ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

出雲文化伝承館での鑑賞会レポートその②「Piazza」(2017.8.12開催)

2017-09-10 08:24:07 | 対話型鑑賞

出雲文化伝承館の企画展「郷土の洋画家展」にあわせて開催した、対話型鑑賞会のレポートが届きました!


出雲文化伝承館の企画展「郷土の洋画家展」
2017.8.12(土)11:00~
鑑賞作品 Piazza (広場) 北本雅己
鑑賞者 15名(うち学生3名)
ナビゲーター 春日美由紀

 お盆前の土曜日の開催であった。知人や知人の友人に声をかけてもらうように依頼していたため、たくさんの参加者(鑑賞者)であった。
 制作者が作品について語るギャラリートークなどは一般的になっており、参加して話しを「聞いた」ことはある方もおられた。しかし、作品をみて、自分が思ったり感じたりしたことを「話す」ことはハードルが高いようで、「参加するけど、話さなくてもいいでしょ。」とわざわざ確認される方もいたくらいだ。このような方に「話す」ことをしていただくためには「話したくなる」ようにナビしていく必要がある。「すごいこと」を話すのではなく、些細なことでも「発見したこと」を話せばいいのだと分かれば「話す」だろうし「話したくなる」のではないかと思い、鑑賞会を始めた。
 この作品は130号の大作でかなり大きい。参加者には全体がみえるように少し後ろ目に椅子を配置したので、開始後、近づいてよくみてもらうように声をかけた。結構時間をかけてみていた。み終ると三々五々着席されたので全員が座ってから始めた。

 「誰からでも、この作品をみて、感じたことや考えたことを話してください。」なかなか手が挙がらない・・・。ので、前の方に座っていた男子中学生に「どうですか?」と促すと、「真ん中に男の人がいる。何かパフォーマンスを始めようとしている。」「始めようとしている。」と思ったのは「どこから?」「近くにハトがいるけど、動きが始まると飛び立っていないと思うので、まだいるから、始まったばかり・・・。」「すごいね。そこまで考えていたんだ。ハトが飛び立たず、まだ、ここ(ハトの場所を指さしながら)にいるから、始まったばかりだと思ったのね。ありがとう。」「他には?」近くの女子中学生にも訊く。「私も始まったばかりだと思う。まだ、お金が入ってないから。」「お金?お金って、どういうことかな?」「ここで、芸をやってお金をもらうのだと思う。でも、お金を入れる帽子にお金が入っていないから、まだ、始まったばかりだと思う。」と自説を展開した。この中学生の発言に後押しされて、大人も話し始める。「後ろの人は、芸をみている人もいるけど、通り過ぎている人もいる。」「どれだけの芸をやるのか品定めしている。」「お年寄りと孫がいる。お年寄りが(芸を)みるのを促しているけど、孫は興味がなさそう。」「お年寄りはお祖母さんだと思う。スカートをはいているから。」「冬だと思う。みんな厚着で、防寒着のようなものを着ているから。」「外国の街。ヨーロッパかどこか。建物の様子から。」「あまり大きな街ではないと思う。広場の様子から。ちょっと田舎?」
「季節は寒い頃。冬?という意見が出ていますが、時刻はどうでしょう?」と訊ねると「夕方。左端の女の人が大きなバッグを抱えているので買い物に行く途中。」と小学生かなと思われる男の子が発言。他の意見は出ない。新たに「ここは少し小高いところにある広場だと思う。向こうの建物が下にあるように見えるから。」と広場の位置についての見解も出る。しかし、発言者の意見がなかなかつながらない。ナビが意図的に発言についてどう思うかの問いかけを繰り返し行っててみるが各人がそれぞれに自分の考えを話すばかりである。会話はつながっていかないが、作品の隅から隅まで参加者はよく「みて」「発見し」「考えて」いる様子はうかがえる。手も挙がらないが、当てると「話す」ので、「聴きながら考え、自分の見つけたことについて話す」ことはできるようになっていた。参加者に一通り発言をしてもらったところで開始から45分が経過していた。まだまだ話すことはありそうだったが、40分程度を予告していたので終わらせることにした。皆さん、45分も一つの作品について語っていたことに驚き、45分があっという間に過ぎていたように感じていたのか「皆さんと一つの作品について語り合ってきましたが、すでに45分が経過していています。」と話した時には「ええ~~~。」と驚きの声が上がるなか2回目の鑑賞会を終了した。
 
 参加者全員が全くの初対話型鑑賞者なので各自の「発見」をつなげて「そこからどう思う?」と問うのはハードルが高いのかもしれない。「みえているものについて考えたこと」を「どこからそう思った?」のか考えて「話す」だけでも貴重で楽しい体験になるのだろう。会を閉じた後に親しい参加者の何人かが「中央の人物について、もっと話したかった。」とか「後ろの見物人は15人と数えたけど、足だけ見えている人がもう一人いた。」など話し足りない様子の発言があった。終わった後にも作品について「話したい」と思うのは、作品に興味がわいた証拠であり、「作品をみて話すことは楽しい」と感じてくれたのなら、リピーターになってくれるだろうし、作品のひとつの鑑賞のあり方を身をもって感じてくれたことになるだけでも今回の取組は価値のあることになる。と思った。

 鑑賞中に「Piazza (広場)というタイトルだが、この絵がどうして広場なのか、広場らしい絵に見えない。」と発言された方がいた。その方に、最後に「やっぱり広場というタイトルにふさわしい作品だった。」と言わしめることができなかったのが心残りである。『「広場」というタイトルにふさわしい広がりはないが、大道芸者が画面の中央におり、それを取り巻くように人々が集い、思い思いの様相で居るところこそ広場なのではないか』というのは私なりのこの絵のざっくりした解釈であるが、このようなざっくりしたものでもよいので解釈を鑑賞者と共有することができればよかったというのが一番の反省である。
 ただ始まる前に「何も話さなくていいでしょ。」と言っていた知人が我慢できなくなって発言したことは私のお手柄ですかね?

 終わりになりましたが、お盆直前の貴重な土曜日に貴重なお時間をいただき楽しいひと時を過ごすことができました。ありがとうございました。


 次回のみるみるの会の月例鑑賞会は10月14日(土)14:00~浜田市世界こども美術館にて。
みるみるメンバーとともに作品について語り合い、楽しいひと時を過ごしてみませんか。
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