企画展「はまだの風景画展」関連イベント「みるみるとみて話そう」
6月9日(土)14:00~15:00
作品名:「冬日」(1938年 山﨑修二)
ナビゲーター:春日美由紀
この作品は2017年に浜田市世界子ども美術館で開催された「山崎修二と山崎に学んだ女流画家展」で金谷がナビした作品である。今回この作品を選んだのは、展示されている部屋が広く、椅子も利用できる状態であったことが大きい。鑑賞者は浜田東中学校の美術部員7名と大人2~4名であったので、普段よりは参加者が多い。立ったままでの鑑賞は作品が見えにくく、大人の視線が気になって中学生が発言しないのでは?と危惧されたので、作品主体というよりは鑑賞環境を第一条件に作品を選定した。
作品は画像でもわかるように、明快な色調で分かりやすい風景であるが、時代が遡ることから(昭和初期?)中学生にはなじみのない光景も含まれていると推察され、謎な部分もあるので鑑賞に適していると考えた。
鑑賞会での様子
〇手前に大きく描かれた野菜について「大根」「ニンジン」「カブ」などの発言。
〇空の雲の色から「朝」「夕方」と相対する意見。
人気がない(人がいない)から、朝早い時間だと思う。
〇田んぼの稲の切り株のような表現から、季節は秋から冬。
〇家並の瓦が赤いことから、島根県でも西部の方。
〇家の様子から、少し前の時代。今の家と様子が違う。
〇前作の鑑賞につなげて、雲海で見えない場所が「ここ」なのではないか。根拠は周囲に「山」があり、海が無いから。
〇田んぼに空が写っている。霜?
霜なら周りの景色も白くなっていないとおかしい。
〇霜が溶けて水が溜まって、そこに空が写り込んでいる。
〇霜なら朝。
〇右端の方が赤いので、夕方。夕焼け空だと思う。そうだとすると朝じゃない。
〇真ん中あたりに煙突があって、煙が出ているから、夕方で、晩ご飯を作っている。
みんなご飯を食べているから、外に人がいない。
以上のような意見が次から次へと出された。「朝」か「夕方」か?ということで、たくさんの発見があった。そのことについてもっと根拠を探そうとすることでよくみることが促され、煙突の発見にもつながった。この煙突の発見については、参加者の大半が気付いておらず、見つけて発言した中学生は嬉しそうだった。
また「季節はいつか?」ということで、キャプションに「冬日」とあったが、本当に「冬」なのかを描かれているものの中から探そうとしていた。
最後まで謎だったのが右奥に描かれている丘のような形をしたものである。山のようでもあるが木が生えてなく、イエローオーカー(黄土色)の濃淡で横縞に塗り分けられている様子が段々畑にもみえるが、それだと石垣がないのがおかしいという意見も出る。分かってきた部分と、なお謎が残る部分があり、一見わかりやすそうな風景画だが最後まで興味を引く作品で発言が途絶えることがなかった。
ナビの振り返り
2作品目ということで、様子が分かったのか、挙手しての積極的な発言が多くなった。中学生では、友だちが発言するとそのことについて挙手せずに意見を口にする様子が見られたので、そこはルールを守るように促した。椅子に座る時も前列に中学生に座ってもらったので後ろの大人を気にすることなく発言ができていた。少ない部員(中学生)だがキーパーソンが2人と感じ、その生徒のハートがキャッチできるよう留意しながらナビした。成功したのではないかと思う。
どんどん手が挙がる時はパラフレーズを端的にし、発言を妨げないテンポで進めた。
一通り意見が出たところで、意見をサマライズし、新たな発見や解釈を促すような流れで進めた。
最後まで疑問が残ったところについては「この風景は浜田の風景だとされているので、身の回りの風景にあるかも知れません。疑問をもち続けて探してみてください。」と締めくくった。
鈴木
「聴き心地のよいナビだった。」
お天気に恵まれ、明るい展示室の中、2年ぶりに春日先生のナビに参加させていただきました。終了後のふりかえりの会でコメントを求められましたが、学ぶところが多く(例えばポイティングやパラフレーズの「適度」、鑑賞者全員を「参加」に巻き込んで
いくこと等)、本日(6月14日)早速、近隣の小学校での鑑賞授業でトライしました。
しかし、まだまだ「場」をみることができておりません。ともすると、鑑賞者のことではなく、自分のことをみています。が、また起き上がります。次はもっと良い「失敗」になるように!
