JAZZMAN」です。今にも音楽が聞こえてきそう、けれども何だかちょっと不思議な感じもするこの作品を、鑑賞者のみなさんはどうみて、どんなことを感じられるのか、そんなことをたくさんお話しして頂けるといいなと思いました。
 まずは対話型鑑賞について、みるみるの会の代表の春日会員の説明後、鑑賞会がスタートしました。


<鑑賞会より>
・まるで、作品の中からジャズが聞こえてきそう。静止画なのに、動画のように動きと音が伝わってくる。 
・二人の男性の後ろにポスターが貼ってある。ポスターだけれども、その中のトランペットの人と3人でセッションをしているみたい。
・青い服の人は、ドレッドヘアで、若く見える。後ろのポスターの人は大御所のようで、大御所から若手へ引き継がれる感じ。
・左の人の服の白さとウッドベースの弦の白さから、スカッと上につき上がる感じがする。
・ポスターや床などにピンクや黄色が使われている所から、ジャズはジャズでも、明るい感じのジャズだと思う。
・青い服の男性の目線が気になる。焦点が定まらず考え事をしているみたい。演奏中というよりも、練習中、音合わせかな。
・右隅に、ドラムらしきものが見える。ドラムのメンバーを待っているのかもしれない。
・ポスターが貼ってあったり、赤い椅子も安っぽいし、床もリノリュウムみたいだから、ここはステージではなく、スタジオかも。
・まだ誰も言っていないけれど、この人たちは黒人だと思う。アメリカのジャズの本場を描いたのでは。
・ポスターに7月20日とあり、これも伝えたかったのでは。
・トランペットを吹く人のポスターに3本のラインがある。またベースも白い弦が3本。3人トリオを示しているのでは。
・ベースとギターの弦をのばすと、十字架のようにみえる。これにも何か意味があるのかも。


<ふりかえり>
・対話型鑑賞が初めてという方も多くいらしたのですが、少しずつ手を挙げてお話しをしてくださってうれしかったです。
・鑑賞会の中で、「他の人の意見を聞いていたら、みえ方が変わってきた!」とおっしゃった方がおられました。これぞ、対話型鑑賞の面白みだなあと思いました。
・作品をみて、感じたことや発見したことをどんどん話して頂きたいと思い、「このことで、他に意見や発見はありませんか?」とみなさんに投げかけました。ふり返ってみると、もっと具体的に問いかければ、もっと意見や発見を言いやすかったり、考えるきっかけになったりしたのではないかと思います。例えば「若いって、何歳位ですかね?皆さん、何歳くらいだと思われますか?」とか、「ジャズって、どんな感じの?明るい感じ?落ち着いた感じ?では、それはどこからそう思いました?」など。ナビ(ナビゲーター)としての、言葉のやり取り(問いかけ)のポケットを増やして、鑑賞者のみなさんがもっと話したくなるような鑑賞会にしたいと思いました。
・「JAZZMAN」には、黒人男性が描かれていました。ですが、はっきりと言葉として出てきたのは鑑賞会の終盤でした。ふり返りの中で、春日さんから次のような指摘がありました。「当然そうだと思っていることは、人は触れない(言葉にしない)。見えているけれど、言葉になっていないことを、あえて触れる(言葉にする)ことができるようにするのも、ナビの役目」とのこと。ふり返ると、ドレッドヘアが話題にあがったときや、白い服の話が出たときなど、ナビが人種について問いかけるチャンスはありました。そこから、ここはどの国だろうか?とか、(作者は)なぜ彼らを描いたのだろう?とか考えることもできたと思います。また、鑑賞者のみなさんに「そんな当たり前と思っていたことを、言ってもいいんだ」と思ってもらえれば、より発言がしやすい鑑賞会になったかもしれません。ふり返りを通して、鑑賞会を豊かに楽しくするナビのポケットが一つ増えたように思いました。


 実をいうと、私は県立美術館で、本物の作品の前でナビをするのは初めてでした。ですので、楽しくナビをしよう!と思いながらも、どこか緊張していて「話してもらえなかったら、どうしよう」とか、いくぶん妙な感じになっておりましたが、鑑賞者のみなさんが話してくださり、この「JAZZMAN」という素敵な作品を、一緒に鑑賞することができてよかったです(対話型鑑賞は、話さないと始まりませんので)。
 また、このような貴重な機会をいただいたことにも、感謝しております。関係のみなさま方、参加してくださったみなさま、ありがとうございました。
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