正田
○最初の頃
・描かれている風景の要素に関する発言が出ている段階では、丁寧に発言に関する箇所を指し示しながら端的に返しているので、鑑賞者はさらに観察をする様子が見られたし、周りの鑑賞者の観察も促している働きがあった。
・鑑賞者とアイコンタクトをとったり、近づいたりして発言を聴き取る様子から、発言をしたくなるような雰囲気だったと感じた。
○風景の読み取りの段階
・「時間」に関する対照的な意見が出た時にも、作品の根拠を丁寧に聴き、共通点と相違点のポイントを即座に返していて、テンポがよかった。
・「農家の煙突から煙が出ていることから夕刻の風景」と発言した内容について、全員に「気づいていた人?」と挙手で確認をして、発言が少ない鑑賞者の意思を確認していた。これも、鑑賞者のさらなる観察と思考を促していた。
・「水田の水色」に関する意見で「霜」という発言を丁寧に説明していた。鑑賞者の「霜」 に関する知識や体験に応じて、いつどのようにできる物なのか説明があり、中学生にとってはとてもわかりやすかったと思う。
・ナビゲーターの意見を積極的に聴きたいという思いが、名前を呼んだり、体の向きなどに表れたりしていて、参加者からは丁寧な根拠の説明が多く聞かれた。その結果、同じ作品を見ていながらも、多様な感じ方や解釈を感じる豊かな時間となったのではないかと思う。
<みるみるの会 活動のお知らせ 7~9月>
浜田市世界こども美術館での「はまだの風景画展」の会期も残すところあとわずかとなりました!
最終日の前日となる7/7には、「みるみるとみて話そう」の第2回目を開催します。
はまだの風景画展 関連イベント「みるみるとみて話そう」
日時:7月7日(土)14:00~15:00
会場:浜田市世界こども美術館 5・4階企画展示室
事前申し込みや参加費はいりませんが、展覧会の観覧料が必要です。
8月のみるみるの会の鑑賞会はお休みです。
ですが、島根県立美術館(松江市)で開催される講演会を共催します。
「生きのびるために みる&コミュニケーション」
講師 福 のり子(京都造形芸術大学)
日時:8月6日(月)13:00~15:30
会場:島根県立美術館ホール 入場料:無料(事前の申し込み不要)
主催:島根県造形教育研究会 共催:みるみるの会
9月は、9月8日(土)14:00~15:00(予定)浜田市世界こども美術館にて
夏のお出かけに、美術館を選んでみませんか?
涼しくて、楽しくて、深い学びがあなたを待っていますよ。
6月9日(土)14:00~15:00
作品名:「冬日」(1938年 山﨑修二)
ナビゲーター:春日美由紀
この作品は2017年に浜田市世界子ども美術館で開催された「山崎修二と山崎に学んだ女流画家展」で金谷がナビした作品である。今回この作品を選んだのは、展示されている部屋が広く、椅子も利用できる状態であったことが大きい。鑑賞者は浜田東中学校の美術部員7名と大人2~4名であったので、普段よりは参加者が多い。立ったままでの鑑賞は作品が見えにくく、大人の視線が気になって中学生が発言しないのでは?と危惧されたので、作品主体というよりは鑑賞環境を第一条件に作品を選定した。
作品は画像でもわかるように、明快な色調で分かりやすい風景であるが、時代が遡ることから(昭和初期?)中学生にはなじみのない光景も含まれていると推察され、謎な部分もあるので鑑賞に適していると考えた。
鑑賞会での様子
〇手前に大きく描かれた野菜について「大根」「ニンジン」「カブ」などの発言。
〇空の雲の色から「朝」「夕方」と相対する意見。
人気がない(人がいない)から、朝早い時間だと思う。
〇田んぼの稲の切り株のような表現から、季節は秋から冬。
〇家並の瓦が赤いことから、島根県でも西部の方。
〇家の様子から、少し前の時代。今の家と様子が違う。
〇前作の鑑賞につなげて、雲海で見えない場所が「ここ」なのではないか。根拠は周囲に「山」があり、海が無いから。
〇田んぼに空が写っている。霜?
霜なら周りの景色も白くなっていないとおかしい。
〇霜が溶けて水が溜まって、そこに空が写り込んでいる。
〇霜なら朝。
〇右端の方が赤いので、夕方。夕焼け空だと思う。そうだとすると朝じゃない。
〇真ん中あたりに煙突があって、煙が出ているから、夕方で、晩ご飯を作っている。
みんなご飯を食べているから、外に人がいない。
以上のような意見が次から次へと出された。「朝」か「夕方」か?ということで、たくさんの発見があった。そのことについてもっと根拠を探そうとすることでよくみることが促され、煙突の発見にもつながった。この煙突の発見については、参加者の大半が気付いておらず、見つけて発言した中学生は嬉しそうだった。
また「季節はいつか?」ということで、キャプションに「冬日」とあったが、本当に「冬」なのかを描かれているものの中から探そうとしていた。
最後まで謎だったのが右奥に描かれている丘のような形をしたものである。山のようでもあるが木が生えてなく、イエローオーカー(黄土色)の濃淡で横縞に塗り分けられている様子が段々畑にもみえるが、それだと石垣がないのがおかしいという意見も出る。分かってきた部分と、なお謎が残る部分があり、一見わかりやすそうな風景画だが最後まで興味を引く作品で発言が途絶えることがなかった。
ナビの振り返り
2作品目ということで、様子が分かったのか、挙手しての積極的な発言が多くなった。中学生では、友だちが発言するとそのことについて挙手せずに意見を口にする様子が見られたので、そこはルールを守るように促した。椅子に座る時も前列に中学生に座ってもらったので後ろの大人を気にすることなく発言ができていた。少ない部員(中学生)だがキーパーソンが2人と感じ、その生徒のハートがキャッチできるよう留意しながらナビした。成功したのではないかと思う。
どんどん手が挙がる時はパラフレーズを端的にし、発言を妨げないテンポで進めた。
一通り意見が出たところで、意見をサマライズし、新たな発見や解釈を促すような流れで進めた。
最後まで疑問が残ったところについては「この風景は浜田の風景だとされているので、身の回りの風景にあるかも知れません。疑問をもち続けて探してみてください。」と締めくくった。
鈴木
「聴き心地のよいナビだった。」
お天気に恵まれ、明るい展示室の中、2年ぶりに春日先生のナビに参加させていただきました。終了後のふりかえりの会でコメントを求められましたが、学ぶところが多く(例えばポイティングやパラフレーズの「適度」、鑑賞者全員を「参加」に巻き込んで
いくこと等)、本日(6月14日)早速、近隣の小学校での鑑賞授業でトライしました。
しかし、まだまだ「場」をみることができておりません。ともすると、鑑賞者のことではなく、自分のことをみています。が、また起き上がります。次はもっと良い「失敗」になるように!
正田
○最初の頃
・描かれている風景の要素に関する発言が出ている段階では、丁寧に発言に関する箇所を指し示しながら端的に返しているので、鑑賞者はさらに観察をする様子が見られたし、周りの鑑賞者の観察も促している働きがあった。
・鑑賞者とアイコンタクトをとったり、近づいたりして発言を聴き取る様子から、発言をしたくなるような雰囲気だったと感じた。
○風景の読み取りの段階
・「時間」に関する対照的な意見が出た時にも、作品の根拠を丁寧に聴き、共通点と相違点のポイントを即座に返していて、テンポがよかった。
・「農家の煙突から煙が出ていることから夕刻の風景」と発言した内容について、全員に「気づいていた人?」と挙手で確認をして、発言が少ない鑑賞者の意思を確認していた。これも、鑑賞者のさらなる観察と思考を促していた。
・「水田の水色」に関する意見で「霜」という発言を丁寧に説明していた。鑑賞者の「霜」 に関する知識や体験に応じて、いつどのようにできる物なのか説明があり、中学生にとってはとてもわかりやすかったと思う。
・ナビゲーターの意見を積極的に聴きたいという思いが、名前を呼んだり、体の向きなどに表れたりしていて、参加者からは丁寧な根拠の説明が多く聞かれた。その結果、同じ作品を見ていながらも、多様な感じ方や解釈を感じる豊かな時間となったのではないかと思う。
<みるみるの会 活動のお知らせ 7~9月>
浜田市世界こども美術館での「はまだの風景画展」の会期も残すところあとわずかとなりました!
最終日の前日となる7/7には、「みるみるとみて話そう」の第2回目を開催します。
はまだの風景画展 関連イベント「みるみるとみて話そう」
日時:7月7日(土)14:00~15:00
会場:浜田市世界こども美術館 5・4階企画展示室
事前申し込みや参加費はいりませんが、展覧会の観覧料が必要です。
8月のみるみるの会の鑑賞会はお休みです。
ですが、島根県立美術館(松江市)で開催される講演会を共催します。
「生きのびるために みる&コミュニケーション」
講師 福 のり子(京都造形芸術大学)
日時:8月6日(月)13:00~15:30
会場:島根県立美術館ホール 入場料:無料(事前の申し込み不要)
主催:島根県造形教育研究会 共催:みるみるの会
9月は、9月8日(土)14:00~15:00(予定)浜田市世界こども美術館にて
夏のお出かけに、美術館を選んでみませんか?
涼しくて、楽しくて、深い学びがあなたを待っていますよ。
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